セラムン二次創作小説『聖夜に響く音色(外部家族)』



「クリスマス、何かリクエストはある?」


ほたるが成長し、安定した体になって過ごす初めてのクリスマス。

ほたるのやりたい事に極力答えてあげたいとみちるが質問する。


「ん~、みちるママとヴァイオリンでクリスマスソング弾きたい!それで、4人で過ごせたらそれでいい」

「そんな事で良いの?」


返ってきたのは意外な答えだった。

もっと子供らしい我がままを言ってくると思っていたみちるは拍子抜けする。


「うん、勿論」

「もっと我がまま言って良いのよ?」


子供らしくない答えに、みちるは逆に不安になり、聞き返す。


「みちるママにいつもヴァイオリン教えて貰ってるから、はるかパパとせつなママに成果を見てもらいたいの」


そう言われ、みちるはハッとなった。

練習だけで、発表の場を設けていなかった。盲点だった。


「ごめんなさい、ほたる。気付かなくて」

「ううん。いつも優しく教えてくれるから、感謝してるの。はるかパパやせつなママにも聴いてもらって感謝を伝えたい」


体の成長と共に、心もすっかり大人に成長していたほたる。

娘の成長が嬉しい反面、少し複雑な気持ちになるみちる。


「じゃあ、2人には内緒で練習しましょうか?」

「うん」


そうして2人には秘密裏にクリスマスソングを練習する日々を過ごす事になった。


そしてクリスマスイブ当日。

せつなとはるかをリビングへと誘い、練習していた曲を披露することに。


「へぇー、ヴァイオリンのリサイタルか?」

「何を弾いてくれるか楽しみだわ」


リビングへと即された2人は、ヴァイオリンを持ったみちるとほたるを見て、勘づく。

2人は、並んでソファーに腰掛ける。


「クリスマス・リサイタルへようこそ」


ほたるがそう恭しく挨拶をしながら、みちると二人でお辞儀をする。


みちるの合図で弾き始める。


曲はほたるたってのリクエストで、“きよしこの夜”“サンタが街にやって来る”、そして“ホワイトクリスマス”の3曲だ。


クリスマスの定番ソングであり、ヴァイオリンにもピッタリで。ほたるにも弾けるものだったからだ。


はるかやせつなが帰宅するスキマ時間で練習した成果をほたるは音色に載せる。

みちると合わせる時間もあまり無く、結局前日に一回だけだった。

けれど、そこは流石は親子。息はピッタリ合っていて、ほとんど合わせられていないとは感じさせない、ハーモニー。


2人の奏でるメロディーに、はるかもせつなも心地よく。目をつぶって、身を任せて聴き入っていた。


「ありがとうございました♪」


間違えること無く演奏を終えると、ほたるはお辞儀をしながら感謝の言葉を口にした。


「ブラボー、ほたる」

「とっても素敵だったわ」


はるかは笑顔で称賛し、せつなは目に涙を浮かべていた。


「あー、せつなママが泣いてるぅ~」

「もう、ほたる!いつの間にこんなに成長したのよ!もう!」


そう言いながらせつなは号泣しながらほたるに近づき、ギュッとキツく抱き締める。


「せつなママ、苦しいよぉ」

「まぁ、せつなったら!」

「仕方ないよ、せつなは歳だから。涙腺弱いんだよ」

「誰が歳ですって?」

「何だ、聞こえてたのか……」

「耳、遠くないわよ!」

「いや、泣いてるから聞こえないかと。すまない」


素直に反省し、せつなに謝るはるか。


「ふふっ飽きないわ」

「そうだね」

「二人が仲良いのは私も嬉しいわ」


このはるかとせつなのやり取りに、ほたるとみちるはほっこりする。


「ほたる、もう一度、今度は一人で弾いてるのを聞かせてくれない?」

「うん、もちろん♪」


待ってました!と言わんばかりに極上スマイルで返事をする。


曲は同じものだが、今度はみちると3人でほたるの成長を見守る時間となった。

二人が座っていたソファーにせつなを真ん中にして、はるかとみちるは離れて座る。

ほたるが弾いてる姿を見て、今度はみちるが涙を流す番。

そして気付けばせつなと抱き合いながら号泣。

それを傍で見ていたはるかは呆れ気味に笑顔を浮かべていた。


「もう!二人とも聴いてるの?」


演奏を終えたほたるが、大号泣している二人のママに問いかける。


「聴いてるわよ」

「ほたるぅ~」


ヴァイオリンが弾けただけでこの大号泣。

今後の事を思うと、先が思いやられる。

そうはるかもほたるも思った。


その後みちるも何曲かソロで披露した。クリスマスソングや、それ以外も。


ほたるの成長に泣いたり笑ったり。みちる、せつな、はるかにとって、この日はほたるの成長を見れた充実した時間になった。


「じゃあ私、そろそろ寝るね?早く寝なきゃ。サンタさん来てくれない」


時計を見るともう夜の10時。

まだ子供のほたるは充分、遅い時間だった。

おやすみなさいと挨拶をしながら、眠気まなこを擦り、自分の部屋へと向かった。


サンタが来てくれると信じているところを見ると、そこはまだまだ子供。三人は可愛いなと微笑ましくなった。


そして翌日。クリスマス当日。


「はるかパパ、みちるママ、せつなママ、おはよう。見て!サンタさんがプレゼントくれたよ♪」


嬉しそうにほたるはプレゼントの箱を見せてきた。


「そう、良かったわね」

「きっとほたるがいい子にしてたからね」

「そうだな、昨日僕たちの為にヴァイオリンも練習して弾いてくれたからな」

「サンタさん、見てくれてたんだね。リサイタル♪」


そう嬉しそうに話すほたる。

それと言うのも、数日前。


「サンタさん、来てくれるかな?」


三人に交互に毎日同じ質問をして来たから。

その度三人は同じ答えをしていた。


「そうね。いい子にしてたら、きっと来てくれるわ」


それを信じて、ほたるはほたるなりにいい子にして待っていた。

そしてクリスマス当日の今日、その想いは届き、サンタからプレゼントを貰ったという事だ。


「だけど、残念だな」

「あら、どうして?」

「サンタさん、見られなかったから」

「そうか、それは残念だったな」

「お礼、言いたかったんだけどな……」

「その想いは、きっとサンタさんに届いてると思うわ」


そう、そのプレゼントは勿論サンタクロースからのものではなくて。はるか達三人からのものだから。

そうとは知らず、ほたるは嬉しそうにプレゼントを開けていた。


ほたるがもっと笑顔になって、はるか達三人が幸せの涙と笑顔になるまで後本の数分。





おわり



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