葉桜的博物館見学④
茨木市立川端康成文学館に行ってきた話
知恩寺での戦利品を抱えて阪急電車に乗り、茨木市へ。
周囲の迷惑にならないよう細心の注意を払いながら本を詰めていた手提げにノートとペンケースとぬい2体を詰め、空いたリュックに国語辞典並みの重量を持った本を詰める。向かいに座ってたおっちゃんに「なにこの子……」みたいな目で見られたのは本のタイトルと見た目が合致しないからなのか、癖強すぎるオタク丸出しの手提げか……
突然の腹痛にやや行程が遅れつつも、茨木市立川端康成文学館へ向かう。
茨木神社横の散歩道では手作り小物や菓子のテントが並んでいて、どんなものかと眺めながら散歩道を歩く。駅からやや離れたところに位置している文学館だけども、茨木神社付近は賑わいを見せる商店街や静かな散歩道があるため退屈はしない。
まあまあ久しぶりの訪問になるけれども、何度か行っている場所。最初に行ったのは文アルの等身パネルがあった「川端康成×横光利一」の展示だった。
うわ、懐かし。
意外に、川端康成は大阪出身だったりする。
これは大阪出身、現在も大阪に住む私も知らなかった。
郷土についての授業は小学校三年だかどこかでやったものの、郷土の偉人ってあまり力を入れていなかったような気がする。作家なんて特に。
織田作之助も文アルやってから知ったし……
生誕の地は茨木からやや離れた大阪天満宮の近く。現在はマンションが建ち、生誕地を示す碑が立っている。本殿の門出てちょっと斜め。
両親と死別し、3歳で孤児となった康成は祖父母に引き取られる。その祖父母が住んでいたのが茨木市宿久庄。3歳から旧制茨木中学を卒業する18歳まで過ごしたのが茨木。茨木中学2年生で作家を志している。
つまりは「ゆかりのふるさと」というわけだ。この頃の話は「十六歳の日記」などの作品にも描かれている。文学館では茨木を描いた作品が収録された作品集も販売されている。
常設展示では生い立ちと作家を志した茨木中学の頃、作品と舞台、ノーベル文学賞受賞とその生涯を追う。
ふるさとの家が模型で表され、茨木周辺のゆかりの地が地図上に紹介されるなど、「川端康成と茨木」を中心に構成されている。
また、鎌倉・長谷の書斎が再現され、文学館では珍しく再現書斎の写真を撮ることが出来る。現在はコロナウイルスの影響で閉鎖されているが、ただ写真を撮るだけではなく、入って写真を撮ったり原稿用紙に万年筆で書く作家体験ができる。
これまで何度か、他の文学館で再現書斎を見てきたが中に入ることができる再現書斎は無かった。
現在開催中のテーマ展示は「川端康成と横光利一―100年目の邂逅―」。
2021年は川端康成と横光利一が邂逅して100年目となる年。横光が亡くなる1947年まで四半世紀に渡る交誼を書簡や自筆原稿などの資料とエピソードが紹介されている。つまり牛鍋囲んで100年目……?
ゴールデンバットのような見た目をした横光利一『愛の挨拶』を拝む。横光の本の装丁はどれも良いからつい長く立ち止まってしまう。
小さい展示室ながらも、書簡や自筆原稿の多い展示で密度と満足感、熱量が凄い。並んでいる本も当時のもの。
「文壇諸家価値調査表」のエピソードが好き。
川端は数多くの弔辞を読んでいる。その中でも横光へ宛てた弔辞は特に胸を打つもので、最後の一文の言葉通りの後半生を送ったともいえる。もし全文読む機会があったら読んでほしい。
過去の「川端康成×横光利一」では弔辞の引用が壁に文字として展示されていたけども、その手法を今でも鮮明に覚えている。
展示室を出たところにある小さなケースでは徳田秋聲生誕150周年の記念展示がある。
いろいろな文学館や図書館が協力している展示。ちょうど秋聲についていろいろ調べているところで、どんなものかと気になっていた。博物館実習生が実習の一環として取り組んだそう。
良いですね……とても良いじゃないですか……なにそれ……めっちゃいいじゃないですか……
文学館のショップでは「千羽鶴」の文庫本を買いました。新刊書店に無ければ文学館で買うという選択肢もある。
何か見覚えがあるような、気のせい気のせい。武器が出そうとか思ってない思ってない。
ブックカバーが付いてきます。
本当は横光と川端についての本が欲しかったんだけども、売り切れ。もっと早く行っておくべきだったか……
茨木へ行く機会があれば是非覗いてみてください。
「これ、無料で良いんですか?」ってなる展示。