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アジア駐在のススメ② ~ シンガポールから締め出される日本人。その活路

前編で、アジア駐在が日本より恵まれた生活を送りつつ、FIRE/億り人を達成出来ることをご理解頂けただろう。

では、どうすれば駐在員になれるのか。
海外勤務を目指す場合、おそらく大半の方は先ず英語を勉強しようと考えただろう。キャリアの幅を広げるという意味では良いかもしれないが、海外駐在を目指す上では遠回りだ。私のような帰国子女でも無い普通の銀行員でもなれたわけで、やり方さえ知ればチャンスは全然ある。そのためには、海外駐在の現況をよく理解した上で、努力の方向性を知ることが非常に重要だ。駐在員を目指す貴方にためになる知識として、私がいるシンガポールを例に説明していこう。


シンガポールから締め出される日本人

海外駐在を中心とする日本人の長期海外滞在者の数は減少傾向にあり、シンガポールでみれば、3.7万人をピークに2割ほど減少しており、この傾向は更に加速する可能性が高い。何が起きているのか。

2019年をピークに減少する海外長期滞在者 (出所: 外務省 海外在留邦人数調査統計)

2023年9月にシンガポールで新しい就労ビザ制度(COMPASS)が導入され、シンガポール界隈に激震が走った。①給料、②経歴、③人種、④ローカル人材採用比率、主に4つの要素から成るポイント制で、40ポイント以上とらないと就労ビザ(Employment pass)が取れないのだ。問題はその水準だ。

給与は業界・年齢別に作成されているシンガポールの給与水準を基に、上位35%超で10P獲得、上位10%超で20P獲得といった仕組みで、おどろくのはその水準。例えば、30歳金融職は月収1万SGD(110万円)40歳では月収1.5万SGD(165万円)と相当な高級取りで無いと10ポイントすら取れない。また、②経歴も、日本の5大学、東大・京大・東工大・東北大・阪大しか、最高20ポイントはもらえない。つまり自国民以上のバリューを生み出せない人材は不要ということだ(企業側が高額を払うだけの価値のある人材にしか就労ビザを出さない)。

この影響はシンガポールの日本人社会には目に見えるかたちで現れており、これまでお世話になってきた日本人向けクリニックは医者を除いて大半のスタッフがローカル/現地スタッフ化。日本人向けスポーツ教室は、先生のビザが下りずに中止になる等、希少/高付加価値人材(≒高給取り)以外はシンガポールに来れなくなっている。

これはシンガポールに限った話では無く、コロナ禍で経済・財政が悪化したアジア各国は、選挙対策として自国民優先を打出し、就労ビザ発給基準を厳格化する等、自国民の雇用機会保護に走っているわけだ。つまり、現地の方々がしていることをやっていても海外で働くチャンスは与えられない

求められるのは語学力ではなく「スキル」

ではどうすれば、この狭き門を潜り抜けることが出来るのか。赴任地・企業が貴方に期待しているのは、当然語学力では無く、その専門スキルにあり赴任地で不足している高度技能、例えば人工知能・サイバーセキュリティ等における業務経験者を求めているのだ(日本が誇る寿司職人カリスマ美容師なども高度技能の一つで、世界で稼げる職業だが、駐在というテーマから外れるので割愛…)。

つまり、貴方が行うべきことは、スキル/経験の棚卸を行い、働きたい国の注力分野と合致しているかを確認、その後、赴任を希望する国に拠点を有する企業を特定することで海外駐在への道は開けるだろう。例えばシンガポールの就労ビザ制度では、前述の①-④の条件以外に、スキルボーナスという加点項目があり、アグリテック(代替プロテイン関連など)、金融サービス(富裕層向け投資アドバイザーなど)、グリーンエコノミー(カーボンマネジメント等)、といった非常に具体的な職種がきめ細やかに開示されており、キャリアを考える上でも有用だろう。

日本の強みを考え直すとき

上記のようなスペシャリスト以外にも日本・日本人が持つ強みはもっとあるだろう。

なにせ、シンガポール人他、アジアの皆さんは日本が大好きだ。私がアジア各国を旅行する一方、彼らは北海道・東京・大阪/京都と、毎年のように日本を訪れる他、職場・街中では新旧様々なアニメ・漫画を見かけるなど、日本のソフトパワーは凄い

日本の「失われた」この20~30年は、あくまでも経済指標で測った場合に横這いだっただけであり、その期間に培った(経済的価値を測れない)無形固定資産は非常に大きい。これを如何に活用するか。様々なチャンスは眠っていると考えており、海外駐在は日本・日本企業と赴任地の懸け橋となって、日本・日本企業の成長の起爆剤となる切っ掛けを掴む重要な職責を担っている。

21世紀はアジアの時代だ。インド・東南アジアの成長を如何に取り込むかは日本の最後のチャンスだと考えており、勢いのある学生・若手・中堅の皆さんが積極的にチャレンジしてもらうことを切に願っている。

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