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完成という名の死を前にして

 サグラダ・ファミリアという教会のことをご存じだろうか?
 その特徴的な外観は素晴らしく、ユネスコも文化遺産に認定している。歴史や由来を詳しく語れる方はそう多くないだろうが、有名な教会で、あの建築家ガウディの作品で、いまだに建設中らしいというくらいは、知っているのではないだろうか。
 19世紀末に建設が始まった時点では完成までに三世紀を要するとみられていたらしいが、今では拝観料の収入もあり、最新技術を惜しみなく投入できることもあって、早ければ2026年にも工事が完了する見込みとなっている。

 つまり当初の予定通りなら、この教会の完成は2182年になる。とてもではないが、その頃まで私は生きていないだろう。それがたった四年でとなれば私も出来上がったサグラダ・ファミリアを見物にいけるというものだ。だから工期の短縮が嬉しくないのではない。
 だが、どうにも言葉にしがたいもの寂しさというか、本当にそれでいいのかと問いかけたくなるような気持ちになることがある。三百年どころか、五百年かけてもいいのではないか、と。

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