函館市の事業承継に関するアンケート調査を「いさり灯」的に考察してみた
今回は、函館市の「事業承継および新型コロナウイルス感染症の影響に関するアンケート調査」についてお話したいと思います。
同アンケートは2021年8月31日~9月30日に実施され、2022年2月14日に発表となりました。詳細について以下函館市のページもご覧ください。
この記事でわかること(まとめ)
農林漁業は対象外。業種の定義が広いところも
今回の調査は、市内事業者の事業承継に関する現状や課題を確認するために実施されました。
調査対象として「会社以外の法人と農林漁業を除く、市内に本店を置く全事業所を経済センサスより抽出」とあります。一般的に後継者不足と言われる農林漁業は対象外ということですね。また飲食店や小売業では、個人事業主も多いと思いますが、今回はそちらも対象外ということになります。
あと「卸売・小売業」「その他」という業種が厄介です。というのもこの業種の範囲が広い。おそらく経済センサスの分類を基にしているのだと思いますが、その分類がこちら...。
「卸売・小売業」には、パン屋や服屋、石油・鉱物卸売や紙製品卸売業などモノを売る事業ならなんでも入ります。多岐にわたるため、事業内容が判然としません。
「その他」についても同様に幅広く、分類される事業者の状況は、本アンケートからは読み取れませんでした。
函館の事業承継実態を数から考える
それでは実際のアンケート結果について見ていきましょう。
■事業承継について考えたことがありますか
まずは「事業承継について考えたことがありますか」です。
この問いには、54.2%が「考えたことがある」と回答しました。報告書では、主要業種別に分析しています。宿泊業が 70.8%と最も高く、建設業が 68.1%、製造業が 60.8%と続いているのがわかります。
いさり灯では、事業者数に注目してみました。後継者探しで困っている方々の数を知りたいと考えたからです。今のグラフでは業種内の割合はわかりますが、数はみえにくい。
例えば、「宿泊業」は「事業承継を考えたことがある」方が70.8%と比率としては高い。しかし、母数は24社しかありません。70.8%は17社となりますが、「建設業」の68.1%を見ると305社となり、約18倍となります。
業種ごとの割合では、どの業種が実数として困っているかはわかりにくいのです。そこでいさり灯では数ベースのグラフを作りました。
その結果、「卸売・小売業」が21%(337社)で最も多く、「建設業」が19%(305社)、「飲食業」13%(217社)という結果となりました。業種別では多かった「製造業」よりも数の点では「不動産業」の方が事業承継を考えている事業者が多いことがわかります。
■後継者候補はいますか
続いては「後継者候補はいますか」です。
この問いについては「いる」 とした割合が高いのは「建設業」と「不動産業」。「いない」 とした割合が高いのは「飲食業」でした。また「いない」と回答したうち39.5%が「事業承継を考えたことがある」と回答しています。
いさり灯ではこの結果も数で分析しました。
後継者が「いない」のは、やはり「卸売・小売業(437社)」、続いては「飲食業(367社)」という回答になりました。問1の結果と合わせて分析すると、「飲食業」は事業承継を考えているが、後継者がいない可能性があるということがわかります。
残念ながら函館市の調査では、「いない」と回答した方のうち「事業承継を考えたことがある」方の業種別割合はわかりません。全体の39.5%を基に考えると、「卸売・小売業」で約172社、「飲食業」では約145社が事業承継を考えているにもかかわらず後継者がいないということになります。あくまで参考値ですね。
■今後の事業承継についてどう思いますか
続いては「今後の事業承継についてどう思いますか」です。
こちらは「後継者候補がいない」と回答した事業者への質問となります。全体では「廃業する予定」が 41.7%と最も高く 、次いで「まだ時間的に余裕がある」が37.0% 「事業承継をしたい」 が 14.1%となりました。前期の利益が黒字の事業者であっても 29.7%が「廃業する予定」と答えており、函館でも黒字廃業の問題はありそうです。
ここでポイントとなるのが事業者の意識です。「事業承継をしたい」が第三者承継なのか、はたまた従業員承継なのか、親族内承継なのか。また「売却する予定」が事業承継としての売却なのか、シンプルな事業売却なのかがわかりません。さらに「まだ時間的に余裕がある」が将来的に承継したいのか、それとも廃業なのかも見えていないところです。
そこでいさり灯では以下の仮説を立て、事業者の数を分析することにしました。
・承継の種類は、気にせず承継マインドの有無から数を割り出す
・「売却する予定」は方法として承継も考えられるのでマインド有とする。
・「まだ時間的に余裕がある」の数に「事業承継を考えたことがある」の割合をかけ「事業承継を考えたことがあるが、まだ時間的に余裕がある」と考えている事業者の数を洗い出す。
・上記のを前提に、これから後継者を探す可能性のある事業者数を出す。
...ということでその結果がこちらです。
少し数字遊び的な側面もありますが、アンケートに答えたうち約700社が後継者を探す(予定の)事業者となりました。本アンケートの有効回答率は40.6%でしたから、事業者全体では約1800社程度。市内事業者(個人事業主、農林漁業除く)の21%程度がこれから後継者を探される可能性があると推察されます。
■事業承継にあたっての障害・課題は何だと思いますか
続いての問いでは、「事業承継にあたっての障害・課題は何だと思いますか」です。この問いでは「後継者の確保(49.4%)」がもっとも高い結果となりました。よく言われる「親族間での相続問題(6.3%)」や「株式の譲渡(9.2%)」よりも高い結果ですね。「いさり灯」はまさにここを解決するサービスなので、ぜひ役立てていただきたいです。
まとめ
以上が函館市の「事業承継および新型コロナウイルス感染症の影響に関するアンケート調査」についてのお話でした。後継者の確保に携わるのが「いさり灯」というサービス。函館市とその近郊で事業承継、M&A、後継者求人などがあればぜひお声がけいただきたいと思います。
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