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人生を真の成功へ導く4大法則(夢の学び32)

■人を健康にする意欲と不健康にする意欲

誰もが、自分の人生を「成功」に導きたいと思っているはずです。
では、人生の成功とは何でしょう。
お金持ちになること?
誰かの愛を勝ち取ること?
名声を得ること?
でも、ちょっと待ってください。
もし仮に、あなたにとっての人生の成功が、お金持ちになることだったとしても、悪事を働いてお金を儲けるなら、それはいずれ報いを受け、せっかく稼いだものをすべて失うだけでなく、社会的信頼も失うことになります。やはり何らかの社会貢献をして、多くの人の共感を得ない限り、お金を得ることはできません。
もし仮に、あなたにとっての人生の成功が、誰かの愛を勝ち取ることだったとしても、あなた自身が相手を精一杯愛さない限り、その人の愛を勝ち取ることはできないでしょう。いったん勝ち取ったように見えても、いずれ失うことになります。
もし仮に、あなたにとっての人生の成功が、社会的な名声を得ることだったとしても、その名声に内実が伴わない限り、いずれ凋落することになります。
結局のところ、人生の成功とは、精一杯人を愛し、しっかり内実が伴うかたちで社会貢献をし、多くの人の共感を得るところからでないと、もたらされないことになります。

こんな心理学的調査があります。
米ロチェスター大学の心理学教授リチャード・ライアンとその研究チームが、年齢も社会的・経済的立場も異なる数百人の学生および社会人を対象に行った調査です。
テーマは「生きる意欲(人生の目標)と精神的健康の関係」ということです。
この研究チームはまず、人間の生きる意欲(人生目標)を次の6種類に分類しました。
<外発的意欲(目標)>
 ○富を築くこと
 ○名声を得ること
 ○人をひきつける外面的魅力(美貌)を持つこと
<内発的意欲(目標)>
 ○満足のいく個人的関係(愛し、愛される人間関係)を持つこと
 ○個人として成長すること
 ○社会に貢献すること
これら6種類の意欲(目標)と精神的健康の関係を調べてみると、次のような結果が出ました。
○3つの内発的意欲にくらべ、3つの外発的意欲のいずれかが突出して高いとき、精神的健康は低かった。たとえば、物質的成功に対する意欲が突出していることは、自己愛、不安、抑欝、社会的役割遂行の低さと結びついていた。
○他の外発的意欲も、心理的機能性の低さと関連していた。
○内発的意欲の高さはどれも、精神的健康とプラスに関連していた。たとえば、社会貢献に意欲的な人は、バイタリティにあふれ、自尊感情も高かった。
○外発的目標を達成する可能性が高いと思っている人でさえ、その人の精神的健康は低かった。
(参考:エドワード・L. デシ/リチャード・フラスト著「人を伸ばす力」新曜社)

この調査結果からも、他者と「愛し、愛される」人間関係を築くこと、個人として成長すること、社会に貢献すること、この3つの目標を掲げない限り、人は健康に生きることはできないことは明らかでしょう。
3つの外発的意欲を抱いてはいけない、ということではありません。ただそれらを強く持ちすぎることは、精神的にマイナスになる場合がある、ということです。

■成長なくして成功なし

最初に示した通り、精一杯人を愛すること、内実が伴うかたちで社会貢献することで、多くの人の共感を得ることは、いずれも人間的な成長を前提として成立することです。
つまり、端的に言うなら「成長なくして成功なし」ということです。
これを、「成功の第一法則」としておきます。
では、人間的に成長するとはどういうことでしょう。
一言で言うなら、成長とは「無意識の意識化」です。
これは、ピアジェ、マズロー、エリクソン、クレア・グレイヴス、そしてケン・ウィルバーに至るまで、多くの発達論者たちが異口同音に言っていることでもあります。
子どもの成長・発達を見てみれば明らかですが、生まれたばかりの赤ん坊は、まだ明確な自己意識を持たず、ほとんど無意識的で、自己と世界とが未分化な状態です。そこから徐々に「自我」が芽生え、自己と世界→心と身体→自己と他者、という具合いに分化が進み、個性に目覚め、やがて自分独自のアイデンティティを獲得していきます。
これらはすべて「無意識の意識化」のプロセスです。
したがって、まだ意識化できていない無意識の領域が大きい状態は、人間的に「未熟な」状態ということです。この状態では、「生きる意欲(人生の目標)」も未熟であり、場合によっては、自分の真の欲求に気づいていない(真の欲求に無意識的な)可能性もあります。
この状態で何かの目標を抱いて、それに取り組むと、意識している目標(表面上の目標)ではなく、無意識の中に潜んでいる「隠れた欲求や意図」の方が現実化してしまい、その結果を見て、「こんなはずじゃなかった!」と本人が愕然とする、ということが起こってきます。
たとえば、未熟な愛情表現しかできない人間が、本当に愛している人に自分の愛が伝わらず、結局その人からの愛も失ってしまう、という事情と似ています。

いちばんわかりやすい例を出しましょう。
カルロス・ゴーンという人物を思い出してください。
あれだけの巨大企業の落ち込んだ業績をV字回復させる、という偉業を成し遂げた人物が、いったんは大成功を掌中に収めたかに見えて、結局どん底まで転落してしまったのは、「その企業のために真に貢献したいのではなく、単にそれを私物化し、私腹を肥やすことが隠れた意図だった」という事情によります。

ここまでをまとめましょう。
○成功の第一法則「成長なくして成功なし」
○成功の第二法則「成長とは、無意識の意識化である」
そこで、成功の第三法則です。「無意識の中に意識とは異なる隠れた欲求や意図があるなら、無意識の中にあるものの方が現実化する」
この場合、現実化することになる無意識の中身とは、カルロス・ゴーンの例のように、本人にとっても没落であり、周りに多大な損害や迷惑をもたらす羽目にもなります。つまり、先に述べた「多くの人の共感を呼ぶ内実を伴った社会貢献」とは真逆の結果、ということです。結局、カルロス・ゴーンという人物は、身勝手でエゴイスティックで悪知恵に長けた「餓鬼」だった、ということです。この例からは、頭の良さと人間的な成熟度が必ずしも比例しない、ということも言えます。
このように、無意識の意図が現実化すると、周りが迷惑を被る場合だけでなく、上記の心理学的調査のように、本人が精神的健康を損なう、という場合もあることに注意してください。
つまり、人生を真の成功へと導くためにも、逆に失敗を避ける意味合いからも、二重の意味において「無意識の意識化」が必要不可欠ということです。

■成長を促す4つの「道」

では、どのように自分の無意識を意識化することで成長したらよいのでしょうか。
ケン・ウィルバーは、これに関して次の4つの「道」を提案しています。これら4つの道は、どれかひとつを選べばいいのではなく、4つ同時に実践することが重要です。
○クリーニングアップの道
これは、直接的に自分の無意識を見つめ、それを意識へと転換することによって、いわば「心の浄化」を果たす道、ということです。無意識の中に抑圧されているものを意識へと解放する、と言ってもいいでしょう。
○グローイングアップの道
これは、端的に発達心理学的な意味での心(自己あるいは意識)の成長・発達ということです。ただし、この成長・発達のプロセスや構造を、私たちは普段意識して用いていません。そこでウィルバーはこれを「隠れた文法」「隠れた地図」などと呼んでいます。これを「開示された文法」「開示された地図」とする(すなわち、それについてしっかり学ぶ)ことが重要となります。
○ウェイキングアップの道
これは「覚醒への道」ということですが、世界的な宗教や神秘主義などの伝統では、瞑想の修行方法がかなり体系化されていて、意識の覚醒に役立つでしょう。ただし注意が必要なのは、瞑想の修行だけでは「無意識の意識化」には必ずしもならない、ということです。他の「道」と併用する必要があります。
○ショーイングアップの道
意識の成長・発達のプロセスだけが「隠れた文法」「隠れた地図」というわけではありません。人が健康で幸せに生きるために開示される必要のある地図は(たとえば脳や肉体に関する医学的・生理学的地図、政治・経済・社会制度などの地図、文化的な地図、霊的な領域の地図など)まだまだ沢山あります。それらを、個々ばらばらなかたちではなく、大きな全体的な地図(ウィルバーはこれを「ビッグ・ピクチャー」と呼んでいます)として見ていく必要があります。
(参考:ケン・ウィルバー著「インテグラル理論を体感する」コスモスライブラリー)

総じて言えば、この「ビッグ・ピクチャーの開示」こそ、人を成長させるのに必要なことなのです。これを、成功の第四法則としておきましょう。
これら4つの道に関しては、別の場所ですでに書いたりしゃべったりしているものもありますが、ここでもいずれ詳しく取り上げるつもりです。

■ドリームワークは無意識の意識化に役立つ

最後に、これら4つの道に共通して汎用的に使える方法論があるので、それをひとつだけご紹介しておきましょう。
明確に意識化するために、自分の無意識を見つめると言っても、たとえば自己流で瞑想をしても、瞑想中に湧いてくる様々な「想念」のどれが無意識でどれが意識の領域のものなのか、普通は見分けがつきません(見分けがつくなら、それはすでに「意識」ということです)。「瞑想は、かえってエゴを強化してしまう」と言う専門家もいるほどです。つまり、意識に昇ってくるものだけを受け取り、それに固着してしまう、ということでしょう。
もっとも確実に、もっとも安全に、誰でも簡単にできる「無意識の意識化」は「ドリームワーク」(夢の意味の読み解き)です。夢はもちろん無意識の産物です。無意識の中身が「象徴」というかたちをとって、意識に送り込まれてくるものです。その意味を読み解くなら、自分が無意識の中で何を考えているかが直接的にわかるわけです。
私がドリームワークを、自己成長や自己実現のもっとも信頼に足る方法論として推薦している理由はそこにあります。
ただし、ドリームワークにも様々なやり方があり、せっかくの無意識からのメッセージを、独断や偏見、エゴや表層意識、思い込みや思い癖の観点から、意味をゆがめてしまうようなものもあるので、ご注意ください。このことは、ドリームワークに限らず、様々な心理療法やカウンセリング技法にも言えます。総じて言うなら、極端なポジティブ・シンキングを強要したり、ある特定の理論や技法を「唯一の正解」として押しつけてくるようなものは要注意です。
ドリームワークに関しては、論より証拠、いちど体験していただければ一発でわかります。

まとめます。
○「内発的意欲」(良好な人間関係の構築、個人としての成長、社会貢献)は精神的健康を増進し、「外発的意欲」(富を築くこと、名声を得ること、外面的魅力を持つこと)は、精神的不健康を招く場合がある。
○成功の第一法則「成長なくして成功なし」
○成功の第二法則「成長とは無意識の意識化である」
○成功の第三法則「無意識の中に意識とは異なる隠れた欲求や意図があるなら、無意識の中にあるものの方が現実化する」
○成功の第四法則「人を成長させるには、ビッグ・ピクチャーの開示が必要である」
○「瞑想」という方法論単独では、気をつけないとかえって成長を妨げる場合さえある。
○「ドリームワーク」(夢の意味の読み解き)は、無意識の意識化に役立つ汎用的な方法論である。

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アンソニー  K
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