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サファイアの吟遊詩人

「あなたは私に寄り添い、私はあなたに寄り添うためにともに来ました。
遠い彼方、蒼く輝くサファイアの星団から、はるばる千年の時空を超えて、惹かれあう波動が放たれていた。背中を付けて寝ていると暖かな温もりで、一体化しそうです。向こうの世界は、心の中がつつ抜けで、考えてることがすべてが通じ合うようでした。似たような精霊どうし、争いや嫌悪感なく、平穏な光に満ちている。しかし人間世界では、心の眼でみないと本当に大切な真理は見えないのです。ここに馴染めない不完全な二人は、酷く傷つけあいながらも、かけがえのない関係になり、孤独という闇から逃れました。
たとえ世界中が敵に回っても、二人だけは味方の同士、そのような絆を育むように生まれてきて、宿命の交差点で出会ったのでした。」

真冬の静寂に、中世ヨーロッパの吟遊詩人(トゥルバドゥール)風情を装い、詩情を即興してみましたが、お恥ずかしい限り。ところで、男性にとって女性へ贈るジュエリーを選ぶ行為は、思い切りの良さが必要ですね。

若かりし頃にロンドン出張、初めてダイヤモンドのネックレスを意を決して買いました。先輩と三人の出張の帰路に、ヒースロー空港の入国検査場で、ビービーと感知器に反応して呼び止められたのです。身体検査をされバックの中身をひっくり返いしたあげく、小さなダイヤのせいと分かりびっくり。
その慌てる姿を見て待ってくれていた先輩方から大いに笑われて、しばらく飲み会で酒の肴にいじられたことを思い起こします。そんな逸話のネックレスなのに、繊細な妻は磨かれたバイザヤードが肌にあたると痛いと言って、数年前ついに海外支援のNPO法人に寄付しました。

NY長期出張で不在中、好き勝手に遊び惚けた謝意からティファニーで探したサファイアのネックレス。僕の誕生石なので、昔から少し気になっていた。こちらも、直に肌に触れると痛いといって、秋冬の外食でセーターの上にかけてくれるぐらいです。多分に男の方が、子供じみたロマンチストで、女はあっさり現実的な生き物なんだと感じてしまう。このままではもったいない、ふだんは居間のサイド・ボードの上にある子猫(銀色)の置物に掛けて、ひっそり飾っています。

旧約聖書ではモーゼの十戒を刻んだ石版は「サファイア」「ラピスラズリ」の青い鉱石だったと伝承されています。太古のペルシャでは、大地の宝石として崇拝され、サファイアは地球を支える台座のかけらで、空や海の青さの源泉は、サファイアの輝きを映しているからと信じられていたとのこと。
古代ビルマのラオツン寺院には、黄金の髪とサファイアブルーの瞳をもった女神ツン・キャン・クセが祀られれていました。ある時寺院を盗賊が襲い、年老いた高僧のムンハを蹴飛ばしましたが、ムンハの飼っていたシャム猫のシンが果敢に飛び掛かり盗賊一味を追い払ったそうです。女神はシンの勇気を讃え、サファイア・ブルーの美しい眼を与えたという伝説があります。
更に、モンゴル帝国の皇帝フビライ・ハンは、マルコ・ポーロが献上したサファイアに魅了され彼を厚遇したなど、まつわる言い伝えは意味深いです。

哲学者や聖人の宝石と称され、すべての真理を見透かす凛としたブルーは、「誠実」「慈愛」「徳望」の象徴。邪気を払いのけ羨望や危害から見守り、心の迷いを鎮めて浄化するといわれています。




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