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季節は春だし、それなのに何も変わらないし。

毎日見ているはずなのに、桜の木が花を落とし、葉桜へ変わっている姿を見て「いつのまにか」と思ってしまう。
葉桜も、綺麗だ。もしかしたら、葉桜の方が好ましいかもしれない。満開の桜のような、底なしの無邪気な明るさというか、愛されている自信全開というか、押しつけがましさが無い。
いや、「押しつけがましい」だなんて偏見だ。桜はただそこで咲いているだけなのだから、「押しつけがましい」と感じたのならそれは受け取る側に問題があるのだろう。
わかっているよ。

桜が散ってしまうのを見ていると、焦燥に駆られる。
皮膚の内側が、蠢く気配がある。
何も変わらない。
社会人になって、4月を迎えたところで特に何も起こらないのだと知った。
クラス替えも、卒業もない。
だから、変わるためのエネルギーは行き場所を失って皮膚のすぐ裏側を這っているんだろう。ずっと皮膚が浮いているようで気持ちが悪い。

このお題を見てから、ずっと焦っている。
春にしたいことを見つけたい。意地でも見つけたい。「したいこと」さえ見つかれば、雲一つない澄んだ青空を見ても居心地の悪い思いをしなくて済むような気がする。朝起きてすぐ眩いほどの春光を喰らっても、カーテンを閉めず胸を反らして身体で目一杯受け止められるかもしれない。もしかしたら、道端で咲いている春の花に微笑みかけたりなんてしてしまうかもしれない。
「#この春やりたいこと」を見つけるのは私にとって最重要事項なのだ。

早く「#この春やりたいこと」を見つけないと。
さもなくば春が終わってしまう。
この原稿の締め切りだって、あと15分だ。
どうしよう。何にしようか。

ボクシングを始めてみたいなと思った。
でも、こんなご時世に公言してしまっていいのだろうか。

丁寧に珈琲を淹れてみようかと思った。
豆を挽くと、嗅いだことのない酸っぱい匂いが部屋中充満した。

又吉さんに影響されて買った『俳句歳時記』を撫でてみる。
ページを捲るのは面白いけれど、俳句が私から零れ落ちる気配はない。

ゲームセンターで1mほどある春色の鮫のぬいぐるみを獲った。
……駄目だ。通常運行じゃないか。

もう、これしかない。
原稿の締め切りも、あと5分。
私がずっと課題として掲げていること。
これが叶った暁には、春物の洋服に身を包んで少しヒールのある明るい靴で背筋を伸ばして歩ける自分の姿が思い描ける。

私の「#この春やりたいこと」は
【この春やりたいことを見つけること】だ。

逃げですよ。わかってます。
……さぁ、どうするかなぁ

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