セラムン二次創作小説『せつなママはメンクイ』


大学のゼミで出たレポートを書き終えたせつなは引きこもっていた自室を出て、リビングへ姿を現すとそこには優雅にはるかとみちるが寛いでいた。

ほたるの姿だけが無く、少し気にはなったものの定位置であるソファーへと腰掛ける。


「よっこいしょっと」

「おいおいせつな、年寄り臭いぜ?」


レポートと睨めっこでずっとデスクワークをしていたせつなは軽く腰を痛めていて、下半身がなまりつつあった。

今日久しぶりの発言が、若者らしからぬ言葉に本人は何も感じていないばかりか気に求めていなかった。

しかし、その言葉をはるかは引っかかり指摘した。


「腰が痛くて、つい」

「あら、大丈夫?」

「ずっと同じ姿勢でレポートと格闘していたからだと思うわ」

「分かるわ~。私もヴァイオリンずっと弾いていると肩が凝るもの」


同じ姿勢をしているあるあるでせつなに同情すると同時に寄り添うみちる。何気ない日常会話のつもりだった。

しかし、その会話を聞いていたはるかは異議を唱えた。


「会話が年寄りなんだよな……」

「あら、不満?はるかもほたるが赤ちゃんの時、抱っこしすぎて体がバッキバキだって言ってたでしょ」

「そうだけど……もっと若者らしくフレッシュに行こうぜ!」


そんなはるかもほたるの子育てで同じ体験をしていた。

それでもこの会話は余り歓迎しない。一気に老け込みそうな気がするからだ。


「例えば?」

「恋バナ、とか?」

「うふふっはるかが?」

「みちるとせつなもな」

「私も?」

「って言うか、せつな!そう言えば噂の殿方とはどうなっているのかしら?」


若者と言えば恋バナだと提案したはるか。全くの見切り運転だったがノリノリのみちるにより自体は思わぬ方向に行こうとしていた。


「噂の殿方、とは?」

「大学で言い寄られている人がいるとか言ってたじゃない。どうなっているのか、是非聞きたいわ」


見るからにワクワクして楽しんでいるみちるとは対象にせつなは嫌な事を思い出し、苦笑い。と言うより引きつった顔を固まらせている。


「別にどうもなってないわよ」

「進展なしってこと?」

「まあ、そうね」

「どうして?付き合ってみたら?」

「私たちには大切な使命があるのよ?恋愛している暇なんて無いわ。ほたるだってまだ小さいし」

「……一歩踏み出すのが怖い言い訳をしてるようにしか聞こえないな」


はるかの言う通り、恋をしなくていい理由を戦士の使命に逃げている様に見える。

使命があるから恋をしてはいけないなんてルールは無い。前世とは違い自由だ。

普通に生きていれば好きな人くらい出来るだろう。止めたくても止まらないのが心と言うもの。その気にさえなればせつなは美人だ。すぐに恋人が出来るだろうし、せつなを彼女にしたい人なんて幾らでもいるだろう。その中の一人がみちるの言う殿方こと、遠藤だ。


「無駄だよ!せつなママはメンクイだもん」


暫しの沈黙の空気を破ったのはいつの間にかリビングへと来ていたほたるだった。

まるで鎌でも持っているかのような鋭い切れ味で会話を斬るほたるはセーラーサターンそのものに見える。

サターンの片鱗を見せる冷たい瞳を見たせつなは全てを見透かされているのでは無いか。何かを知っているのでは無いかと心の中で怯える。


「だってせつなママったらね、はるかパパ、みちるママ」

「な、何を言うの?ほたる……」


と言うか何を言おうとしているのか?告発される内容によってせつなは生きて行けない。

それは戦士をしている中でキングーーつまりは地場衛に淡い恋心を抱いていた過去がある。いや、未来か?色々ややこしいが、せつなとしては過去の事で忘れたい出来事になっていた。

キングである地場衛は所謂国宝級イケメン。いや、宇宙一の顔面偏差値の持ち主。そこに加え、自身の主であるクイーンーーうさぎの夫でもある。所詮は叶わぬ恋。だけど好きになってしまった。

それ故に秘密の恋。誰にも他言していない。

顔で選び好きになった訳では無いが、初めてでたった一度の恋の相手が極上のイケメンだった。ただそれだけの事だった。

その事をほたるが知っているとは考えられないが、あらゆる可能性は考えておいて損は無いとせつなは感じていた。


「休みの日は麺類ばっかり食べてるんだもん」

「へ?」

「え?」

「は?」


含んだ言い方をするので何を言うかと思いきや、思っていた事と違いせつなを初めはるかもみちるも驚き拍子抜けした声を出す。


「ほたる、何の話かしら?」

「僕たちは恋愛の話をしていたんだけどな」

「うん、知ってるよ」

「じゃあ何で食べ物の方になるの?」


子供の言うことだ。余り気に止めるのもと思いながら、ほたるは人生二週目。いや、三週目の頭のいい子だ。何かあるかもしれないと根気強く聞くことにした。


「麺をよく食べる人は面食いなんだって」

「誰がそんなこと言ってたんだ?」

「桃ちゃんと九助!」


ほたる曰く、中華料理屋を営む桃と蕎麦屋の息子の九助。二人とも店をよく手伝っていく中で人間観察をしていて、麺を食べている人の女性の連れが大概かっこよかったからとの事だ。

つまり統計が取れているのだから証明されていると賢いほたるは豪語して言い切った。


「結果論ね」

「でも、心当たり無い?」


よく思い出してみて。美奈お姉ちゃん達がそうじゃない?とほたるは問いかけた。

そしてほたるは自分達の周りにいる人達が美男美女であることに将来の事を思うと不安だと危惧していた。


「まぁ、そうかもね」

「でしょ?だから絶対、せつなママも面食いだって私は考えてるんだ。それがせつなママが遠藤って人を彼氏にしたくない理由かなって」


そうでしょ?と先程とは打って変わって無邪気に笑うほたるはサターンと言うより女神だった。

面食いと言う理由なら仕方がないと納得するはるかとみちる。そして、もうそういう事にしておこう。あながち間違ってないのだからと乗っかることで事なきを得てホッとしたせつなだった。





おわり




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