【特許から見る】たこ焼き関連テクノロジー”たこ焼きテック”の出願動向は?
昨日は久しぶりの関西出張でした。帰り際、新大阪駅の駅マルシェにてくくるのたこ焼きを食べてきましたが、中はアツアツトロトロで美味しかったですね。
そういえばたこ焼き関係の特許ってあるのかな?とふと思ったので、今日はたこ焼き関連テクノロジーについて特許・実用新案の出願状況を見ていきたいと思います。
毎回のことになりますが、特許について詳しくない方もいらっしゃるかもしれませんので、以下の分析結果をご覧いただく前に少し留意点を書いておきます。
・企業や個人の方が出願した特許には、技術的な内容や課題など様々な情報が詰まっています。ここではJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)という日本特許庁が無料で提供しているデータベースを使った分析結果を示しています。どういう条件で分析母集団を形成したか等については末尾の「検索条件」をご覧ください。
・特許は出願されてから公開されるまで1年半(18か月)かかります。よって以下で分析した日本特許の最新分は2018年の年末あたりに出願された内容となります。そのため、直近2年分の出願は減少しているように見えますが、減少しているわけではなく、出願~公開までのタイムラグがあるため減少しているように見えてしまいます。
最古のたこ焼き関連特許出願は?
さて、たこ焼き関連の日本特許出願動向を見ていこうと思いますが、その前にたこ焼き関連で最も古い日本特許はどんな内容なんでしょうか?
あくまでも今回利用したキーワードで検索した範囲内での最古の出願となります(OCR処理されたテキストを貼り付けていますが、OCRの誤認識があります)。
実公昭51-007992「たこ焼き器」
特許請求の範囲1:アルミニウムの薄板で底板1に数多の通気孔2を穿った皿3の上部周縁水平部4上に同質の薄板で半球状の凹所5を数個設けた杉板7を形成重合すると共にそれよりや・厚手の板で前記半球状の凹所5の上部に合致する個所に円孔8を穿った板9を形成7上に重合して上板6を形成し皿3の周縁水平部4に重合すると共に!1113の周縁の延長部10を折曲して皿3の周線水子ftJ54、形へl及び板9を一体に固定したなこ焼き器。
が最も古く、1971年11月18日出願。出願人は日本ラミネート工業(現在は日金)。昔からタコ焼き機の見た目は変わらないですね。
特許から見たタコ焼きテクノロジーの動向
"特許から"と書いていますが、特許だけではなく実用新案も含まれている結果になりますのであらかじめご了承ください。
まずはタコ焼き関連の出願トレンドを見てみます。
検索条件をご覧いただくとお分かりの通り、特に日付限定を行って検索をしているわけではないので、分析は1971年(公開特許公報の発行が始まった年)から開始しました。
タコ焼き関連出願は増加・減少のサイクルを繰り返しています。実は直近2018年はタコ焼き関連特許・実用新案出願が増加しており、特許面から見るとたこ焼きに注目が集まっていることが分かります。
ちなみに、自動車やエレクトロニクスなどと比べると、食品関係は出願規模が大きい業界ではないことが分かります。
たこ焼き関連特許出願に積極的な企業は?
続いて、たこ焼き関連特許出願に積極的な企業についてみていきましょう。
1971年以降で分析していますので、約50年間の特許の出願人・権利者(企業・研究機関)ランキングになります。
備考①:出願人・権利者名については簡易的に名寄せしています。
備考②:公開というのは出願されてまだ権利化されていない案件、登録というのは出願後、特許庁審査官の審査を経て登録になった案件です。ただし登録となっていても権利存続中のものと権利失効済の案件が混ざっています。
トップは日清製粉グループ(日清フーズも含む)で累積29件、そのうち23件は権利化しています。こちらが日清のたこ焼粉です。
鰹と昆布のうまみに紅しょうがのアクセントを効かせた美味しさのたこ焼に仕上がります。さらに、だしの味わいをアップし、中はとろっと口どけがよい焼き上がりになるように品質を見直しています。明石焼など、たこ焼のバリエーションもお楽しみいただけます。
関連特許としては、日清フーズ出願のこちらでしょうか。
特許6483620
たこ焼き用ミックス
表面はカリッとして中はソフトで滑らかな食感を有し、かつ保形性に優れたたこ焼きの提供。穀粉類70〜99.7質量%と昇温ゲル化性の熱可逆性ゲル化剤0.3〜5.0質量%とを含有するたこ焼き用ミックス。
次いで2位は日本製粉で、上位2社が製粉メーカーでした。
3位にはたこ焼きなどの冷凍食品製造メーカーの八ちゃん堂がランクインしています。
八ちゃん堂の出願は以下のように基本的にはたこ焼きミックスではなく冷凍たこ焼きまたは乾燥たこ焼きでした。
特開2014-018131 冷凍たこ焼きの製造方法並びに冷凍たこ焼き
特開2010-259357 下拵えされたたこ焼き用冷凍成形体
特開2008-228651 たこ焼きの製造方法及びたこ焼き製造装置
特開2005-027526 刻みたこ入りたこ焼きおよびその製造方法
特開2003-125933 タコ焼き製造設備
特開2002-204678 たこ焼きを球形に成形する方法及び装置
特許3422986 たこ焼きを球形に成形する方法及び装置
特開2001-352952 冷凍たこ焼きの具材用タコ及び冷凍たこ焼き
特開2001-340068 湯戻しできる乾燥タコ焼き
特開平10-215775 生地中に具材を有する焼物菓子の製造方法及びそれに使用する仕込み材入り容器
特開平06-255634 冷凍菓子等の包装構造及び湯煎による加熱方法
たこ焼き関連特許・実用新案ランキングを見ると、特徴的なのは個人が上位にランクインしている点です。やはり生活の知恵的な出願が出やすいのでしょう。
特に最近特許出願に積極的なのはどの企業なのか?を出願ポジショニングマップで見てみましょう。
こちらは、出願ポジショニングマップと私が呼んでいるマップで、横軸に長期増減率、縦軸に短期増減率を取って、バブルサイズが累積件数です。こちらのマップからは、
第1象限:長期でも短期でも出願が伸びている企業
第2象限:長期でも減少しているが、最近出願が伸びている企業
第3象限:長期でも短期でも出願が減っている企業
第4象限:長期でも増加しているが、最近出願が減っている企業
のように層別化することができます(今回は1992~2018年の期間で長期増減率、短期増減率を算出)。
トップの日清製粉グループが長期的かつ短期的にも出願を強化していることが分かります。長期的には日東富士製粉や昭和産業が出願を伸ばしています。特に昭和産業は2017年以降に継続して4件出願しています。
特開2019-154308 ベーカリー製品用ミックス粉
特開2018-201474 たこ焼類粉又はお好み焼類粉、及びたこ焼類又はお好み焼類
特開2018-198545 たこ焼又はお好み焼用ミックス、及びたこ焼又はお好み焼の製造方法
特開2017-147956 たこ焼粉、及びたこ焼の製造方法
以下は昭和産業のたこ焼き粉。
出願ポジショニングマップに戻って、縦軸に注目すると個人の方とテーブルマークが短期的に出願を強化していることが分かります。
個人の方は、4件の特許出願を行い、すべて権利化していました。
特許6143403 保温装置付き焼成装置
特許5788121 たこ焼き器
特許5031122 たこ焼き製造装置
特許4819978 たこ焼き製造装置
この個人の出願人の方は東大阪市にある中小企業の社長さんでした。
こういう中小企業にもぜひとも特許などの知的財産を活用して業績を伸ばしてもらいたいですね。
たこ焼き関連テクノロジーの内容は変化したのか?
さて次にたこ焼きに関する特許・実用新案出願の内容は変化しているのか?について、技術分野を示す特許分類FI(ファイルインデックス)を使って、次に見ていきたいと思います。
まずたこ焼き関連累積件数からどういった技術分野の出願が多いのか見てみると、
A23L1 112件 (廃止)食品 食料品 その調整 処理
A47J37 70件 ベイキング;ロースティング;グリル;油揚げ
A21B5 51件 特殊品用のベイキング装置;その他のベイキング装置
A21D2 26件 ベイキング前または最中の添加材料による穀粉または生地の処理
A21B3 20件 焼がまの部品または付属品
A21D13 19件 仕上がったあるいは部分的に仕上がったベイカリー製品
となりました。A47J37やA21B5などはベーキング関連の特許分類なので、いわゆるたこ焼き器に関する出願です。A21D2はたこ焼きミックスに関する特許分類です。
それでは最近のトレンドはどうなのか?また出願ポジショニングマップを使ってみていきたいと思います(1992~2018年の期間で長期増減率、短期増減率を算出)。
件数が伸びているのは、A21D10(ベイキング前のバッター,生地またはその混合物)でいわゆるたこ焼きミックスに関する分野です。直近の出願を見てみると、
特開2019-180366
難消化性デキストリンを使用した、たこ焼き用プレミックス粉
日本製粉株式会社
【課題】できたて時だけでなく冷めた後や冷蔵又は冷凍保存後の再加熱時でも食感が滑らかで口どけが良く保形性の良好な、たこ焼きを得ることができる、たこ焼き用プレミックス粉、及び、たこ焼きの製造方法を提供すること。
【解決手段】たこ焼き用プレミックス粉に難消化性デキストリンを、たこ焼き用プレミックス粉中、3.0質量%以上18質量%以下含むことを特徴とする、たこ焼き用プレミックス粉である。また、前記たこ焼き用プレミックス粉を使用して生地を調製するたこ焼きの製造方法である。また、前記たこ焼き用プレミックス粉の原料をあらかじめミックスせず、順次加えることにより生地を調製するたこ焼きの製造方法である。
のような内容で、”難消化性デキストリン”を利用しているのでダイエット・糖質オフなどの効果を狙った商品開発をしていると予想できます。
あと件数は少ないのですが、私が興味を持った出願としては、たこ焼きの移動販売車に関する特許4120871や
タコ焼きゲ-ム盤に関する実用新案実公平03-013351などがあります。
まとめ
たまたま、関西出張の折にくくるのたこ焼きを食べて「よし、調べてみよう」と思い立ち、記事を書いてきましたが、たこ焼き関係でこんないろいろ特許・実用新案がヒットするとは思いませんでした。
身近な商品だと発明の内容もイメージしやすいので良いですね。みなさんもぜひ身近な商品・サービスから特許分析をはじめてみてはいかがでしょうか?
検索条件
検索実行日:2020年7月11日
データベース:J-PlatPat
文献種別:国内文献(特許(特開・特表(A)、再公表(A1)、特公・特許(B))、特許発明明細書(C)、実用新案(実開・実表・登実(U)、実全(U1)、再公表(A1)、実公・実登(Y))、登録実用新案明細書(Z)))
検索式(論理式):[たこ焼/TI+タコ焼/TI+蛸焼/TI+たこ焼/AB+タコ焼/AB+蛸焼/AB+たこ焼/CL+タコ焼/CL+蛸焼/CL]
検索ヒット件数:407件