イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ
ーあなたが生まれたとき、周りは笑っている。あなたが息を引き取るとき、周りは泣いている。そんな人生を送りなさい。
以前何かの本で読んで知ったインディアンの古い諺。
もちろん生まれた瞬間はコントロールできないけど、死に際はまさに自分が今までどのように生きてきたかという人生総決算の瞬間である。
そんなとき、有り余る金を使い優雅な個室でゆっくり過ごしているが、家族も友人も、かつての同僚も誰も見舞いに来ないままにひっそりと息を引き取る世界線。
もしくは、そんな贅沢な部屋ではないがひっきりなしに見舞いが途切れず最後の時まで皆目に涙を浮かべながらも温かい笑顔や言葉を掛けてくれる世界線。
様々な考え方はあるければ、僕は間違いなく後者がいい。そしておそらく大多数の方々も僕と同じ意見を持っているはずだと思っている。
ではなぜゴールは決まっているのに「私(俺)と仕事、どっちが大事なの?」といったセリフに代表されるような、ついつい目先の仕事を優先して大事な人(もちろん夫や妻には限らない)を蔑ろにしてしまうような行動をとってしまうのか。(しかも、経済的に成功するような優秀な人々に限って)
このような疑問を、自身が専門とする企業戦略理論に準えて解明したのが「イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ(https://amzn.to/3AZsmTH)」の著者であるクレイトン・クリステンセン教授である。
詳しくは本書に譲るけれど、決して難解で専門的な言葉などは出てこないし、分かりやすく平易な文章でどのように生きていくかについての新しい視点を授けてくれる上に、「イノベーションのジレンマ」というとりあえずビジネスをやっている人であれば知っておいて損はない有名な理論についてもざっくり学べるので是非とも読んでみて欲しいと思う。
最後に、ここは教授も著書で念押ししている部分なのだけれど、決してこの本では具体的にどのように家族といい関係を保つか、といったテクニックには触れていない。それよりもあくまでどのような背景から仕事とプライベートのバランスが取れなくなるのかというメカニズムを説明しているだけ、つまり何を考えるかではなく、どう考えるかの視点を提供しているだけであるということ。
このように答えを性急に求めて小手先のライフハックのようなものをただ追い求めるのではなく、原理原則を知るということはとても大事なことだし、まさに本を読む醍醐味のようなものだと僕は思っている。