死にたい人への処方箋②
前回、とても大事なことを書くのを忘れてしまった。
このシリーズは決して「死にたい」あなたに生きてくれ、死なないでくれというつもりで書いているわけではない。
私も死にたいときに「死なないで、生きて」と言われたことがある。
こっちは辛くて死にたいのに、「死なないで」なんて、
生きて苦しめってことかよ!と思っていた。
死なないでなんて鬼かよ!と本気で思っていた。
だから私は、あなたに死なないでとは言いたくないのだ。
極端な言い方をすれば、死にたいなら死んだらいいし、死にたい人が死ねたんだったら幸せだなと思っている。
でも、死ぬのって簡単じゃないから、結局死ぬって痛かったり苦しかったりするから、痛いのも苦しいのも嫌じゃない?死ななくてもよさそうならまぁちょっと待ってダラダラ死なずにいよう?、くらいのニュアンスのお話だと思ってほしい。
さて、この記事の続きだ。
強制入院
馬鹿正直に死にたいですと言わされてしまった私は精神科に入院させられることになる。任意の入院したくはなかったお金なかったから。
だが、私はこのことをすぐに後悔する。
精神科医は自殺未遂をした患者を強制的に入院させることが出来るのだ。
(難しい言葉でいうと、自傷他害の恐れ有ってやつね。精神が病んじゃって自分とか他の人を殺しちゃうかもしれないから安全の為に病院に閉じ込めましょう!縛り付けましょう!ってやつ)
救急で搬送された大学病院の精神科のベッドにはどうやら空きがないらしく、空きがあってなおかつ措置入院とか医療保護入院が出来る病院に転院させられるらしい。
これ以前にも実は摂食障害で骨皮筋子のガリガリになって一度精神科の解放病棟へは任意入院の経験がある。
そのときの病院は綺麗でご飯もおいしくてテレビも各自自由に見れたし、ノートに名前さえ書けば短時間の外出も出来た。スマホも院内で写真や動画を撮影しなければ持ち歩き自由だった。Wi-Fiもくそ重いが飛んでいた。外泊も申請が通れば出来た。コンビニでお菓子を買ってきて食べることも出来た。吐いたが。
そしてなんと、病院内に簡易的なジムまである。医者の許可が出れば、ランニングマシンとエアロバイク、バランスボールくらいしかないが、室内でスマホでYouTubeを見ながら運動が出来るのである!健康的!
つまり、窓がちょっとしか開かないとか外出に許可が必要とか、看護師がちょいちょい覗きに来るとか、ちょっと不自由でへんてこなホテルくらいの感じだったのである。
喫煙者ではないので詳細はわからないが、たぶんタバコとライターをナースステーションに預けておけば、散歩と称して駅前の喫煙所までタバコを吸いにも行けるらしい。外出ノートには散歩ばっかり書かれていた。
(後に知るがこのタイプの精神科の病院は結構珍しいっぽい)
そんな入院経験しかなかったので、余裕をぶっこいていた。
閉鎖病棟だと聞いても自由に外出出来ない程度で、身体的な怪我や病気と同じ程度の自由はあると思っていたのだ。窓の柵くらいは想像していたが。
結論から言うと、そんな生温いもんではなかった。
人権って言葉を初めて意識した。
たぶん刑務所とかのがまし。入ったことないけど。
あんなとこにいたら頭おかしくなくても頭おかしくなっちゃうって!
実質2週間くらいしかいなかったけど、とてもとても長く感じた。
体感時間でいうなら2か月くらいはいたと思う。
入ったことがない人にはなかなか想像できないとは思うが、一言で表すなら虚無だ。本当に究極の虚無だった。
そして、私に人権はなかった。
順を追って話していこうと思う。
まず簡易救急車もどきみたいなのでICUのあった大学病院から運ばれる。
まだ薬が抜けきってないので、フラフラだしぼーっとしている。
ICUの料金はきっちりオムツ代まで請求された。地味に痛めの金額。
簡易救急車もどきで30分から40分ほどだろうか。
都内の田舎の方の病院に着いた。簡易救急車もどきの運転手のおじさんに車椅子を押され、病院の受付で外来の看護師さんに引き渡される。宅配便の荷物ってこんな気分なんだろうか、とか考えていた。呑気か。
そして、その日は土曜だったらしいが受付や待合室は意外と人がいっぱいいた。爺さん婆さんが多かったような気がする。
そこで、事前に連絡が言っていたのだと思うが、わりとすぐに診察室に通される。
そして精神保健指定医だかなんだかちょっとえらそうな名前の付いた30代くらいだろうか、おばさんと表現するにはちょっと早いくらいの女医さんの診察をうける。この人がこの病院での担当医になった。
女医「お薬いっぱい飲んじゃったんだって?」
私「ええまあ」
女医「やっぱり死にたいの?」
私「そうなんじゃないですかね」(めんどくさいから早く終わりたい)
女医「やっぱそうなんだー」
たぶんこんな感じの会話だったと思う。かなりあやふやなので合っているかどうかは定かじゃない。
車椅子に座っているとはいえど、薬でくらくらふらふらして、とにかく早く横になりたかった。
そして診察が終わると、ボディーチェックも兼ねた健康診断的検査に連れまわされる。
レントゲンの人がメガネのイケボでちょっとドキドキした。
超絶目が悪いのにメガネがないまま搬送されたので顔は知らん。声と大雑把な体型とメガネかハゲか程度しか判断できない。あるある。
不細工が恋愛したかったら、イケボになって目が悪い人と恋愛するのを薦める。
途中心電図の人がお留守で無駄に検査室の並びを行ったり来たりさせられた。車椅子押されてるだけなので、看護師さんが大変だっただけだけど。
そして、健康診断が終わると病棟に上げられる。エレベーターホールには頑丈そうな鉄の扉がついていた。
ナースステーション的なところで最終ボディーチェックと身長と体重を測られる。
もちろんナースステーションもオープンなアイランドキッチン的カウンターではない。
上がってきたエレベーターのお向かいの廊下側に埋め込まれている。
窓口みたいなのも最低限のサイズしかなくて、透明なプラスチックに穴が開いていて声が通るだけのやつだ。無機質。
ナースステーションの奥に病室がある。今回入れられる保護室、いわゆる独居房だ。
保護室
昔からくそくそドメンヘラなので南条あやの『卒業式まで死にません』を読んで存在は何となく知ってはいた。
だがしかし、もうあの本も十年以上も昔の本だし、医療やその他諸々日々進歩してる現代なのでどっかの人権団体とかが黙ってないだろう、と思っていた。
しかし本当に存在した。現役だ。
先ほど言った通り、独居房である。
カギがかかり、内側にはドアノブもない外開きの重くて頑丈そうな鉄のドア。ドアの隣はこれまた鉄製の強そうな銀色のトイレ。かろうじてトイレットペーパーは壁から引き出せるようになっていたが、トイレの脇には看護師さんが覗ける小窓があった。
ドアの反対側の壁はスケルトンである。動物園みたいにそのスケルトンの壁の向こうは看護師さんが巡回する廊下がある。
一応そのスケルトンとトイレの間には腰くらいの高さの壁はあるものの、たぶん普通に歩いてきたら丸見えだと思う。そういうプレイが好きな人はありかもしれない。
そして柵とか手すりとかなんにもない板に足が生えただけの診察台みたいなベッド。
天井には監視カメラ。プライバシーなんて概念は全くない。
以上が部屋の全容である。本当に患者を死なせないためだけの部屋だ。それが横に複数個並んでいる。まさに動物園のパンダゾーンだ。
そしてお気づきだろうか。ナースコールもないのである。
コードとかあると患者さん首に巻き付けて死んじゃうかもしれないしね、仕方ないね。てへぺろ☆
後にYouTubeで見た他の病院の保護室はベッドも便器も、トイレを隠す壁もなかったから、たぶんまだましな方…なんだと思う。
YouTubeで見たとこは布団を硬い床に直置き、しかもトイレも床にあいた穴だった。トイレに布団直敷き。つおい。
後に聞いた話だと、それでも自殺を試みる人はいるらしい。自分の拳口に入れて窒息死を狙ったり、トイレットペーパー口に詰めたりするらしい。
私にはそんな根性ないと思った。負けた。
そこで私はベッドに縛り付けられた。腰回りと腕の3点で脚は比較的自由だったのが不幸中の幸いだろうか。
「精神科 拘束」とかでググるとたぶん画像が出てくると思う。
これがまたしんどいんだ。ただ寝てるだけじゃん?って思うでしょ?
でも人間って寝てる時も動くのよ。ベッド硬いから仰向けじゃ腰とか尻とか痛いし。私本当は横向き寝の人だし。
腰とか尻とか痛すぎて、看護師さん呼んで姿勢を変えてもらいたいんだけど、前述の通りナースコールなどない。一応天井にマイク的なものがあって、一定以上の音量を出すと看護師さんが呼べるらしい。
親切めな表現をしたが、これはナースコールなどではない。患者が大声を出したり暴れたりした音を拾って、看護師が駆けつけるための装置である。ご丁寧に看護師さんが装置の真下で手を叩いて、これくらいの音量を出すと看護師が呼べます、と説明付きで実演してくれた。
当然、そんな装置だし入口の上の天井に付いているので、床に近い高さのベッドから「すいませーん」なんて呼んでも反応はしてくれない。呼びたきゃ相当な大声を出さなきゃ呼べない。
そんな個室が複数個並んでいるのである。右の部屋から左の部屋からひっきりなしに「すいませーん!!!!」の大声だ。それ以外は無音。カオス。
あ、忘れてはいけない。ここでもまたオムツだ。
拘束されているので、当然自由にトイレなんぞ行けない。
そして上記の環境なので看護師もあんまり積極的に来ない。大声を出すのはメンヘラ的に結構頑張らないと無理である。拘束中はオムツを履かされるのだ。
しかも!!!風呂はなんと週に2回だ。一応オムツは看護師さんに言えば、あとで実費で枚数分を支払うことにはなるが、履き替えることは出来る。見張られながら。
冬のうら若き乙女の身体とはいえ、生きていれば汗もかく。漏らしはしないが、いろいろ分泌もする。クサイぞ。
私が縛られていたのは1週間弱だ。
看護師さんの言うことを超々いい子に聞いてて1週間弱だ。
到着した日が土曜日だったのも忘れてはいけない。日曜は病院は休みだ。
基本的に病院は医者の言うことが絶対である。
私がなにを言おうとどんな状況であろうと、医者が許可を出さなかったらNGなのである。看護師さんはそれを聞いて実行しているだけなので、責めたり文句を言ってはいけない。あと風呂の回数とか病院のルールにも。
反抗や治療拒否の傾向有と告げ口されたら、拘束も入院も伸びるぞ。
1週間弱で私の拘束は終わったが、パンダ状態はまだまだ終わらない。
結末から言うと、私は最後の3日間以外はこの保護室で過ごすことになる。
予想以上に文章がどんどん長くなる。
とりあえずまたここまで、続きはまた次回(´・ω・`)
社会に貢献します、とか偉そうなことはいいません。貰ったらハーゲンダッツを食べたりヒトカラしたり、いっぱい貰ったら新しいパソコンを買ったりして「私が」幸せになります。