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多品種 x 大量生産のビジネス的な価値を改めて考えてみた


少し前にロジ部の内田さんから、展示会のレポートの中で、「当社は多品種 x 大量生産の方向に向かっていくべきだ」というお話がありました。

直近の資金調達活動において当社の強みについて思考を整理する中で「多品種 x 大量生産」は当社のビジネス上の強みとしてかなり大きな意味を持つという結論に至りました。

自分自身の思考の整理となぜ「多品種 x 大量生産」が大きな意味を持つのかという点についてみなさんにシェアすることを目的として、文章にまとめたいと思います。

「多品種 x 大量生産」とは

まず、「多品種 x 大量生産」とは何かについてご説明します。
読んで字のごとくなのですが、要するにたくさんの種類の品目を大量に作れるということを意味しています。
たくさんの種類=1000種類以上、大量=数万個/日以上をイメージしてもらえれば良いかと思います。

これまでの食品産業はどのような状態だったか

これまでの食品系のブランドは多品種 x 少量生産もしくは小品種 x 大量生産のどちらかにプレイヤーが偏っていました。
多品種 x 少量生産というのはたとえば、普通の飲食店がそうです。
調理人が数十種類〜数百種類のメニューを記憶しており、お客様の要望に応じて多様なメニューの調理を行うことができます。

一方で、調理人の手作業のスピード・ボリュームには限りがあるため、一回の調理で作れるのは数人前から数十人前という規模です。
小品種 x 大量生産は一般的な冷凍食品のメーカーが該当します。
たとえば、冷凍の唐揚げ専用の生産ラインを作ると短時間に数万食〜数十万食という単位で大量製造が可能です。

一方で、唐揚げ専用に最適化された製造ラインは他の品目の製造には使うことができません。やれても味付けを変えるくらいですから、製造できる品目数は極めて少数になります。

このような旧来の状況に対して、これまでの提供実績1300メニュー、週次11メニューかつ現時点で1日の食数ベースで5万食近い量を製造できていることがつくりおき.jpの一つの特徴です。

なぜ「多品種 x 大量生産」がビジネス上の強みになるのか

「多品種 x 大量生産」を両立できることはビジネス上かなり大きなメリットがあります。

代表的なメリットは以下の2点であると考えています。

①財務的メリットを両取りできる
多品種であることと大量生産できることはそれぞれ別の財務上のメリットがあります。

まず、多品種であることはLTVの大きさに繋がります。
多品種であることにより飽きずに長い期間利用いただけると同時に、品目同士の組み合わせ販売により商品自体の希少性を向上させ商品単価も上げることができます。

そのことにより一般に多品種商品のLTV > 小品種商品のLTVとなります。また、そのことは限界利益率(粗利率)の高さにも繋がります。
一般的な飲食店の平均的な粗利率は38%であるのに対して、食品メーカーの平均粗利率は25%であることがその証左だと思います。
要はただのちくわを大量に作るよりも、ちくわに味付けをしたり揚げ物にしたり別の惣菜と組み合わせた方が単価も継続期間も伸びるよね、ということです。

一方で、大量生産にもメリットがあります。
言わずもがなかと思いますが、規模の経済・密度の経済などたくさんのお客様に向けてたくさんの商品を作ることによるメリットを享受できます。
ですので、食品メーカーは一般に飲食店よりも食材原価・人件費率が低めです。(例:人件費率の平均は食品メーカー10%以下に対して飲食店20~30%)

上記のように、これまでの食品系のプレイヤーはLTVと限界利益率(粗利率)のトレードオフ関係の中でどちらかを選択してきたわけです。
「多品種 x 大量生産」を実現することで、このトレードオフ関係をトレードオンにする、すなわち両取りすることができます。

現につくりおき.jpのLTVはかなり高いですが、原価についてはほぼメーカー並みの水準に近づきつつあります。
飲食店並みに付加価値が高い商品をメーカー並みの原価で作ることができるという点が「多品種 x 大量生産」のビジネス的メリットの一つです。

②シンプルに難易度が高く、模倣が難しい
もう一つは「多品種 x 大量生産」を実現すると模倣困難性が高くなるということです。

「多品種 x 大量生産」はビジネス的メリットが大きいにも関わらず、これまで参入するプレイヤーはあまり多くありませんでした。
この理由の一つは、みなさんご存知の通り、継続的に多品種メニューを沢山作り続けることの難易度が高く大変だからです。

つくりおき.jpにおける「多品種 x 大量生産」の実現には、現場を理解したメニュー開発、満足度の安定、食材の安定調達、配送の安定、製造の品質・衛生面での安定、柔軟性の高い製造ラインの構築、人の人数・モチベーションの安定など実に多様な要素が必要です。

これらをアウフヘーベンしつつ、一つのプロセスに繋げていくことは並大抵の難易度ではないということは、日々みなさんも業務の中で感じていらっしゃることと思います。

その分、「多品種 x 大量生産」を実現しきれば模倣困難な状態を作ることができます。作るのが大変な分真似るのも大変、ということです。

補足:現状のプレイヤー・市場状況について

補足ですが、現在「多品種 or 大量生産」のトレードオフを乗り越えるべく様々なプレイヤーが市場に参入しつつあります。

その代表例がnoshさんです。詳細な製造ラインを知っているわけではないためあくまで推測になりますが、noshさんは冷凍により保存がきき製造ラインの変更時間を作る、お弁当型で同一惣菜を他の惣菜と組み合わせることにより別品目として打ち出すなどの手法により「多品種 x 大量生産」を実現しています。また、別のアプローチで「多品種 or 大量生産」ののトレードオフを乗り越えようとしているサービスもあります。

代表例の一つがベースフードさんです。
「多品種 or 大量生産」はトレードオフ関係があるということを上で書きましたが、「ブランドがしっかりと確立された主食」に関しては例外である可能性があります。

ブランドが確立されていれば高単価が許容され、主食であれば単一品目であっても長い期間利用いただける可能性があるためです。

ベースフードさんは当社とは異なるアプローチですが、「多品種 or 大量生産」のトレードオフ関係に挑戦している企業であると認識しています。
いずれにしてもこれまでの食品産業が抱えていた「多品種 or 大量生産」のトレードオフ関係を何らかの形で乗り越えようという流れが現在の食品系スタートアップにおけるトレンドだと言えます。

以上、「多品種 x 大量生産」のビジネス的な価値についての考察でした。
基本的に「多品種 x 大量生産」路線は正しいと思いますので、今後も是非追及していきましょう。

また、ここに「高品質」=美味しさ、特別感、ブランド力が加わるとさらにお客様の満足度が上がり、強みが強化されますので、今後は高品質の強化にもますます取り組んでいければと思います。

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