セラムン二次創作小説『ナンパ野郎には気をつけろ!』
『ナンパ野郎には気をつけろ!』
「いっけない!もう、こんな時間……」
大学で研究に没頭していると、いつの間にか随分と時が進んでいた。少しだけ一段落したところで切り上げようと決意して椅子に腰かけ、パソコンと向き合ったはずだったのに……
時の守り人としてあるまじき事だと時計を見て自己嫌悪に陥った。時間管理はしっかりとしている方なのに、研究となるとついつい時を忘れて集中してしまう。周りが見えなくなる。いけない癖だと思いながらも治せずにいた。
「9時……流石に時間を忘れ過ぎ!」
グズグズしているとほたるはそろそろ寝る時間。間に合わない。そう思い、急いでパソコンをシャットダウンして研究室を後にした。
外に出るとすっかり暗くなっていた。夜の9時だから当たり前か。都会で明るいのが救いか。
そんな事を思いながら帰路を早足で歩いていると、誰かに声をかけられた。
「やあ、そこの彼女!」
ナンパか?都会の夜は物騒だ。パリピで変な人が多い。私に話しかけるなんて、いい度胸してるじゃない。絶対、相手になんかしてやらないんだから!
そう固い決意をして、無視を決め込んだ。視線も声の方向を向くことなく、更に早足になって突き進む。しかし……
「おーい、かーのじょ!僕もそっちの方向だから送ってくよ?」
しつこく追ってきて話しかける。中々しぶとい。どんな男なのか少し興味が湧く。だけど、ここでチラッとでも見てしまうと負け。そう思った私は聞こえていないかのように振る舞う。
「プップーッ」
相手は車を乗っているらしく、クラクションを鳴らしてアピールして来た。執拗い。兎に角、執拗い。
「せーつな!つれないなぁ……」
ん?今、私の名前を呼んだ?私、呼ばれたの?いや、紛らわしいけど、この場合はアレよ。名前じゃなくて切ないと言う形容詞の方。だから、振り向いちゃダメ!騙されちゃダメよ、せつな!
それに、私に男性の知り合いは少ない。3~5人くらいと言ったところかしら?若干、二名は怪しいからあやふやだけど。
「せつなお姉様♪いや、やっぱりせつなママの方がしっくり来るな」
この言葉にようやく私は振り向く事になった。と言うか、体が反射的に振り向いていた。
「はるか!」
「よ、せつな!やっと振り向いてくれた」
車に乗っていたナンパ男ははるかだった。
顔を見ると笑顔だったけれど、百戦錬磨で負け知らずな僕のナンパをスルーしたのはせつなが初めてさ、と残念そうに言ってきた。
「じゃあ、連勝はストップね」
「せつなには敵わないなぁ」
このナンパ術でみちるも落としたのね。なんてはるかとの会話でヤレヤレと思っていた。
「ところで、こんな夜にどうしたの?」
「君が余りにも遅いから迎えに来たんだ」
「私を?」
「ああ、さ、乗って」
それなら甘えようと、後ろの定位置のドアを開けて乗ろうとすると、はるかに止められる。
「おいおい、後ろに乗るなんて連れないじゃないか。ここ、乗って」
「え?でも、そこは……」
はるかが指さした先ははるかの横。つまり、みちるの指定席。
「別に構わないさ。空いているのだから」
「そうは言っても……バレたら怒られないかしら?」
「彼女は抱擁の戦士だから大丈夫さ」
「はるかったら……」
どうぞ、とはるかに即されたのでお言葉に甘えて前に座る事にした。
それでなくても遅いのに、変に遠慮している場合じゃ無い。ほたるが寝てしまう。
「……変な感じね」
はるかの車に乗るのはよくあること。けれど、その時はいつもみちるとほたるも一緒で。
しかし、今ははるかと二人。そして、はるかの隣に座っている。慣れない。ソワソワする。
「ほたるもそんな事言っていたなぁ」
「あら、ほたるもここに座ったことがあるのね」
「ああ、二人でドライブデートしたんだ」
「そうだったの。知らなかったわ」
「二人だけの秘密って事になってるから」
でも、今言ったけど、とはるかはおどけて見せた。
なるほど、二人の秘密だからお喋りのほたるも言わずに我慢していたのね。
「ほたるが怒るわよ?」
「そこはせつなが黙っていてくれると助かるよ」
「ま、迎えに来てくれたから聞いてあげるわ」
「さすが、大人だね。感謝するよ」
そんな会話をしながら家路へと着き、みちるに見られないようにとさっさと降りて玄関へと向かう。はるかに感謝のお礼も忘れずに。
「ただいま」
挨拶をすると、みちるより先にほたるが走って来た。
「おかえりなさい、せつなママ♪」
「ただいま、ほたる。まだ起きていたのね?」
「せつなママが帰るまで起きてるって聞かないのよ」
「そうなの?ありがとう、ほたる」
「えへへぇ~、せつなママだぁい好き♡」
そう言いながら、笑顔で抱きついてくるほたるを優しく抱き締める。
「せつな、おかえりなさい」
「ええ。みちる、ただいま」
「……って、僕もいるのにな」
「うふっお疲れ様、はるか」
「ただいま。無事、ミッション完了!」
「さっすが、はるかパパ」
「どういうこと?」
「せつなが余りにも遅いから、迎えに行けってみちるとほたるにお願いされてね」
「都会で明るいとはいえ、年頃のレディを夜道に1人なんて物騒だもの」
「ほたるはね、せつなママに早く会いたかったの」
「二人とも……」
はるかだけじゃ無い。みちるもほたるも、優しい。心配してくれる人たちがいる。
私達は他人だけれど、そこら辺の家族よりも絆が深い。温かい家族に恵まれていると心がジーンとなった。
おわり
※昨日お風呂に入っていて思い付いて、そのまま夜中に形にしたクオリティです🤣
はるせつと言う珍しいCPですが、外部家族大前提のお話です。みんなせつなママが大好きなんですよね☺私も大好き😆♥
冥王星よ、永遠なれ♪