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牛丼屋のキミ

わたしは、あのとき目を奪われたんだ、キミに。

わたしは、ひとりで外食もする。
よく牛丼屋には入りにくいって女の子もいるけど、
特にわたしは何も思わない。

ただ、キラキラしたおしゃれカフェには行けない。
わたしはひとりで外食するとき、ひたすら「お腹を満たす」という任務を果たすために食べることを遂行する。
お金も1000円以上は基本的にひとりで使うつもりはなく、
ただただ腹を満たす。

その日もそうだった。
家に帰る途中、今日の晩ごはんをどうするか考えあぐねいていた。

すると、目の前には牛丼屋。
「あー、牛丼か。ゴミが増えるのもいやだし、食べていこうかな。」
そう思った。
そして、テーブルがあるお店なので、いつもはそこに座るはずだった。

けれど、この日はなんとなく、
目の前にあったカウンターに座っていた。

牛丼屋のカウンターは、カウンター内側に従業員の働きスペースがある。
従業員が行ったり来たり、内側でせっせと働く。

わたしはひとりで外食するときキョロキョロしない。
でもなんだかその日はふと顔を上げてみた。

すると、内側に働くキミがいた。
その瞬間、わたしは息を飲んで、目を奪われた。

その理由は、キミが、鼻に人差し指を突っ込んで立っていたからだ。
わたしはその瞬間、笑った。
そしてフルスピードで思った、「汚え」。
またしても、さらなる感情が私を襲った「この私の牛丼の中にキミの黄身入ってないだろうなっっっ。」

みるみるうちにわたしの食欲は急低下した。
そしてわたしは、キミの元を去った。
ありがとう、牛丼はちゃんと美味しかった。

でも、キミは飲食には向いてないんじゃないか。
こっそり、いや声を大にして、ブラジルの人も聞こえるくらいの声量で伝えたくなった。

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