見出し画像

【詩作】雪の路

飴色の煙草は異国の香り
雑味の溢れる小さな部屋の
海の見えない大きめの窓辺
古いベッドに腰掛けて
剥がれた季節を見送った
やさしい闇のそば

眠たげな声は猫のよう
呼ばれた夜は砂のよう
鉛色の珈琲とチェット・ベイカー
港の日暮れを混ぜたダージリン・ティー
都会の匂いに寂れた唇、途切れたお話
フィルムの色を宿した眼差し
僕を染め尽くしたら
旅情の途中の寝落ちに夢がほしくて
きみの微笑を真似てみた

似たような寒がりで寄り合って
ちがう歩幅で生きた時代を知った
不都合な生活の中で
しあわせの速度を追いかけた
下手くそな無口で悪いと思った
だけどそれでもいいと思った
ねえ、いつか僕が詩人になれたなら
こんな日々も唄にできるのかな
いまはまだ、むずかしいからね、とても
いまはそうね、ここにある唄に耳澄ましながら…

言の葉、きらきら、舞い散る、空の下
街の灯、ひらひら、うつした、海を背に
ふたつの足跡、砂漠色、白い世界に沈めて
人波、横切り、ゆっくりと
歩いて紡ぐ、雪の路


いいなと思ったら応援しよう!