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今までで一番印象深いおみくじ
古いSDカードが思わぬところから出てきて、懐かしい写真を見ていたらいろいろ思い出したので、唐突ですがおみくじの話を書きます。
わたしは寺社仏閣巡りが好きなのですが、お寺や神社に行く度におみくじを引いていたらキリがないので、基本的に初詣以外でおみくじを引くことはありません。
今年の元日もいつものように地元の神社でおみくじを引きました。観光客向けではない普通の田舎の神社なので、おみくじも1回30円と良心価格。いつ壊れてもおかしくないような年代ものの券売機に10円玉を3枚入れると、折り畳まれたおみくじがポトっと落ちてきます。
「何が出るかな〜」とワクワクしながら引くというよりは、子どもの頃からの習慣でやっている感じなので、今年引いたおみくじがどんな内容だったか全く覚えていません。内容どころか中吉だったのか末吉だったのかすら不明。大吉でなかったことだけはかろうじて覚えているのですが…
引いたおみくじをどうするかは人それぞれだと思いますが、我が家では
「いいくじが出た時は持って帰って1年間神棚に供えておく。悪いくじが出た時だけ神社に結んで"悪い運気"を神様に預かってもらう」
というのが父の教えでした。
父はかなりお節介な性分で、初詣の時におみくじを木に結んでいる見知らぬカップルなどにも
「あのね、おみくじというのは、なんでもかんでも結べばいいものじゃないんですよ」
などと突然講釈を垂れはじめるので、子どもの頃は恥ずかしくて仕方ありませんでした。(父が他界した今となってはそれも懐かしい思い出です)
ちなみに我が家では、神棚に供えておいたおみくじは神社のお焚き上げの時に古いお札などと一緒に燃やしてもらっています。
そんな感じでおみくじにそれほど思い入れのないわたしなのですが、人生で唯一、鮮明に覚えているおみくじがあります。
それは2009年5月に、清水寺の舞台の上で引いたおみくじです。
この頃に何があったのか、すぐに思い出せる人はきっと相当な記憶力の持ち主でしょう。
メキシコで発生してから瞬く間に世界中に広まった新型インフルエンザの感染が、関西で相次いで確認されたのが2009年5月。
この影響で京都や大阪への修学旅行はキャンセルが相次ぎ、個人旅行もキャンセルが続出しました。
当時大阪に住んでいたのですが、のんびり屋のわたしが「マスク買っといた方がいいのかな」と思った頃には時すでに遅く、マスクは店頭から消えて手に入らなくなっていました。実家(九州)の母は「普通に売ってるよ」と言っていたので、たぶん関西だけがそんな感じだったのだろうと思います。
そんな2009年の5月下旬、関東に住む友人が京都・大阪観光にやってきました。
もともとわたしが「京都は新緑の季節がおすすめ!」と伝えていたので、その時期に旅行の予定を組んでいたのですが、状況が状況だけに「今関西こんな風なんだけど、本当に来る?」と確認したところ、友人は「え?行くよ?」と全く気にしていない様子だったので、予定通り京都・大阪観光をすることになったのです。
京都ではいくつかお寺を回りましたが、あんなに観光客の少ない京都観光は初めてで、正直かなり快適でした。
銀閣寺も人はそれほど多くなく、哲学の道を歩いてもすれ違う観光客は数組ほど。永観堂では、以前から見たいと思っていた「みかえり阿弥陀」像をじっくり拝観でき、境内の新緑をゆったり観てまわることができました。
いつもなら修学旅行生をはじめたくさんの観光客で埋め尽くされている清水寺の舞台もご覧の通り。
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清水寺は過去に何度も訪れているのですが、この時は人が少なかったせいか、いつもは全く意識していなかったおみくじの売り場がたまたま目に入り、せっかくだから引いてみようかなという気になったのでした。
おみくじの筒を振り、出てきた棒に書かれた番号のくじを受け取ると…
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凶!!!
人生で初めての凶!
しかも書かれている内容がさらに衝撃的です。
悦び事なし
待人来らず
望みごと叶わず
争い事は負けなり
失せ物出がたし
転居、ふしん、縁談、人やとい、旅行よろずわるし
たたみかけるようにマイナス要素のオンパレード。
「よろずわるし」って!サクッとまとめてくれるな!
そして極めつけは、
生死はあやふし
生死が危ういって、そんなこと言うおみくじある!?
一緒に居た友人はそれを見て大爆笑。
いや待て。
そもそも「生死はあやふし(危うし)」の「は」って何だ。生死「は」ってそこだけ強調して他はセーフみたいに書いてるけど、結局全項目アウトじゃないか!
何で「は」を入れたの!?「生死あやふし」でよくない!?
…と、助詞の使い方にツッコミを入れるわたしに「ツッコむとこ、そこ!?」と言いながら、ヒーヒー言って笑う友人。(※清水寺の舞台の上で)
友よ、あの時は豪快に笑い飛ばしてくれてありがとうね。正直かなり救われました。
この時のおみくじは、父の教えに従って持ち帰らずにくくりつけました。
凶なんて引いたことがなかったので、おみくじを結んだのは人生で初めての経験です。ちなみにわたしが結んでいる間も友人は「ダメだ、お腹痛い…」と言いながら笑っていました。
引いたおみくじの有効期限(?)がいつまでなのかはわかりませんが、一応その年は生死が危うくなるような病気・ケガをすることなく乗り切ることができました。
生死すら危ういのだから、高望みはせず、生きているだけでも儲けもんと思え、ということなのかも。
それから何年も経ってから、清水寺のおみくじは凶の出る率が高くて有名だということを知りました。(一説によると全体の3割が凶とも)
ということは、わたし以外にも清水の舞台の上で凶を引いて衝撃を受けた人がたくさんいるってことですよね。
もしかしてこの記事を読んでくださっている方のなかにも仲間がいるかも…?
さて、あれから早や15年。いろいろなことがあったけれど、今もこうして生きています。
生きてるだけで儲けもん。
生きていることに感謝。
今となってはそんなふうに思わせてくれる、清水寺の「凶」のおみくじの思い出です。
ただ、今でも助詞「は」の使い方には納得していませんが(笑)