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「お母さんお仕事やめないの?」

ある日、不登校になった小4の息子さんに「お仕事やめないの?」と言われたお母さんの話を聞いた。息子さんの下にはもう一人保育園に通っている娘さんもいて、これまでも時間に余裕がなく、精神的に張り詰めた状態だった。この先、仕事と子育てを両立できるのかどうか迷っていた時に、息子さんから「お仕事やめないの?」と言われたことに、かなりショックを受けていた。 

これは、不登校の子どもを持つ親にとっては「あるある」で、本当に悩ましい限りだ。家族で協力してなんとか乗り越えられるといいが、家庭によって優先することは様々で、思い通りにならない事も多い。「辞めるべき」「辞めるべきではない」などと単純に決められることではない。

では、もし仕事を辞める選択した時はどんなことが考えられるだろう。子どもが学校に通わないことで精神的に不安定になっている場合、母親がそばで支えることがうまくいく場合もある。私が親の会で知り合ったあるお母さんは、お子さんが小学校低学年で不登校になってから、仕事を辞めなければならなかった。でもしばらくすると、お子さんは気持ちも安定して、進級するタイミングで学校に戻れるようになった。そして、お母さんは以前とは違う職場で仕事を再開できた。

一方で、経済的な理由やご自身のキャリアのために辞めるのが難しい場合もあるだろう。そのような時は、仕事を続けながら、子どもをサポートする方法を見つけなければならない。親戚や友人、自治体のサービスなど、多くの人の手を借りて「やりくり」する必要があるのだ。私が中学校の教師だった時は、お子さんが不登校になっても、お母さん方は仕事を続けていた。それは子どもが自分で身のまわりの事ができて、緊急の場合にも連絡ができる年齢だからだと思う。これが、一人で留守番ができない年齢だとなかなか難しい。その他にも、職場の理解も不可欠になる。仕事の時間を調整したり、働くスタイルそのものを変えたりする必要がでてきたら、しっかりと対応してくれる職場であれば、仕事を続けられるだろう。

そもそも、母親だけが「仕事を辞めるかどうか」を選択しなければならない状況は好ましいとは言えない。父親はもちろん、職場や自治体の支援体制が整っているのが「当たり前」の社会であってほしい。まだまだ母親にかかる子育ての負担は大きすぎる。それに不登校は、2週間、6か月とその期間が決まっている訳ではないから、いつ終わるのかもどんなゴールが待っているのかもわからない。だから悩ましい。

 
それでも最近は、子どもに対するサポートは増えてきている。学校や教育委員会、医療機関あるいは福祉関係とつながって、利用できるサービスは受けながら親以外の人たちも関わる体制が作れたら、親の負担も少しは減るだろう。ただし、子どもが望まないことは無理にしないのが鉄則だ。
そして同じくらい大切なのが、母親自身のケアだ。同じような問題を抱える親たちと情報交換ができる場に参加して、経験者からのアドバイスや励ましを受けることがとても大事だと思う。母親の体調やメンタルが健康に保たれれば、子どもも安心して家で過ごすことができるからだ。

「お仕事やめないの?」と言われたお母さんは、実家の応援を頼み、職場にも事情を説明して、仕事を辞めずに働いているそうだ。

ただ、これで「一件落着」だとは思わない。同じ悩みを抱えている母親が全国に何万人といるからだ。

世の中の変化のスピードは加速している。当然学校のシステムも変わらざるを得なくなるだろう。まずは子どものニーズに合わせた学ぶ場所が、公教育と同じように利用できるようになってほしいと思う。

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