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満月のよるに思うこと(恋愛小説についてなど)

満月って何故かざわざわする
月がきれいですねなんて言える心情ではなく
満月のよるに書くnote3回目


最近、岸くんの夢を立て続けにみた
それでも岸くんの顔が思い出せない
長身で色白で肩幅が大きくてそのせいで顔がやけに小さく見えて声が綺麗だった

思春期を書くのが好きなのに、大人になる前の恋愛を書こうとしない理由ってなんだろうって考えていた
だから、岸くんが夢に出てきたんだとおもう

平易な言葉で脚色しないで書きたいけどなにしろだいぶ前のはなしだからどうかな


岸くんと関わっていた時、その時は好きという感情を憧れに変換して、アイドルに対するようなものにしていたと思う、多分そう設定した


岸くんと関わるまえに付き合っていたひとは、真面目で口数が少なくて勉強ができて、夜の図書館から自転車をひいて一緒に帰る穏やかな時間が最高に嬉しくて、寄り道もバス停のベンチくらいだったけど、わたしだけテンション高めだった
成績も上がって気持ちも満たされて

でも、それはわたしだけの一方的な思いだったみたいで、かなりの思い違いがあった
連絡もなく彼は突然消えた
彼は下着泥棒をして捕まって知らない間に高校を退学していた(退学の理由が真実なのかは知らない)

音信不通になってしばらくしてから共通の友人が、地方新聞の小さな記事になったんだよと伝えてきた、彼のしたことだよって教えてくれた(真実なのか本当に知らないけど受け止めた)

他校だったから何もわからずに過ごしていた数ヶ月
お互いの文化祭に、の手前までの時間、あの時間はなんだったの?



その前に付き合ったひとは、中学、同じ水泳部の先輩が好きなひとだった
先輩がそのひとを好きだったなんて、もちろん知らなかった

学校の渡り廊下で先輩の友達の集団の誰かに足掛けされて思い切り転んで、塗装のはげた渡り廊下の板に打ち込まれた黒ずんだ釘が目の前に見えて打った膝が痛くて何かが一気に冷めて、凄く凄く自分が惨めで、彼から逃げた

一回転んだだけなのに
自分から好きになった訳じゃないのに不当すぎるって思って
サッカー部の副キャプテンだったけど、わたしはサッカーに興味をもてなくて応援にも行かず、ルールも分からないままでいたから、とうとう罰が当たったんだとも思った
その頃の付き合うなんて登下校を一緒にするがメインだったけど


そんな経験しかないわたしが岸くんと関係性を近づけようなんて簡単に思えるはずもなく、ちゃんと憧れ、友達の枠内にいて、だからこそ関係性はゆるく続いていくと思っていた


大雪の日に、ほっぺはもちっとしてるのに身体は細くて髪がサラサラの雪ちゃんがわたしの目の前で岸くんに告白した
彼はずっともじもじしていて、わたしは雪ちゃんの圧倒的な熱に負けて悲しくて、岸くんとの友達の関係すら諦めて、憧れも捨てて、二人の時間を一切なくした
どうしようもなかった、どうしたらいいのかも分からなかった


岸くんは声質が似ていると言われたから好きになったんだと言って、二人でいる時にずっと、私の知らない尾崎豊の曲をアカペラで歌ってくれた、知らない曲ばかりが好きな曲ばかりになった
二人だけのカラオケでも、わたしは本当にひたすら聴いてるだけで、わたしの歌(音痴だから別にいいのだけど)は一度も聴いてもらったことがなく、今思えば、あれは何の時間だったのだろう

岸くんの声は思い出せないけど透明感は感覚として覚えていて、尾崎豊の曲はわたしの記憶に残って「ダンスホール」とか「Forget-me-not」とかいまでも好き


その後、岸くんと雪ちゃんの関係は1か月しか続かなかったこと、雪ちゃん本人から聞かされて、一緒にいてつまらなかったと言われ……

無理やり前向きに考えたわたしは、また岸くんと友達枠に戻れると思った
でも、すれ違ってもただ気まずくて、しずかに避けられてるような、その変な態度の理由も教えてもらえずに離れて、それからずっと会えていない

その頃の恋愛について持札がないうえに、普通がわからない
だから書く勇気が出ないのかな
岸くんに会ったらわたしのこともう覚えてなくても無理やり思い出してもらいたい
嘘でもいいから何かを話してもらえたら、そうしたらようやく何か腑に落ちて大人になる前の恋愛について何か書けるかな


って、そんなことないか
そもそも恋愛小説には興味がないんだった
大人のものはなおさら生々しくて読んでいて苦しい
だからわたしは友情とか親子のことを書く


岸くんは近すぎた憧れ、突然に関係を中断されたその時の記憶が最後だからいつまでも透明感があるだけなんだと理解してる、音楽が喚起するその相乗についても

夢に出てきても
それはもう本物じゃない岸くんだよね


こんなこと書いちゃったことは満月のせいにする

でも、書いてしまうと現実に起きる気もするから
岸くんに会って何かを聞く日が近いのかもしれないよね
それがどこか楽しみでもあったりする


楽しかったこのあいだ

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