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ウクライナ問題に寄せて(その8):二元論を超える4つのステップ

■人類共通の課題:「二元論の超克」

私の本来の専門である「夢学」にてらしてみても、個人の人生にしろ、一国の運命にしろ、弁証法的に事態が進展することを、前回述べた。弁証法的なプロセスが起きない限り、どんな問題も解決しない。

夢はあくまで個人的な営みであり、もちろんその人の無意識が作り出している現象である。しかし、ユングによれば、個人は「集合無意識」という共通の場で人類全体とつながっているという。
そこで、私たち夢学の研究グループは、ユングの提唱した「集合無意識」の存在を立証すべく、「夢の公共性実験」を積み重ねてきた。複数の人がある一定の期間にみた夢を持ち寄り、そこから共通項を抽出して、その中に特定のテーマに関する普遍的な答えがあるかどうか分析してみる、という実験である。
何度この実験を繰り返しても、共通に導き出される結論がある。それは、夢という個人的な営みの中に、非常に公共性の高い要素が必ず一定量含まれている、ということだ。
たとえば、感染症の世界的な蔓延といった極めて公共性の高い問題に対して、その解決策を複数の人の夢から導き出そうと思えばできる、ということである。実際に私たちのグループはその実験をすでに二度実施して、万人に共通するような非常に公共性の高い結論を導き出している。
※参照:「コロナ禍を夢で読み解く実験」(有料記事)


さらに言うと、どのようなテーマでどのような夢の実験をしても、導き出される解決策には、共通する点があるのだ。
この共通点とはすなわち、どのような人間がどのような問題に取り組むにあたっても、必ず用いるべき共通の解決策がある、ということだ。
それをズバリ言うなら、「二元論を超える」ということだ。言い換えれば、弁証法ということである。
ここでも、「あらゆる人間が一生の間に何度も経験する普遍的な自己成長のプロセス」とは、弁証法的プロセスであることが証明されたのである。
もちろん一国の運命も、その国を導くリーダーに弁証法的な意識変革のプロセス(二元論を超えるプロセス)が起きるか起きないかで決まってくる、と言っても過言ではない。

■あらゆる二元論を超えることで進化は起きる

あらゆる二元論を克服することによって、人は人間の幅を広げ、成長する。
自己と他者、内面と外面、男と女、昼と夜、善と悪、神と悪魔、天国と地獄、公と私、氏と育ち、心と体、右脳と左脳、科学と非科学、因果論と目的論、見えるものと見えないもの、理想と現実、私とあなた・・・無作為に列挙したが、厳密に言うと、これらの二元論には、ある程度のカテゴリー分けがあり、取り組みには優先順位があるだろう。

これら「AかBか」という二元論を克服するとは、AでもBでもないが、同時にAでもありBでもあるという性質を持ってもいる「何か」を創出するということだ。つまり、弁証法である。これを「創発」と呼ぶ。進化には必ずこの「創発」が伴う。
二元性・対極性を統合することは、すべての人間に課せられた成長課題だ。この課題を免除される人間はいない。

ある二元論を克服できないでいると、そこの部分にある種の「症状」ないし「病理」が現れる。
たとえば、自分の「内なる女性性=アニマ」を統合できていない男性は、男としてみなされても、「成熟した大人の男」としてはみなされない。皮肉な話に聞こえるかもしれないが、自分の中の「女性性」に目覚めない限り、男性は真の意味で「男らしく」なれないのだ。そういう男性の意識は偏狭で凝り固まっていて、女性を全人格的に見ることができない。それはまさに、自分の一部を認めていないということに等しい。そういう男性は、女性を一種の「道具」とみなし、「道具の使い勝手」という観点で女性を評価する。その意識状態が嵩じると、ある種の「病理」にまで発展しかねない。それで道を踏み外す男性は後を絶たない。もったいない人生だ。

■二元論を超える4つのステップ

上に列挙した二元論を克服するには、それぞれ個別の取り組みが必要だが、克服のプロセスには共通の段階がある。
まずは、二元性あるいは対極性が未分化な混沌とした状態から始まるだろう。その状態にはいずれ限界が生じる。そこから次のような統合のプロセスが始まる。
ステップ1:二元性・対極性の一方だけを見る。(たとえば、自分の中の男性性だけを見て、女性性を見ない)
ステップ2:両方を見て一方を選ぶ(この段階で「シーソーゲーム」を繰り返す場合もある)。
ステップ3:両方を見て両方を同時に選ぶ(この段階で「シーソーゲーム」は終了する)。
ステップ4:両方を1つの全体へと統合する。

この4つの段階はどれもはしょれない。
また、ステップ1~3は不安定な状態であることもわかるだろう。これらの段階でとどまったままの状態は、その段階特有の「症状」や「病理」を引き起こしかねない。先に挙げた、内なる女性性を統合できていない男性は、ステップ1~2にとどまっていることを表す。

さてここで、一国のリーダーの意識変革の4つのステップを考えてみよう。
ステップ1:自国と、敵対する相手国のうち、一方(自国)だけを見る。
ステップ2:両国の都合を見たうえで、自国の都合を選ぶ。
ステップ3:両国の都合を見て、両方を同時に実現できる道を選ぶ。
ステップ4:両方を1つの全体へと統合する(一方がもう一方に併合されることを意味しない)。

ステップ3までは、何となく想像がつくかもしれない。
しかし、世界各国のリーダーをぐるりと見渡してみても、ステップ3まで到達している人がいるかどうか・・・?
さらに、ステップ4までいくと、ある意味世界観がまるで違ってくることが何となくわかるだろう。一方の国がもう一方に併合されるのではないかたちで、両国を1つの全体へと統合するというのである。今回のロシアによるウクライナ侵攻の問題で言えば、ウクライナをロシアに併合するのではなく、ロシアでもウクライナでもない、新しい第三の国家体制を創出することを意味するのかもしれないのだ。
それはある意味、地球規模の東西の統合が起きるということかもしれない。
これが実現できるとしても、この先何十年・何百年もかかるのではないだろうか。
つまり、この解決策は、ロシア-ウクライナ問題だけの解決ではなく、世界全体の平和の実現に向けたプロセスになるだろう。これこそが普遍的な解決策である。
個人の問題解決も、国内問題の解決も、二国間の地域紛争の解決も、世界恒久平和の実現も、一連のプロセスなのだ。

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