二次創作小説『土曜の夜は特別なディナー(外部家族)』

「うわぁ~うな重だ♬︎♡」

みちるとせつなに夕飯が出来たと呼ばれ、自室からリビングへとやってきたほたる。
机に置いてある食べ物を見て驚きの声を響かせた。

「今日は土用の丑の日だから、特別に奮発よ」

驚いているほたるを満足気に見ていたみちるが、楽しそうに説明する。

「へぇ~、みちるも案外と庶民的なんだな」

そんな様子のみちるを見てはるかは意外に感じた。
“土用の丑の日にうなぎなんて在り来りだわ”等と軽蔑して違う物を食べそうな印象を持っていたからだ。
それに何より、みちるは良家のお嬢様。うな重の様な高級な食べ物は腐るほど食べていそう。それがはるかがみちるに抱いている事だった。

しかし実際のみちるはと言えば、案外と庶民的で普通に憧れを持つ割りと常識を持った人というイメージに変わっていった。
いい意味で裏切られたと言うのがはるかとしては結構嬉しい事だった。
そして今回の“土用の丑の日にうなぎを食べる”と言う件。
いや、うな重をチョイスする辺りはやはりまだまだお嬢様だが、イベントに乗っかるみちるを見るとはるかはホッとした。

「あら、はるか?私をたんだと思って?」

心外だと言わんばかりのみちるだが、嬉しそうな顔で笑っている。

「いや、いつも良い意味で裏切ってくれるなと思ってね。しかし、うな重なんて腐るほど食べてるだろ?」
「はるか、知らないの?」

心外だったのはせつなも同じ様で、異論を呈そうと口を割って入ってきた。
それまで黙っていたせつなの介入に、はるかは驚いてそちらの方向へと顔を向けて話を聞く姿勢を作った。

「なんだい?」
「こういうイベントは主婦には打って付けなのよ?」
「どう言うこと?」

主婦をしていないほたるも疑問に感じたのか、質問して来た。

「それはね、ほたる。今日はこの料理を食べればいいと決められている分、作るのが楽なの♪」
「つまり、乗っかると献立に悩まずに済むからありがたいって訳。お二人共、分かりましたか?」

みちるの説明に補足に入るせつなは、得意げでまるで学校の先生である。

「なるほど、言われてみれば楽だな」
「確かに毎日献立考えて作るの大変だもんね。いつもありがとう、せつなママ。みちるママ」

二人の苦労を知ったほたるは、夕飯を作る大変さを知り、二人に感謝した。

「それと、後もう一つ!」
「まだあるのか?」
「何なにぃ~?」

まだ他にも理由があると勿体ぶるみちる。
皆目見当もつかないはるかは、まだある事に驚いた。ほたるも無邪気に質問する。

「ほたるに丈夫に育って欲しいの!」
「ええ、普通の女の子としてすくすくと成長して欲しい。それが私とみちるの願いだから。勿論、はるかもね?」
「ああ、勿論僕も同意見さ」
「はるかパパ、せつなママ、みちるママ……本当に、本当にありがとう」

手抜き料理の話から一変。ほたるを想う心からうな重を作ったと聞き、ほたるは嬉しくて涙ぐむ。

「だから、いっぱい食べて大きくなってね、ほたる」
「遠慮はいらないのよ、ほたる」
「僕達、本当の家族なんだからな!」

はるかの言った通り、四人は他人同士。本当の家族では無い。プリンセスを外敵から守ると言う使命を持った戦士として出会った。
普通であれば、絶対に出会わない四人。
しかし、同じ使命を持って戦士として目覚めた四人は、こうして出会い、苦難を乗り越えて本当の家族以上の絆で結ばれた。

「さぁ、二人とも。召し上がれ」
「いっただっきまーす♪」
「頂きます」
「どうぞ」

再転生をしてから初めての土用の丑の日。そしてうな重。
せつな達の想いを背負い、ほたるは幸せを噛み締めながらうなぎを食べ始めた。

「うなぎか……ちびうさちゃん、元気かな?」

うなぎを食べて元気になったほたるだが、体とは裏腹に心は少し元気をなくしかけていた。
デッドムーンとの戦いの後、帰って行ったちびうさを思い出したからだ。

「今頃はキングとクイーンと幸せに暮らしているでしょうね」
「勉強、頑張ってるんだろうな。私も頑張らなくちゃ!」

未来で会うその時まで、自分磨きを頑張ろうとうなぎを食べてそう違うほたる。

「ご馳走様でした。美味しかった」
「お粗末さまでした」
「夏休みの宿題、頑張れそうだよ」
「無理しないようにな」
「程々に頑張って」

自分の為、毎日頑張って献立考えて作ってくれる2人に、もう少し大人になったら料理のお手伝いをしよう。
そんな事を考え始め、少し精神的に成長したほたるだった。

おわり

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