「学校をサボろう」
国語の文章題のような感じで、とある小説の一部分について考えてみようと思います。「学校をサボろう」と言う友人Aの誘いに関する話です。
以下、小説の要約
Aは、時々高校を休む(さぼる)が、女子のグループを自由に出入りして友人を作ったり、教員にも気に入られたり、感性が鋭く自由な雰囲気を持っていた。私は風変わりなAが気になって仕方ないが、一緒にお昼を食べる仲になった。そして、通学時に会えば話をするようになっていた。
今朝、私はAと談笑しながら、駅のホームで電車を待っていた。すぐそばには同じ学校の生徒が何人もいる。ふいにAは目を輝かせて、「今日さぼろうよ。さぼっちゃおう。」と言う。ホーム内にアナウンスが響き、電車がもうまもなくやってくる。私は笑いながら、Aに電車に乗ろうと促す。
しかし、Aはにこにこしながら動こうとしない。この電車を逃せば学校に遅刻するかもしれないため、私は少し焦る。「ほらA、乗ろう。」と私はAの手をぐいっと引っ張る。しかし、Aは微笑んだまま動こうとしない。彼女にとって学校をさぼることは何でもないのだ。Aの自由な一日には憧れるが、今日は大事な用事があるし、学校をさぼるのはまずい。家に連絡がいくだろうし、学校の皆にも迷惑をかけるのではないかと私は心配になる。
私は、Aからそっと離れようとする。「駆け込み乗車はおやめください。」あのアナウンスが流れる。ほんの1mの距離なのに、私はその場から動けなかった。強制されているわけではないのに、Aの提案には退けられない何かがあった。私は学校をさぼりたいわけではないのだが、今から学校に行くことで何かを失う気がした。
電車のドアが閉まり、私の飛び出しそうだった心臓が静まっていく。Aは嬉しそうに私の手を取り、「これで一日一緒だね!」と飛び跳ねる。私は曖昧に笑って、電車が学校をめがけて細く消えていくのを眺める。
私とAは、その後すぐやってきた、いつもとは違う急行の電車に乗った。私は、電車の窓から見慣れた風景がいつもの数倍のスピードで消えていくのを見て、知らない世界に連れ去られる手ごたえを感じた。学校の最寄り駅を通り過ぎて、いつものホームを急行の電車から眺めたら、売店も階段の位置も違って見えた。自分と同じ制服がいくつか目に飛び込んできて、泣きそうになりながら、それらを食い入るように見つめた。なんとしてでも、あの場所に戻る…そう思った。
私は「ごめん」とAに告げる。「次の駅で降りる。学校に行くね。」と必死の形相で叫んだら、数人の客がこっちを見た。Aは驚いたように私を見つめた後、明らかに面白くなさそうな顔をして、しぶしぶ「わかった」とつぶやく。次の駅まで二人とも、無言だった。
駅に着くと、私はほっとして駅のホームに飛び出して「ごめんね」とAにぺこっと頭を下げた。
「意気地なし」…ドアが閉まる瞬間、Aははっきりそう言った。私は頬が熱くなるのを感じた。ガラス越しに遠ざかっていくAは、ただ私という人間を見透かすように、冷静な賢い目でずっと私を見ていた。そのあと、私は駅から全速力で走って、遅刻を免れた。
翌朝、私はいつもの電車の中でAを見つけたとき、怖くて泣きそうになった。Aは、私が自分自身を完全に嫌いになってしまうような、強くて毒のある言葉を私に言う気がした。ところが、彼女は何事もなかったようにへらへら笑って、「おはよー」と話しかけてきた。
呑気に笑うAは、昨日の朝、私に「意気地なし」と言ってショックを与え、日常も気持ちもかき乱したことにまるで気づいていない。私のAに対する気持ちは、透明な水の中にほんの一滴、黒い絵の具が滴ったように、少しだけ曇った。(終)
問1 『Aの提案には退けられない何かがあった』の何かとは?
ずっとにこにこ微笑んでいたAからは、無言の圧力を感じたかな…。「一緒に学校をさぼってくれるよね?」みたいに…。あとAの持つ自由さに対する「私」の憧れもあったから、Aの提案を退けられなかったのかなと思います。「私」からすると、Aの提案は甘い誘惑のようなものだったんじゃないかな?
自分の知らない世界に対する好奇心と、学校をさぼれないという思いが対立していたような感じがします。そこから生じた戸惑いが一気に押し寄せてきて、「私」は混乱して迷ってしまい、その場から動けなかったんだと思います。ここでいう「何か」とは、にこにこ微笑むAの無言の圧力や、自由奔放なAに対して「私」が持っていた憧れ、自分の知らない世界に対する好奇心などではないかと考えました。
問2 『今から学校に行くことで何かを失う気がした』の何かとは?
電車を乗り過ごした=Aの誘いに乗った、ということです。電車を乗り過ごした後に学校に行こうとするのは、Aの「私」に対する期待を裏切る行為に該当するのかもしれません。Aの「私」に対する信頼が失われてしまう…そんなことが考えられるかな。
乗りかかった船から、降りるのは困難です。「いったん始めたことは、途中でやめるわけにはいかない」に似たようなものとして、「一度乗った友達の誘いから途中で逃げ出すのは…」という考えを誰しも多少は持っているはずです。「私」はそんな自分の中の正義感に反する行為をしてしまうことに対して、小さな恐れを抱いていたんだと思います。ここでいう「何か」とは、Aの「私」に対する期待・信頼や自分の中の正義感を守ることではないかと考えました。
問3 Aはなぜ「私」に『意気地なし』と言ったのか?
自分の誘いに乗ってくれたはずだったのに、「私」が途中で学校をサボるという行為から逃げ出したからかな…。気が弱くて優柔不断な「私」に対して、不満を持ったからAは『意気地なし』と言ったんじゃないかな?一見、Aはただ拗ねただけのように見えるし、突発的に言っただけなのかもしれません。でも、軽い一言でも『意気地なし』なんて面と向かって言われたら、多くの人が傷つくと思います。結果的に「私」はAの言葉に傷つけられていました。
感性が鋭いAは、そのことをきっと最初から分かっていたんじゃないかな…。Aは信頼していた「私」に学校を一緒にサボってもらえなくて少し傷ついたから、ちょっと「私」のことを傷つけたくなったのかな…って思いました。傷つけられたら、相手に牙を向いて傷つけたくなる…そんな心理が働いていたから、Aは「私」に『意気地なし』と言ったのではないかと考えました。
問4 翌朝のAは本心では何を思っていたのか?
Aは決して悪気があって学校をさぼろうと「私」に言ったわけではなかったと思います。多分、純粋に「私」と一緒に学校をサボって、自由を満喫したかったんです。翌朝のAは『意気地なし』と言ったことに、少し後悔の念が芽生えていたのかもしれません。「私」に対してまったく反省していないように見せかけて、本当は彼女なりにいろいろ考えていたんじゃないかな…って思いました。
昨日の出来事をなかったことにしたくて、へらへら笑ってごまかそうとしたのかな…。「私」のことを完全に嫌いになったわけではないはずだし、お互いに気まずさを感じたくなくて、険悪な仲にはなりたくなかった…と考えられます。だから、Aは「私」に今まで通りに明るく振舞って、元の状態に戻りたいと思っていたんじゃないかな…って考えました。
問5 二人は本当に“仲良し”といえるのか?
本当に“仲良し”とはいえないと思います。二人の間には、小さな亀裂が入ってしまったように感じられました。ちょっとした出来事でも、相手に対して不信感を抱いていたら、本当に仲良くすることは難しいんじゃないかな…。なんか二人とも完全に打ち解けられていない気がしました。二人の間柄を仲良しというには、足りていないものがあると思います。
親しくしているようで、実際に心の距離はあまり縮まっていないみたいに見えます。翌朝になって、昨日の朝の出来事をお互いになかったことにした時点で、ちょっと距離が開いてしまうんじゃないかな…って、思いました。不都合なことからは目を逸らしたくなるのは当たり前だけど、いつもそうしていると、本当に大切なものと向き合うことができなくなってしまうように思えました。
問6 二人の関係性はこれからどう変化していくと思うか?
仲良しにはならずに現状維持という感じになるのではないかと思いました。二人の関係性に大きな変化は起こらない、と私は予想します。一度誘いを途中で投げ出されたからには、Aはもう一度「私」に学校をサボろうとは持ち掛けてこないような感じがします。Aだって誘いを断られたら、「私」とお互いにもっと気まずくなるだけだし、大胆な誘いはもうあまりしてこないんじゃないかな?親友といえるような良好な関係にまでは発展しないだろうと思いました。
問7 自分の知らない世界に連れていかれそうになり、戸惑ったことはあるか?
私はありますね。実際に昔の友達の誘いで、私の知らなかった世界に連れていってもらえました。でも、こういうものなのか…って思うだけで、私はそれらの世界をあまり魅力的には感じなかったかな…。せっかく誘ってもらえても、残念ながら私の好みではなかったかな。まだ私の知らない世界はたくさんあると思うので、自分から知らない世界に足を踏み入れる勇気は失わないようにしたいですね。
問8 友人の誘いをどうやって断るか?
「あー、…その日はどうしても外せない予定があるの…。ごめんね。」みたいに断るのが無難じゃないかなと思います。でも、「じゃあ、いつ空いてるの?」って聞かれるのかな…?私は過去に「うーん、…ごめん。気分じゃないかも…」「今金欠なんだ…」という感じで、友人の誘いを断ったことがあります。それがいいのか悪いのかはよくわからないけど、断る時にはなんかあまりいい気分ではなかった気がします。
誘いを断るというだけで、少し嫌な気分になるんですよね…。謝罪の言葉+断る理由をちゃんと言えば、感じよく断れるのかもしれないけど、断ること自体相手の気持ちを無下にしてしまうようで、申し訳なくもなっていたかな…。断り方って、よく分からないです。「行きたくない」「めんどくさい」「もう誘わなくていいよ」という正直な気持ちを言うのは、さすがに不誠実すぎるし、本当の理由をぼやかして言うしかないのかな…って思いますね…。
いろいろ考えてみたけど、友達の誘いをやんわりと断るって、難しいですね…。わざわざ誘ってくれるのは嬉しいかもしれないけど、今の私からすると最初から誘わないでほしいな…と思ってしまうかな。まあ、もう誘われることもなくなったんだから、今は関係ないんだけどね…。長時間は人と一緒にいたくないです…。人付き合いは大変だなって、私は思います。