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君が夏なら、私は雪になる。
おやすみ、を夜に置く さようなら、のように おはよう、を朝に置く はじめまして、のように
ひとりぼち加湿器の音さわさわと雨にたとえて眠りにつく夜
吸う息の冷たさ痛さ沁みながら冬を一番身近に置く
雪が降ったのだね 君の住む街 そうか 泣きそうな曇天は堪えきれずに その空で涙を形にして 傷つける辛さも 傷つけられる切なさも 閉じ込めようとしたのだね 選びとった余韻は 続く意味を含んで 君の 私の 空の 片隅で ひとひらの雪になったのだね
痩せた指回るリングに陽が霞む嘆くまいに憐れむまいに
寝息の満ちる夜の底 たどり着いても届かない 昨日の私を言葉に仕舞う ねいきのみちるよるのそこ たどりついてもとどかない きのうのわたしをことばにしまう
夜の雨命の記憶よみがえり肺が苦しい蒼の魚
言えなさが降り積もって夜の雪