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認知症をすこしづつ 受け入れる/「ビター・ステップ」(高田由紀子・著) を読んで

 介護と児童文学。
 ありそうで、あまりない組み合わせの本が『ビター・ステップ』高田由紀子・著(ポプラ社)です。
 小5のあかりの家にやってきたのは認知症になったおばあちゃんでした。おしゃれで洋服好きだったおばあちゃんが、まるで別人のようになってしまい、あかりやその家族はとまどいながらも、おばあちゃんの気持ちもわかるようになっていく、というお話です。

 私の母も認知症になって2年が経つので自分のことのように読みました。家族が認知症になると、悲しさや葛藤、いろんな気持ちが入り混じりますが、とにかく受け入れていくことが家族にとっては大事なんですね。
 私の母も昭和13年生まれにしては考えが進んでいる方でした。看護師の仕事と子育てを両立し、車を運転し、フェミニズムや、男女平等などを訴えていました。今では当たり前ですが、何十年か先取りしてやっていたと思います。
 しかし、今は着替えなどもできないし、かろうじて息子の名前はわかるが、孫の名前はあやしい。そんな感じになっています。それが、むなしいというか、悲しいというか、どんよりした気持ちに最初はなりました。

 不登校、発達障害、すべてに言えることですが、最初は誰もとうてい受け入れがたいものです。家族や子どもが大変なことになっているのですから、拒絶したり、見ないようにしたりするのも当然です。しかし、なんとか頑張って七転八倒で向き合っているうちに、ほんの少しづつですが、受け入れられていることに気づくのです。

 最近、母は認知症になって2年ほどがたち子どもに帰り、すごく純粋でかわいい感じがしてくるようにもなってきました。いろいろな事は忘れてしまったのですが、人と比べたり、嫉妬したり、妬んだり、そういうこともなくなってそれはそれで幸せなのかもしれないと思うようにもなりました。純粋に毎日を生きる、というのはある意味では人間の本来の姿なのかもしれません。
 高田さんがインタビューでおっしゃっていた「大切な人はそこにいてくれるだけでいいんですよね、本当は。」という言葉が思い出されます。
核家族でおじいちゃんやおばあちゃんと暮らすことが減ってきている現代で、『ビター・ステップ』は、人間が年をとっていく姿を子ども達に知ってもらう大切な一冊だと思いました。


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