サバイバー短歌紹介✨ <盛川さん>
こんばんは✨ あの風公式noteです。この時期は、気温の寒暖の差が体に応えますね…皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、今回もサバイバー短歌のご紹介です。
歌集『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』の制作では、作り手の皆さんと300首を超える短歌を制作したのですが、構成の都合上、本に掲載できた作品は95首です。未掲載の作品の中にも、作り手の想いが詰まったキラリと光る作品がたくさんありました。
作者の思い入れのある作品を中心に「あの風・サバイバー短歌」として紹介させていただきます。
今回は、第1回のオンラインレッスンからご参加いただき、歌集にもたくさん作品が選歌されている盛川さんのご紹介です。
「アクセイです」これは神の思し召し?くじ運それほど強くもないのに
作:盛川水砂さん
こちらのサバイバー短歌は第1回のレッスン後の昨年8月にお送りいただいた作品です。盛川さんは短歌が初めてということで岡野先生のレッスンにご参加いただきましたが、当初から積極的に制作していただき、始めたばかりということを全く感じさせない作品ですよね(*˙˘˙*)ஐ
作品を詠まれた背景をお聞きしました。
<短歌のたねとなったストーリー>
いまや女性の10%が乳がんに罹患するといわれていますが、まさか自分がその10%に入るとは…。
勤務先で毎年乳がん検診を受けていますが、2018年、マンモグラフィ検査の結果、要精密検査との通知が。
疑いがあり再検査しても、影のように写っているものはほとんどはカルシウムの塊だったり、良性の腫瘍だというし、何の心配もなく検査の予約を入れました。
結果を聞きに行くときも余裕の心持ちだったと思います。90%は大丈夫なはずなのに、“悪性”だったと告げられた瞬間は、“まさか”の一言に尽きました。
何の心配もせずに受けたという精密検査。告知された時の「まさか、なぜわたしが…」という答えの見つからないグルグルとした感情は、サバイバーならではですよね。。
まさかの告知を受けても、今一つ自分に起こったことだと受けとめきれない、ふわふわとした得体の知れない感情に戸惑う姿が伝わってきます。その後、盛川さんは再建手術を受けられ、その時の感情も詠まれています。
検査結果を受けて、大学病院を紹介され、さらにたくさんの検査の後、あれよあれよという間に手術へ。病院では形成外科とチームを組んで治療にあたっていただき、摘出と再建手術を受けました。
乳房はなくても生きられるし、再建しないという選択肢もあるかと思いますが、やっぱりふたつ揃ってあれば嬉しいもの。昔は再建手術は保険適応外だったことを考えると、今はありがたいと思います。
再建していただいてよかった…乳腺外科と形成外科、両科の主治医の先生には心の底から感謝しています。
片割れが戻ってきたよきれいになって やっぱりいいね双子の乳房
そして、わたしもつい入院生活を思い出してしまう、入院生活ではおなじみの「ほうじ茶」にまつわる作品も。
普段は朝はコーヒーで目を覚ましたりしますが、入院中、病室で出されるのはほうじ茶。やさしいお茶で朝が始まります。手術後何日経ったか、日数を忘れそうになる日常からかけ離れたベッドでの毎日でした。
少しぬるいほうじ茶で迎える病室のおだやかな朝もう何日目
少しぬるめのほうじ茶の温度が、ゆっくりと日常と体力を取り戻していった忘れられない日々を映してるようです。
最後に、盛川さんのその後の生活についてもお聞きしました。
摘出、再建と、手術のため3回ほど入院しましたが、いずれも夏休みや連休を利用し、幸い回復が早かったので長期休職はせず、2日程度有給をとった後すぐに仕事復帰。術後3か月後くらいに予定されていた海外出張も、何事もなかったかのようにこなしました。
少し気張ってしまったかもしれませんが、乳がんを患っていることを仕事関係に公表したくない…病気であることを言い訳にしたくなかったのです。幸い、抗がん剤治療を受けないことにしたので、職務に支障が出るほどの体調悪化もなく、周りには気づかれず、どうにか乗り越えてきました。
その背景には、高校と大学それぞれに一人づつ、乳がんを経験した同級生の心強い存在がありました。再建の術式や、術後の後遺症など、彼女たちのアドバイスが本当に参考になり、心の支えでした。一人じゃない、と思えたことが私を前に進ませてくれたと思っています。
今は、薬の服用と3か月に一度の通院を続けています。
幸い回復が早く、連休や有給休暇のみで手術を乗り切ったという盛川さん。海外出張もこなされたとのことで、大切な理解者であるご友人の存在も大きかったのですね。。
レッスンを通じたくさん作品をお送りいただいた盛川さん、今後もぜひサバイバー短歌を詠み続けていただけたら幸いです✨
大切なエピソードをお聞かせいただき本当にありがとうございました。
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