
成功の秘密は「顧客」だった/アマゾンで物語を考えてみた!
アマゾンの成長が止まりません。
時価総額も1兆5000億ドルを超え、米国1位のアップルや2位のマイクロソフトを猛追しています。
新型コロナによる巣ごもり消費が、株価を支えていると言われていますが、
ネット書店の一つに過ぎなかったアマゾンがなぜこれほどまでに成功したのでしょうか?
その企業戦略の裏には、ある著名な経済学者の存在がありそうです。
まだネットショッピングが一般的でなかった頃
かつて、世の中では個人情報であるクレジットカードをインターネットに登録することに対する抵抗感があり、ネットで商品を購入する人は、ネットフリークと呼ばれる一部のマニアに限られていました。
地方公務員であるCさんは、いつも近所の書店を利用していましたが、
ある時、資料作成のため、ある専門書が急遽必要になりました。
いつもの書店には在庫はなく、注文しても約2週間後になるということでした。
しかたなく、週末に電車で1時間かかる大型書店に出かけることにしました。
その日の夜のことでした、パソコン通信で知り合った友人に専門書のことを伝えると、Amazon.comというネット書店が流行っていることを教えてもらえました。
注文した商品が届かないなど、ネットショピングのトラブルを心配していたCさんでしたが、数千円ぐらいの買い物なので思い切って使ってみることにしました。
検索欄にタイトル名を入力するだけ
簡単な操作で探していた専門書と在庫数が瞬時に表示されました。
驚いたのは、カスタマーレビューとしてこれまで購入した人の書評や感想がランク付きで、しかも普通だと良い評価だけが載っているのですが、悪い評価もそのまま見ることができました。
早速クレジットカードを登録して、購入ボタンをクリックしました。
代金は送料無料ということで、これなら大型書店に電車賃を払って行くよりお得です。3日後に専門書は届き、その週末には資料を書き上げることができました。
さらに、購入した書籍の関連書をレコメンドしてくれるのも新しい体験でした。
その後、頻繁にAmazon.comを使うようになったCさんでしたが、偶然それまで通っていた書店の前を通りかがりました。そこはコンビニとなっていました。
ショッピング体験の楽しさ
その後、アマゾンは書籍から日用品や家電の販売まで事業を拡大していきました。
地球最大の在庫と言われるほどの強力な在庫管理で、探しているものが必ず見つかる安心感と、定番商品が店頭より格安で購入できることで、配達日数は多少かかっても構わない人を中心に一気にアマゾンのサービスは世の中に広がっていきました。そして、その勢いは今や既存店を脅かし、倒産に追い込むほどになったのです。
一方、我々消費者には、いつでも、どこでも、何でも、買える『ショッピング体験の楽しさ』と言う顧客価値を提供してくれました。
顧客とはだれ?
アマゾンは世界の流通システムに大きな変革をもたらしたわけですが、
その経営戦略の成功要因は、単なるインターネットを使ったeコマースだけでは説明できません。もちろん、創業者であるジェフ・ベゾスの卓越したアイティアと強力なリーダーシップもありました。
しかし、経営学者のピーター・F・ドラッカーの言葉を忘れてはなりません。
今回のコロナ禍で、日本の社会システムのデジタル化が諸外国に対して20年遅れていることを露呈しました。
また、最近ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉がメディアで飛び交っています。その言葉自体は「デジタル変換」「デジタル変革」ですが、その本質は理解されているでしょうか?
その答えがドラッガーの言葉に隠されています。
デジタル化の本質
日本語訳では「顧客」ですが、原文では”a customer”となっているところに気づかれると思います。おそらく多くの日本人は「顧客」=”customers”と捉えているのではないでしょうか?
その理由として、かつての日本の製造業は、良いモノを大量生産して安く提供することで顧客満足を実現した成功体験があるからです。
しかし、ドラッガーにとって「顧客」とは個人であり、事業の目的も個人の顧客の創造と維持が基本なのです。
考えてみれば当たり前のことですが、これまでのハードウエア中心の製品では効率やコスト面で実現できなかったのです。
そして、デジタル化の本質は、アナログ情報のデータ化ではありません。
”a customer”を創造して維持することこそがデジタル化の本質なのです。
この”a customer”の存在にいち早く気づき、ネット書店Amazon.comを始めたのがアマゾンなのです。
おそらく日本の大企業の多くは「顧客」=”customers”が足かせとなって、アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブックや中国のIT/ベンチャー企業の後塵を拝する結果となったのでは考えます。
なぜ日本企業はITで負けたのか?
日本が世界に誇れる、高性能で高品質な製品を効率的に大量生産できる技術力/ものづくり力があっても、うわべだけのデジタル化では、世界との競争に勝ち残って行くことはできないでしょう。
今こそ、「顧客」=”a customer”と再定義する意識のトランスフォーメションが必要なのです。
*下記セミナーへのご参加もお待ちしています。