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雪の生きる街

こんにちは、函館移住者の花です。

一昨日は冬至でしたね。

外に目をやると、もったりと寝そべる雪が見えました。屋根を独り占めして、すっかりくつろいでいます。

大正湯にいってみようか。

緑のリュックを背負って外へ出ました。

道の雪は踏み固められて、街灯の温かい蜜柑色をつややかな白で跳ね返します。

足元で、道の横で、雪が私を見つめています。
日は落ちているのに、雪は眠ることなく生きています。


家の近くのバス停で待っていると、冬の宝石がまたたいていました。

7分遅れでバスが来ました。
一緒に待っていたおばさんが先にバスに入れてくれました。

運転席の近くに腰掛けると、通路の向こうに座っているおじいさんとちらちらと目が合います。

バスのドアが開くと、道の脇には真っ白でふかふかの雪がこんもりと積もっていました。

先に降りたおじいさんの足跡の上を真似っこして歩きました。

おじいさんは一瞬振り向いて、温かい眼差しでゆっくり微笑むと、足早にお家に帰っていきました。

水を含んで緩んだ雪の上を踏んづけると、ゆっくり水が染み込んで、霜焼けになっている指先が痛みました。

踏み固められてつるりと凍った雪の上を、猫が1匹走っていきました。

私もあの子に続いて角を曲がりました。


角を曲がると桃色の建物が見えてきました。

大正湯です。
大正湯は、大正3年に船大工が建てた、洋風の温泉です。

入り口を入ってすぐの女湯の暖簾をくぐると、おばあさん達がくつろいでいました。 

横を見上げると、女将さんと目が合いました。
450円を渡して、木で編んである籠をひとつとって、脱衣所の1番端っこに荷物を置きました。

壁の向こうにおじいさんの話し声が聞こえてきました。

脱衣所のおばあさんたちは遠方に暮らす息子たちの話をしています。


それぞれのひとの日常が流れています。

湯船に浸かって目を閉じました。

地元の幼馴染、ご近所の娘さん、大好きなお店に集う大好きな人たち、街の夕暮れ、白み始める空を背中に集うカラスたち、たくさんの想いが頭に浮かんでは、湯気と一緒にふわりとのぼっていきます。


外に出ると、やはり雪が私を見ていました。


街灯に照らされた公園で雪が2人、ブランコに座っていました。

あたりは静けさに包まれていて、2人だけの世界が広がっていました。


皆が寝静まると、彼らは雪の絨毯の上で戯れて、雪はそっとその足跡を隠して、次の日も澄ました顔で私を見つめるのでしょう。

雪の生きる街。

黄昏時、淡く染まっていく空を見ていました。
ふと視線を移すと、雪がいました。

静かに私を見つめていました。


⭐︎お店情報☆
大正湯
営業時間:15:00-21:00
定休日: 月・金
住所:函館市弥生町14-9(駐車場無し)
TEL: 0138-22-8231

ライター情報はこちら!
https://note.com/another_hkdt/n/nab69fbc73ee5

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