第5回 IPランドスケープのトリガー|IPランドスケープ、パテントマップ、知財情報分析・・・
IPランドスケープ、パテントマップ、知財情報分析・・・のシリーズも5回目になりました。
第1回 IPランドスケープの概要
第2回 経営戦略への知財情報活用の歴史
第3回 IPランドスケープは新しいのか?
第4回 IPランドスケープとパテントマップは違うのか?
久しぶりのIPランドスケープ関連の記事です。
2015年からINFOSTA主催の3i研究会アドバイザーを務めておりますが、先日第6期3i研究会のガイダンスが開催されました。第5期より私は東京会場担当のアドバイザーとなり、大阪会場はアイピーファインの大藪さんがアドバイザーを務めています。
先日のガイダンスでは大藪さんがパワポ資料を用いて「パテントマップの作成と知財戦略の実践方法」と題して、研究活動における考え方のミニレクチャーをされましたが、そのミニレクチャーのスライド資料においてIPランドスケープ(に限らず、知財情報分析・パテントマップ作成)に重要な考え方が示されていたので紹介したいと思います。
こちらが私の方で注目したスライドです。
①から⑧までのステップに分かれていて、③の現状把握で止まりがちですが、戦略へ活かすという点ではそこから④将来展望につなげて、その後ギャップの解析、戦略立案とつながる点も重要です。
が、より重要だと思った点は
①経営戦略に基づくIPランドスケープ指示
です。
これがなぜ重要かというと、分析においては「どのような分析を行うか」というプロジェクトオーナーからの指示・依頼が前提となるからです。その指示・依頼が曖昧なものであれば、プロジェクトオーナーからヒアリングを行って、指示・依頼内容をより具体化する必要があります。
もちろん分析担当者が、自社の状況を鑑みて(私のような第三者であれば、クライアントの状況を鑑みて)、どのようなニーズがあるかを予想して分析を行い、戦略提言を行うこともあろうかと思いますが、戦略に対して的確な分析結果を提示し、提言につなげるためには、大藪さんのスライドにある「経営戦略に基づく」(または「事業戦略に基づく」でも良いと思います)指示・依頼が必要となります。
戦略へつなげるための情報分析結果をインテリジェンスといいますが、CIA(米国中央情報局)におけるインテリジェンスサイクル(Intelligence Cycle)でも、ニーズリクワイアメント(Needs requirement)が欠かせません。
どのような目的・課題に対して、知財情報および企業情報・マーケット情報などのビジネス情報の分析結果からインサイトを得たいのか、その指示を明確化するスキルが分析を行う担当者として求められると考えています。
基本的に指示が曖昧なまま進めたプロジェクトは途中または最終的にはうまくいかないケースが多いです。指示が曖昧な場合は、最初に時間をかけてでも、どのような目的なのか、最終的にどのようなゴールを目指すのかをヒアリングして明らかにしておく必要があります。これは私のような第三者でなくても、企業内の分析担当者でも同じだと思います。
もちろん予備知識もなく、プロジェクトオーナーに何でもかんでもヒアリングすれば良いというものではありません。プロジェクトオーナーであればこのような問題意識・課題意識を持っているだろうな、ということは事前に調べておくことで、いろいろと引き出すことができます。
統計解析的なアプローチだけではなく、テキストマイニング・自然言語処理、最近ではAIによる分析も注目を浴びていますが、それらはあくまでも手段であって、目的あっての手段です。
まずは目的(=IPランドスケープ指示)を明確にした上で、その目的に沿った手段(=分析手法や分析ツール)を選択するという姿勢が必要だと思います。