カフェの男性店員に惚れかけてる話 6 会うまでのあれこれ

土曜日。

朝から寒い日だった。

日中は仲良しのマダムと遊ぶ約束があったので会っていたが、緊張で正直それどころではなかった。

予約して行ったランチの店ではろくに昼食が喉を通らなかった。
緊張して食事ができないことなんて初めてだったので驚いた。

その後マダムの運転でドライブをしてもお茶をしても、いつものようにうまく会話ができない私を、マダムはとても心配してくれた。

話してしまおうかな、とも思ったが、3児の母であり平和で家族全員仲良しで健やかな家庭を築いている素敵なマダムに、夜から歳下のカフェ店員(兼スポーツ選手)と会うから緊張しているだなんて言えるはずがない。

ちょっと具合が良くなくて…と適当な嘘をついたところ、マダムはそれをまっすぐに受け取り心配してくれて、早い時間に解散することとなった。

ごめんなさい、マダム。

待ち合わせの17:30まであと2時間以上ある。

とりあえず適当なカフェに入り、時間を潰すことにした。

しかし、読書をしてもスマホを見ていても全く集中できず、ただひたすら緊張するだけだった。

その後はトイレのパウダールームで念入りにメイクを直し、ショッピングモールに行って緊張を紛らわすためにひたすらウロウロするなどした。

そしていよいよ待ち合わせ直前である。

17:20にお店の前に到着した。
寒さと緊張で全身が震えていた。

彼に

「着きました」

とLINEを送る。

「早い!ごめんなさい、渋滞にハマってギリギリになりそうです」

との返信。

渋滞?彼はバスにでも乗ってくるのだろうか。

彼の家はお店から徒歩圏内だと聞いていたので、てっきり徒歩で来るものだと思っていた。

とりあえず

「お気をつけて」

とだけ返信し、ドキドキしながら彼を待った。

時刻は17:25。

後ろから突然

「すみません」

と声をかけられた。

彼か?!と思い元気な声で

「はい!」

と言って振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。

「ここニ行きたいンデスケド、どうやってイケバイイデスカ?」

絶妙に片言の日本語。
顔を見る感じ、ベトナム系の女性だった。

見せられたのは、A4用紙に住所と簡易的な地図が描かれただけのプリント。

「会社の研修に行くんデス。アナタ待ち合わせデスヨネ?行き方教えてモラエレバ自分で行きますカラ。教えてモラエマセンカ」

と言われたが、スマホのマップで確認したところ、目的地は徒歩3分程度ではあるものの、割と入り組んだ道の中にある小さなビルだった。

教えるのも難しいし、教えたところでこの方はきっと辿り着けない。
連れて行ってあげたいと思った。

しかし時計を見たところ、すでに17:28。

この女性を目的地に連れて行ったら、きっと待ち合わせの時間には遅れる。

しかし今私目の前にいる彼女は困っている。

私は

「ごめんなさい、諸事情で少し離れます。先に入っていてください」

と彼に連絡し、女性を目的地に連れて行くことにした。

女性は

「イイデスヨ、悪いデスヨ、教えてモラエレバ自分で行きますヨ」

と申し訳なさそうに言っていたが、

「大丈夫ですよ!」

と笑顔で返し、女性を目的地まで連れて行った。

軽く雑談をしながらあっという間に目的地に到着し、女性は私に向かって何度も頭を下げた。

「ありがとうゴザイマス、本当に!ありがとうゴザイマス!」

と言ってくれた。

時計を見ると17:33。

私は笑顔で彼女に手を振り、猛ダッシュで彼との待ち合わせに向かった。

続く

関係ないけど、1ヶ月ほど前からかかっている皮膚炎が地獄。今週からノーメイクノーマスク髪の毛オールバック命令が出ていてしんどい。早く治りますように。

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