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街に生かされる。

こんばんは、「函館観光者」の佐伯です。

街ってどこにあるのだろうか。
「函館旧市街」あるいは「函館西部地区」と言ったときに、それは何を意味しているのか。この街の本質は何なのか。

最近はそんなことを延々と考えています。

答えは出ません。ただ単に本質主義という沼に溺れてしまっているだけかもしれません。

きっと、「この街」と一概に言っても、その定義は千差万別なのでしょう。街の在り方は、「〇〇にとっての」という形を取らざるを得ないのかもしれません。

望むらくは、「函館旧市街」の本質を掴みたい。でも、それは少なくとも今の自分には無理だから、「僕にとっての函館旧市街」を考えてみることにします。

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なぜ、函館旧市街へやってくることにしたのか。先に、そんな話を少しさせてください。

コロナが蔓延し、神奈川県横浜にある実家は、温かいホームでありながらも、冷たい鳥かごでもあるようになりました。
外へ出られないこともそうですが、自分が何かをしなくても生活が順調に回っていくことに、飼い慣らされた鳥のような、あるいは植物人間のような感覚に陥りました。

家に殺される。ときにそんな風にも思ったものです。

だから、ひとりで外へ出ることにしました。つまり、都内のホステルを転々とする暮らしを少しずつするようになりました。それぞれの宿は、きっと本来であれば海外バックパッカーなどで賑わっていたのでしょうが、しかしそのときは実に閑散としたものでした。

未知の街で、ひとりになる。これは僕を、生の解放感で満たしました。
思い返せばこの感覚は何も初めてではなく、大学1年生以来何度も経験したひとり旅において、毎度感じているものでした。
目に入る物すべてが新鮮で、ただただ街を練り歩く。惹かれた店にふらっと立ち寄り、誰に教えるわけでもないお気に入りの品をこっそり見つけ、他愛のない会話を店の人と交わす。街と、街の人々と、繋がっていく中にこそ、生がありました。

街と、もっと強く深い繋がりを築きたい。それは、衝動でした。
そして、そのために選んだ街が、函館旧市街でした。

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観光者として、といっても長期滞在型の観光者として、この街で繋がりを探し求めて、まもなく2か月が経とうとしています。

この街には、「繋がりシロ」がたくさんありました。自然、歴史、人がそうでした。
函館山と海、そして20個以上もの坂は、刻々と表情を変え、人を惹きつける自然の美をたっぷりとたくわえています。
幕末の開港以来、邦人と外人が交錯してきた歴史は、脈々と現代に流れ込み、過去に想いを馳せてしまう瞬間が街中に散りばめられています。
店を営む人たちは、唯一無二の世界観を秘め、そこに共鳴する者にはいつまでもそこにいたくなるような温もりを手渡してくれます。
そうやって、この街は、訪れる人々を、無感動に浮遊させておくことはせずに、確実に繋ぎとめるのです。そのためのきっかけに溢れているのです。

それが、僕の眼に映る函館旧市街でした。

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前評判では、閉鎖的な街と聞いていました。2か月暮らして、確かに閉鎖的な面があると感じます。すでに暮らす人たちの繋がりが強く、そこに入り込んでいくのに労力がかかるという移住者の声も聞きました。
でも同時に、この街には、繋がるための「シロ」も豊富にあって、それはもしかしたら見つけづらいものもあるのだけれど、惹かれて掘り当てた者を拒むことはないのです。僕にはそう感じられました。

観光者にとってのこの街が、そのようなものであったらと願います。
スタンプラリー的に素通りする観光よりも、自然と歴史と人をじっくり味わう観光に向いている街であると思うからです。
観光者にとって函館旧市街は、繋がりゆくことで生を感じることのできる存在になり得るのです。

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一方、街にとっての観光者とは何なのでしょうか。
単にお金を落としていく経済的な存在に過ぎず、街にとっての異物とならざるを得ないのでしょうか。

繋がることは、そうならないためにも大切なことです。
観光者が街に憧れや親しみや愛着を覚えることができれば、経済を超えた精神的な繋がりが生じます。もしそうなれば、観光者が街から浮いた存在であることも減るのかもしれません。

僕にとってそうだったように、大勢の観光者にとって、函館旧市街が、繋がりと生を感受できる街であってくれたら、嬉しく思います。

いままで僕のブログを読んでくれた方、ありがとうございました。

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僕のいままでの記事はコチラ
#1 内向きの威光
#2 そして、雪と舞う。
#3 ひとりたち
#4 店から街をたくらむ
#5 紡ぐ。編み込まれる。
#6 透明な壁
#7 街に生かされる。(今回)

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