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自然+無形文化遺産はラグジュリーに深い意味づけをもたらす?

先週、次の記事をアップしました。実は、これはミラノの大学でデザインや建築の修士に通う各国の学生を相手に、ラグジュリーについてレクチャーするために準備したのです。

この手の話が今後増えていくことを前提に、英語(イタリア語の需要がどれだけあるか?も知りたいところです)に加えて日本語も今後のために用意したのでした。

この手というのは、1) 意味のイノベーション 2) ソーシャルイノベーション 3) ラグジュリーの意味のイノベーション を統合した類という意味です。ラグジュリーはソーシャルイノベーションであり、ビジネスとして実験の場である、というのが趣旨です。

修士コースのなかのワークショップとして「(顧客のための)ラグジュリーな家を設計する」のが課題で、世界のどこに設計するか?までを含めて学生が決めていきます。そのワークショップに合わせ、ぼくは上記のレクチャーを行い、その数日後に学生たちがグループで話し合ったコンセプト発表にコメントを加え、その後のフローに送り出すのが役割でした。

このワークショップで感じたことを書いておきます。

まず、留学生がラグジュリーに抱くイメージは、どちらかというと旧型のラグジュアリーの意味に近い場合が多いのではとの印象をもちました。それも数日から1週間くらいのホテル滞在をベースにしたイメージがあり、3か月や半年をも想定しているように思えない。つまり「住む」ことを起点にしていないのです。瞬間的な驚きある経験に目が行きすぎているのですね。

ただ、『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』で書いたように、ローカル文化に基づいた新しいラグジュリーの潮流は先進国か新興国を問わず、全般にある現象です。しかしながら、先進国における旧型は「若い世代においては過ぎ去る存在になりつつある」のに対して、新興国においては、「今、まさに盛り上がっている」との時差があり、新しいラグジュリーを希求する層がまだ薄い可能性はあります。

「あなたにとってのラグジュリーは?」と質問した場合、少なくても欧州の若い世代は中東・アジア・南米の同世代と比較して、より新しい意味を指し示す言葉やメタファーを提示してくるでしょう。

しかし「新しいラグジュリーの意味は君が考えていいのだよ」と言えば、留学生も、「そういう道があったのか!」との反応は示します。単に、ラグジュリーの概念の扱いを知らずに旧型に留まっていた可能性があります。

そこでポイントは、旧型から新型を単に対立構造として見せるのではなく、旧を新へつなぐロジックの構築の仕方を教授することにありそうだ、と思いました。大学でラグジュアリーマネジメントを専門的に教えているコースで、この繋ぎをどう教えているか、あるいは教えていないか、そこも確認していこうと思います。

二つ目です。上記のような「世界のどこかに場所を設定する」との課題を出すと、ナショナルジオグラフィックで紹介されるような、自然豊かなあまり人の行かない場所を選んできます。というか、クリエティブな人たちの間では人気の場所です。

つまり、日常生活はどこかの人混みの多い大都会に住んでいて、そこから逃避して生活する場所として、上記のようなところをラグジュリーの表現としてかなりステレオタイプ的にイメージしているのです。

ぼくは「都会ではない、人が密集していないところに住んでいる人はどこに行くのか?」と質問したのですが、ラグジュリーは都市の住人の専売特許であるとの先入観から離れるようにアドバイスする必要はありそうです。

自然環境の良いところを選択すること自体はいいのですが、往々にして、ラグジュリーが深い意味をもつための文化要素が見逃される傾向にあります。そのときに考えるべきヒントは、無形文化遺産にあるのではないかと思います。ここには民俗や工芸などが思い付きやすいですが、「ローカルにある自然との付き合い方に関するナレッジ」も含まれるのです。

このように、さらに新しいラグジュリーを考えるロジックを深めていきます。

写真©Ken Anzai

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