セラムン二次創作小説『初めての雪遊び(ほたちび)』


「2人とも元気でいいわねぇ~」

「ほんと、若いって素晴らしいわ!」

「おいおい2人とも、発言が年寄り臭いぜ」


雪が降り積もった休日の朝、庭で初めて触れる雪に大はしゃぎになって遊んでいるほたると、未来から再び遊びにやって来たちびうさを家の中から微笑ましく見ていたせつな達は、この寒さの中良くはしゃげるなと思いながら見ていた。


家の中から3人に見られているとは露知らず、ほたるとちびうさはお互い初めて見る雪に大はしゃぎで遊んでいる。


「うわぉー歩いた所、形が着くよ!」

「本当だー。ふわふわしてて冷たくて面白い!」


無意味に歩いてみたり、雪を両手いっぱい取って放り投げたりしている。

そして今度は事もあろうに2人して雪に寝そべり始めた。


「わぁーふかふかでベッドに寝転んでるみたい」

「冷たくて気持ちいい雪のベッド、楽しい」


雪に寝転がった2人の様子を中で見ていた3人は、突拍子も無い事をして驚いた。


「あの子達、寒いだけでもゴメンなのに雪に寝転がったわよ!」

「信じられないな。雪で濡れて風邪引かなきゃいいけど…」

「大変!お風呂湧かせとかなきゃ!雪遊び終われば風呂に入れて風邪引かせないようにしないと。クイーンとキングに申し訳が立たないわ。ほたるも風邪引かれたら困るもの」


ちびうさが現代に来た時にせつな達は未来のキングとクイーンから色々と任されていると言う使命感でいつも気を配るようにしている。張本人には自覚は無く、母親譲りで健康管理には無防備な所がある。

ほたるの方は自分達が親なので兎に角徹底して健康管理をしている。今の所再転生前とは違い、病気一つせずとても元気な至って普通の女の子だが、もし何か病気にでもなれば世界変革待った無しなのでは無いか?と秘めたる能力に怯えている。

ましてやせつなはほたるが通う小学校の養護教諭だ。健康管理には人一倍うるさい。ある意味職業病みたいな物だ。


そんな3人の想いとは裏腹にほたるとちびうさはずっと雪に寝そべり楽しそうにしている。


雪から起き上がったほたるとちびうさは、今度は寝転がって付いた自分たちの形を見て喜んでいる。


「雪って面白いねーほたるちゃん」

「雪って楽しいね、ちびうさちゃん。せつなママ達も遊びに出てくれば良かったのにね?」

「仕方ないよ!アスリートのはるかさんもバイオリニストのみちるさんも体壊しちゃいけないし」

「3人ともそんなキャラでも無いもんねぇ…」


寂しがって会話をするほたるとちびうさは朝、雪が積もっている事を確認して3人に一緒に雪遊びしようと誘っていたのだが、寒いと言う理由で華麗に断られたのだ。


ちびうさが住む30世紀の未来では銀水晶の力により天候はコントロールされ、雪は降らない世界。

一方のほたるは転生後に事故にあい、サイボーグ化した際病弱になり、雪遊びなんて夢のまた夢で、今回やっと初めて雪に触れる事になった。

そんな2人だから雪はとても珍しく貴重で楽しくて面白いものだった。

遊び方もよく分からなかったからせつな達に教えてもらいたかったが、自分たちは気にせず2人で楽しんでと優雅に断られた。


その内2人は雪に慣れてきて、雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、雪で思いつく限りの遊びを夢中で一通りやり尽くすとちびうさはふと思い付き、ルナPを取りに家に入り、外へと持ち出した。




「ルナP~変化!」





出てきたのは2人乗りのソリだった。

庭でソリに乗って夢中で遊び始める2人。


初めて触れた雪は2人にとってとても魅力的で遊び方も無限大の為、時間も忘れずっと遊び続けていた。

それを心配そうに中から見ていたせつなは何時でも入れるようにと風呂を沸かし、みちるはお得意でほたるが好きなシチューを用意して待っていた。

みちるの得意なシチューは4人で暮らしてまもなくの時に“このままずっと4人で暮らせたら”そんな想いを込めてよく作っていて、ほたるの成長する度に成長記念として作っていた。優しく雅な味がして、みちる特製シチューがほたるの1番の大好物となっていた。こんな雪で寒い日に食べる温かいシチューは格別に美味しいだろうと雪遊びを存分に楽しむ2人のためにたっぷり作って用意した。



いい匂いがしたのか、遊び疲れたのか、はたまた満足したのかタイミングよく家の中に入ってきたほたるとちびうさはみちるがシチューを作っているのに気づき喜ぶ。


「みちるママお手製のシチューだ」

「いい匂いだし、美味しそう」

「ちびうさちゃん、みちるママのシチューすっごく美味しいんだよ!」

「そうなの?すっごい楽しみ」

「その前にお風呂入ってらっしゃい。寒かったでしょ?雪の上にも寝そべったりして濡れてるだろうから風邪でも引いたら大変よ」


せつなに即され、素直にお風呂へ入りに行ったほたるとちびうさは風呂の中でも楽しそうに入っていて、歌声や会話が聞こえてくる。


お風呂から上がった2人は髪の毛を洗っており、それに気付いたはるかが乾かしてあげる。


2人が風呂に入って髪の毛を乾かしている間にみちるとせつなは2人でディナーの用意を終わらせていた。


「2人とも、夕飯ができたわよ」


みちるに呼ばれダイニングへ移動するとテーブルにはシチューだけでは無くほたるの好きな物ばかり並んでいるばかりか、グレープを始め外部カラーで彩られたフルーツのケーキが用意されていた。


「ほたる、誕生日おめでとう♪」


パァーンとクラッカーが鳴り、驚くほたる。

そこにダイニングに予め持って来ていたバイオリンでハッピーバースデーの曲を弾き始める。

それに合わせてはるかとみちるも歌い始めた。そこにちびうさも参加する。

その後も何曲か弾き語り、みちるママによるほたる誕生日会リサイタルが開催された。


4人に祝ってもらって感動で胸いっぱいになるほたる。

再転生してから急成長を遂げ、中々安定しなかったほたるは思えばこの日が初めての誕生日を祝ってもらう事に気づいた。

再転生前の事も勿論記憶にあるほたるは、毎年本当の父と母に祝って貰っていた事を思い出す。

母は事故死、父はその時のショックで異星人にその身を売り、最終的にはダイモーンとなりスーパーセーラームーンだったうさぎに殺された。

仕方の無い事だったから受け入れているし、戦士である以上どんな運命も乗り越え使命を全うすると誓っている。

再転生前の両親との思い出はとてもいい思い出として心の中で生き続けるし、今はせつな達が自分の育ての親で大切な家族と理解している。

幼い頃から色んな過酷な運命を乗り越えてきたほたるは誰より大人で、強く優しく大人びた所がある。


そんなほたるの久しぶりの誕生日を素敵な日にしたいとせつなは30世紀に帰っていたちびうさをクイーンとキングに事情を話し、許可を得て21世紀の現代に呼び出して、等身大の小学生として楽しく過ごして貰おうとはるか達と誕生日会を企てていた。


雪が降った事は予想外ではあったが、サプライズで誕生日会を用意するにはとてもいい演出で、雪で遊ぶ事が初めてだったほたるとちびうさにとっては最高の暇つぶしの遊びになったようで一日中遊んでいた。

もっともちびうさはせつな達から出来るだけ長くほたるを外に連れ出し遊んでこいとの使命を与えられていたが、結果として雪でそんな使命を忘れ一日中夢中になって遊んだのだが。


「ほたるちゃん、お誕生日おめでとう」

「ありがとうちびうさちゃん、ありがとうはるかパパ、みちるママ、せつなママ」

「夕飯食べようか?一日中遊んでお腹ぺこぺこだろ?」



グゥ〜ッ



言われるまで気づかなかったが、言われた途端お腹のラッパがなってお腹がとても空いていたことに気づき、用意されていたシチューに夢中で食らいつく2人は、普通の小学生の女の子そのものだった。


その姿を微笑ましく見守るはるか達だった。






END







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