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「デザインマネジメント論」を語る(2)
先週に引き続き、八重樫文さんと安藤拓生さんの本『デザインマネジメント論 ビジネスにおけるデザインの意義と役割』(新曜社)について、ミラノのカフェで八重樫さんにこの本について質問した記録をポドキャストで公開しました。
今回はIIの「デザインと技術の相互作用」という見出しの意図、「デザイン主導型イノベーション」と「デザイン・ドリブン・イノベーション」の違い、「デザインディスコース」「テクノロジーエピファニー戦略」のデザインマネジメント論における位置づけ、「ラディカルサークル」は組織論の範疇か?といった話が録音されています。
ベルガンティの「デザイン・ドリブン・イノベーション」は、2000年代のデザインマネジメントにおける「デザインシンキング」全盛に対して、2010年代、違ったアングルを提供しているものとして参照され続けてきた。それがこの10年間のデザインマネジメント論を代表する流れではないか、との八重樫さんの意見です。これがポドキャストの最後のまとめになっています。
それにしても、経営とデザインの議論は考えるべきこと多し、です。先週も書いたことですが、また書きます。しつこく!
デザインが経営に近づくために、盛んに「センスなんて関係ないですよ!」と話してきて、そしてデザインがより広範囲に適用されたとき、逆に経営(学)の人から「センスって大事ですね」という声がでてきているわけです。一橋大の楠木健さんなど、その1人です。
このセンスって、デザイナーが語るセンスと経営が語るセンスが違うと思っていると勘違いで、ある直感的な判断は審美性に依拠する、という点で同じなわけです。そして論理的な判断は審美性に依拠しない、ということです。
そしてですね、かなりのデザイナーは相変わらず「センス?関係ない!」って言い続けている。デザインが論理的であることを強調したいのでしょうが、その論理が何処で使われるか?です。その範囲を説明せずに、センスは不要というのは、「ちょっと大丈夫?」ってなことになります。
だから、これ(センスは関係ない、という台詞)は周回遅れになっているよ、とぼくは言いたいですが、もちろん「センス関係ないよ!」と語りかける対象が誰か?ということでもあります。少なくても、ビジネスをやっていて、そうしたデザイナーの声に耳を傾けようという人はある程度、センスを意識していると思うのです。そうではない人は、ずっと聞かないし、デザインに目を向けない。そこの間口を広げるのであれば、それはデザイナーではない人が語らないと人は聞く耳をもたないでしょう。
ベルガンティはエンジニアで経営学者だから、彼が愛を語ってもビジネスパーソンは耳を傾け、しかしイタリア人であるために、その愛の語りを外国人は色眼鏡で見るだろうとあらかじめ予防線を張るわけです(「突破するデザイン」の一文です)。このあたりの微妙な歩幅の取り方がセンスなんですね。
写真は@nzai_ken