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「面白い」という言葉の価値が低下している?

最近、どうにも「面白い」という言葉の価値が低下しているように感じます。

企画書や仕様書の話をしている時に「面白いと思うんだけど」といった発言をすると、周囲の目が冷たくなっていたり、やれやれと呆れたような雰囲気が。

それは被害妄想、気のせいだとしても…使いづらいという思いは日に日に強まってきます。


記事を書くに至った経緯

直接的なきっかけとなったのは、ゲームディレクターのヨコオタロウさんの
投稿でした。

冒頭に述べたように「面白い」という言葉に対して信頼性が揺らいでいたので、ヨコオタロウさんの投稿は「やっぱり…?」と少しだけ背中を押すことになりました。

どうして価値が下がってしまったんだろう?

「面白い」という言葉の価値が下がった理由。
それは、面白いという言葉が主観的かつ漠然としたワードだからではないか…と想像します。

これは面白いと言った時、人によっては面白くないこともあります。
絶対的な指標たり得ない。

また、なんとなく良い評価に感じられるものの、具体的に何を評価しているのかわからない曖昧なワードです。

だから「面白い」という発言をしたときに周りがしら~っとなるのは「好みの話をしている」「曖昧なことを言っている」と思われるからではないでしょうか。

※似たワードとして「自由度」がありますが、これはまたいつか考えます(いつもそう書いている気がします)

「面白い」ってなんだっけ

ゲームというメディアはとにかく「面白い」という評価軸が用いられます。

面白いものは良いもの、面白くないものは悪いもの。
面白いアイデアは良いアイデア、面白くないアイデアは悪いアイデア。

ゲームを評価するにせよ、開発でアイデアを評価するにせよ「面白い」という言葉は頻繁に用いられます。

ところが、誰かに「なにが面白いの?」と問われると意外と言葉に窮するのではないでしょうか。

「面白いから面白いんだよ」と答えてもいいですが、それではお給料はもらえません。言語化して、周囲の共感を得る状況に持っていかなければなりません。合意のもと、作業を進めてもらうので。

友人にゲームを紹介するにしても「とにかく面白いから」では心を動かすことができない…かもしれません。

すると「面白いってなんだっけ」という言葉の解体・整理が始まります。

「面白い」という言葉の解体・整理

仮に「このゲームはボス戦が面白いんだよね」という発言があったなら、いったいどういう面白さなのでしょうか。

考えられるのは「手に汗握る戦闘が面白い」「武器を使いこなすのが面白い」「魔法が派手で面白い」「地形を有効活用するのが面白い」「アイテムといったリソース管理が面白い」といったところでしょうか。

前述した内容は「面白い」という言葉を排除しても成り立ちます。

ボス戦が面白いと感じるのは…
・手に汗握る戦闘
・武器を使いこなす
・魔法が派手
・地形の有効活用
・リソース管理
といった遊びが詰まっているから。

今度は整理してみると…
・手に汗握る戦闘(プレイヤースキルを試す難易度)
・武器を使いこなす(プレイヤーごとの操作体験)
・魔法が派手(気持ちの良いリアクション)
・地形の有効活用(環境の変化、優位な環境の構築)
・リソース管理(マネジメント)
といった遊びの種類があることがわかります。

「ボス戦が面白いんだよね」という言葉の裏には「プレイヤースキルを試す難易度で、武器を使いこなして自分なりに攻略できて、アイテムや地形をうまく使えば窮地を脱するチャンスもあって、さらにエフェクトが派手で爽快感がある…だから面白いんだよね」という意図が隠れています。

それで「面白い」ってなんだろう

正しい答えは見つからない、わからないという前提があった上で。
先ほどまでに書いた内容をまとめるなら。

「面白い」とは「人間の脳を刺激し、様々な感情を引き出す仕組みたちのこと」と言える…かもしれません。

短く言えば「面白い=仕組みがある」となります。

その仕組みが巧みであったり、一瞬の間に様々な感情を爆発的に引き出したり、1種類の感情ではあるけれど強烈で長く余韻のあるものだったりすれば「面白い!」という評価を引き出すことができる。

価値が低下した理由は…

このように解体・整理して思うのは「ゲームデザインの情報・書籍が増えてきて皆が知識を共有し始めたから」ではないかと思います。

皆がしっかり勉強するようになって、曖昧な表現を許さない風土ができつつあるのではないか。

「レベルデザイン」という言葉が毎回論争を巻き起こすように(最近は減ってきましたね)「面白い」という言葉もまた議論できるようになってきたのかもしれません。

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