"PEALOUT"の事。
バンド自体は忘れられてはいないとは思うんですけどね。こういうタイトルにしちゃったので、ご勘弁を。
"PEALOUT"は、近藤智洋、日本古参のメロディック・パンク・バンド、"BEYONDS"のメンバーだった岡崎善郎、高橋浩司からなる3ピース・バンドでした。結成は1994年。きっかけは、「ロッキング・オン」誌のメンバー募集広告で近藤&岡崎が出会い、高橋が加わる形で結成。ちなみに内容は「当方ティーンエイジ・ファンクラブ、PJハーヴィー等やりたし」だったとか。力塾傘下のレーベル「GOD'S POP」のオムニバス・アルバム「Guitar Lightnin' Horror Smilin'」にPRE-SCHOOLやペンギンノイズなどと共に参加後、同レーベルからの7”シングル(後にCD化)「LET ME SINK IN THE DEEP REDDISH SKY」で本格デビューを果たします。
1996年にインディー・レーベル「MIDI CREATIVE」からデビュー・アルバム「HERE, NOT SOMEWHERER」をリリース、盛んなライヴ・サーキット、来日したUKバンド、Northern UproarやMansunなどのオープニング・アクトを経て、翌年にセカンド・アルバム「one」をリリースしています。1998年にはメジャーのポニーキャニオンへ移籍して2枚のアルバムをリリース。インディ時代から続く、抑揚されたノイズギターと英語詞で歌われる繊細なメロディのセンチメンタルなギター・ロックは、明らかに英国音楽の影響下にあるものでしたが、一方、激しいライヴで圧倒する一面もありました。
2000年からは、これまたメジャーのビクター/Invitationに移籍、この頃からサウンドを一気に進化させ、同レーベルからのデビュー・シングル「爆裂世界~世界に追い越されても~」のタイトルに現れている様に、激しいノイズギターとピアノがドライヴする、研ぎ澄まされたテンションの高いサウンド、日本語詞を叫ぶダイナミックでパワフルなヴォーカルには驚かされました。しかし、極端な方向に向かっているバンドの姿勢には共感でき、サウンドの変化にも充分に対応...というか、聴けば聴く程に好きになるスルメ・サウンドでした。更に進化を続ける彼らでしたが、ビクターから3枚のアルバムをリリースした後に、レーベルと事務所を失った様で、2004年には自主レーベルのPEAL OF YOUTHからアルバム「ROLLS NEVER END」をリリース。この作品はバンドのテンションがマックスに達したかのような激しいもので、これでやり尽くした感があったのか、今作をリリースした翌年に解散を表明し、5回目の出演となる2005年のFUJI ROCK FESTIVALを最後に解散してしまいました...。
バンド解散後、近藤はソロ名義、"GHEEE"、"my funny hitchhiker"で活動、岡崎は、かつて在籍した”BEYONDS"を再結成するも脱退。高橋は、"REVERSLOW"、"HARISS"といったバンドに参加しています。解散ツアー時の岡崎の「カッコよかったんだよ。11年間、ずっとカッコよかったんだよ。」という言葉通り、常にカッコいい大好きなバンドでした。
ギター・ロック期もヘヴィ・ロック期も大好きだったんですが、個人的に思い入れがあるのが、インディとメジャーの狭間の1997年にリリースしたマキシ・シングル「APRIL PASSENGER」ですね。詳しい事情は不明ですが、今作だけはバップ・レコードからリリースされています。CMJのミュージックセミナーCDに表題曲が収録されているみたいなので、その関係かな?インディとメジャーの狭間で揺れ動く彼らの心情を表したかの様な、切なくも温かいメロディと繊細なギター・サウンドが冴え渡る名盤です。4曲入りのマキシで、ラストにThe Waterboys"の「FISHERMAN'S BLUES」のちょっとアップテンポなカヴァーが収録されているのも嬉しいサプライズでした。
2018年、近藤と、ヤマジカズヒデ(DIP)、田渕ひさ子(ナンバーガール)などが参加したライヴ・イベント「JUST FOR ONE DAY」で、影響を受けた曲として「APRIL PASSENGER」をヤマジカズヒデ氏が歌ったそうで、非常に嬉しかったですね。今さら聴けないのが残念ですが...。
今回は、"April"なのに何故か冬の始まりに聴きたくなる、シングル表題曲である超名曲を。
"April Passenger" / PEALOUT