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死産・くらし|人間的な日々、誰でもない自分。

子供のいない産後休暇。

仕事がない生活にも慣れてきた。
ふと涙することもあるけれど、少しずつ穏やかになってきている。

骨壺はリビングの本棚にある。
仏壇というほどではないけれど、彼の居場所を整えたいと思う。

少しずつ、少しずつ。


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仕事のない日々は、とても人間的だ。

朝は仕事をしていたときと同じ5時に目が覚めるけれど、時間だけ確認をして7時頃まで寝ている。朝ご飯には、ご飯とみそ汁と、おひたしや納豆、佃煮を食べている。ごみ捨ても洗濯も、余裕を持って取り組めている。

昼は不思議とお腹が空かないから、あまり食べていない。

日中は本を読んだり、漢検の勉強をしたりしている。
読む本の種類も、仕事に直結しない内容にしている。そうでもしないと、すぐに仕事に結びつけてしまう。仕事を抜きにして、自分が読みたいと思う本を読んでいる。読書をするのに理由は要らない。
漢検は、およそ1か月後にCBTで受ける。自分の気持ちを文章にしようにも、使えている言葉の種類の少なさを感じていた。もっと言葉はあるはずなのに、言葉を知らないとその事象を認識することができない。だったらと、漢検を受けることにした。答えのあることに取り組むのは、楽だ。そして、やればやったぶんだけ、わかりやすい成果がすぐに出る。精神的に落ち着くためにも、ちょうどよかった。

夜は野菜中心の食事をする。
仕事をしていたら考えられない時間に食事をして、穏やかな夜を過ごす。まだ入浴はしてはいけないから、シャワーで済ませなくてはいけないのが、かなしいところ。


と、人間的な日々を過ごしている。


この産休は、生き方をリセットする契機になりそうだ。
人間的に過ごしている中で、自分が望んでいることに少しずつ気づけるようになってきた。

私は日々、大小さまざまな我慢をしている。
この状況ではこう振る舞うことが最善であろうと思われる立ち居振る舞いを自動でしてしまう。ささいなことだと、一人で飲食店に入ったとき、どの席でもいいですよと言われているのに、一人席の方が望ましいだろうと勝手に考えて、本当は二人席がいいのにカウンターを選んでしまうような感じ。

争いを避けて、傷つくことを恐れて、身を引いてしまう。
そこに自分のやりたいことがあっても、ほしいものがあっても、私は我慢をしてしまう。手に入れようとせず、自分で自分の幸せに手を伸ばすことをやめている。


今、私は誰でもない。


仕事をしていたら、役割がある。様々な人間関係の中で、様々な役割をもつ。その時々に合わせて、その役割として最善の立ち居振る舞いをする。

それが仕事だ、それが社会で生きるということだ。

と、私は思っていたんだと思う。
そして、その考えにブレーキが利かなくなって、過度に行き過ぎた結果、自分のやりたいこと、自分の気持ちがわからなくなっていったんだと思う。

だから、なんとなく満たされない気持ちばかりが募っていくけれども、小手先の何かで満たされることはなく、検索したって答えが書いてあるわけでもなく。なんとなく苦しい日々を過ごしていたように思う。

日々を変えようにも、「日々」は待ってくれない。
自転車操業で「日々」をこなしながら、日々と向き合うことは私にできなかった。そうやっているうちに、どんどん苦しくなっていく。


我が子より大事なものなんてなかったのに、
何よりも大切な我が子が生きて産まれることはなかった。


何のための我慢だったんだろうと思う。
仕事として我慢する場面もあろうけれども、私のすべてを犠牲にしてまで我慢する必要はなかった。産休が終わったら、仕事だけではなく不妊治療も再開する。不妊治療のために、妊娠のために、諦めざるをえなかった仕事がある。死産のために、何の準備もできないままに、楽しみにしていた仕事から離れることになった。

だけど、我慢した結果、結局、仕事も妊娠も何も叶っていない。

誰でもない私でいられる今、私が何を大切にして生きていきたいのか、見直すことができる。自転車操業の「日々」ではない今、愛おしい我が子に出会った今、私は私の気持ちに素直になることができる。

まだまだリハビリが必要だけれど、私は私を好きでいてあげたい。
だから、素直な気持ちに気づいてあげたい。



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「さみしい夜にはペンを持て」を読んでいる。
なんとなく気になっていた本だけれど、購入には至っていなかった本。先日購入し、昨日、読み終えた。そして今日から、もう一度読み直している。

妊娠判定を受けたころから、noteを含めてさまざまな記録、ライフログがご無沙汰になっていた。それはつまり、そういう生活になってしまっていたということでもあり、自分と向き合う時間がなくなっていたということでもある。時間がある今、ペンを持ちたい。


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