はっぴいさんが追いかけてくる!絵本『はっぴいさん』荒井良二・作を読んで
はっぴいって、誰にとってのはっぴい
「幸せってなんだ~っけ、なんだ~っけ、ポン酢醤油がある家さ、キッコーマン!」その昔、80年代に明石家さんまが歌っていたCMソングです。絵本「はっぴいいさん」を読んで、「幸せってなんだっけ?」と考えていたら、ついつい思い出してしまうのは、40代より上の世代だと思います。
男の子と女の子が「はっぴいさん」を探す旅に出るのがこの絵本。成績優秀、スポーツ万能、いい学校に行ってほしい、いい会社に就職してほしい、結婚してほしい。はっぴいにもいろいろありますが、こういうのはだいたい親が思う幸せです。世間の普通の幸せでもあります。
でもそのはっぴいって、誰にとってのはっぴいなんでしょうか?なぜか親になると自分の事は置いておいて子供だけはと多くを望むか、自分が歩んできた道を子供にも歩ませたり、どちらにしろ子供の幸せを願っての事ではあっても、親が強固なレールを引いしまいがちなものです。
でも、それって本当に子供の個性や特性に合っているのでしょうか?私は、発達障害の子育てを経験して子供の個性をよく見る事を学びました。発達障害の子どもは、「こだわりが強い」「興味がいろんなところに行く」「音や臭いに敏感」など個性が強いところがあります。でも、いっけんマイナスのものでも、場所が変われば大きな問題になることはない、むしろそれがプラスに働く場合もある。その子の個性にあった環境が大切なのです。
みんなが思うはっぴいなんて幻想だ
この絵本で描かれているように、ゆっくりの個性がある子は慎重、せっかちな子は一所懸命。見方や環境を変えれば、それはマイナスではなくプラスにだってなるのです。みんなにとっての「はっぴい」がその子に当てはまるとは限らないです。みんなに同じ「はっぴいさん」はいなくて、それぞれにあった「はっぴいさん」がいるはずです。この絵本のすごいところは、みんなが思うはっぴいなんて幻想だ。というところなんです。足元を見よう。みんなと同じ幸せではなく、自分なりの、あなたなりの幸せがある、というメッセージを私は受け取りました。
そういえば、あのCMソングもバブルに向かっていた80年代に幸せって、みんながお金を稼ぐとか、玉の輿に乗るとか、海外旅行に行くとか熱狂していた時代に、ふと「幸せってなんだっけ?」「醤油があれば幸せ」という小さな幸せに立ち止まらせる気持ちにさせられました。
はっぴいさんは子育てで忙しい時期に子供に読み聞かせると「本当の子どもの幸せって、何だっけ?」と立ち止まり気づかせてくれる絵本なのです。
でもそうは言っても、ついつい他の子と比べたり、SNSで他人の幸せそうな画像を見ちゃったりすると、嫉妬したり、マウントをとりたくなってしまいます。「はっぴいさん」は、なんだかんだいっていつまでも追いかけてくるのが、やっかいなんですよね。