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薄毛の宿命(誕生秘話8)
小説家と編集者が小説が出来上がるまでを書いているこの連載。
今回は編集者イワサキの番です。
今回の目次は、
●頼りない役を演じる大泉洋
●薄毛の宿命
●「10万部売りましょう」の理由
●危うく耳ない芳一に……
となっています。
それではどうぞ。
●頼りない役を演じる大泉洋
「小説が書かれるまでに作家と編集者がどんな感じでやりとりをしているのかって、みんな興味あるんですよ~。バズりまっせ!」
という某ネット関係者の一言を真に受けて始めたこの連載。
もう8回目なんですよね。
……全然閲覧者数が増えてない!
バズるって言ったじゃない!
ウソだったの?
と心の奥の奥の奥で思いつつ、今回も頑張って書きます。
千里の道も一歩から、と言いますし。
編集者っぽく書くと、ベストセラーも1部から、です。
さて。
水沢秋生氏との初対面。
水沢氏は、僕のことを前回、
【初対面だった編集者のイワサキ氏は、なんというか「頼りない役を演じる大泉洋をさらに頼りなくした」という感じの人物でした。】
と書いています。
ええ、ええ。大泉洋似なのは分かっています。
3年前くらいから急に言われるようになりました。
他にも、「朝ドラで大泉洋の息子役やってなかった?」とかもあったな……。
なぜ、急に言われるようになったかを考えると、
……パーマ……。
●薄毛の宿命
もともとおでこが広くて、髪の毛も細くて柔かいからか、中学2年時の文集の「将来ハゲそうな人ランキング」では、ぶっちぎりの1位でした。
父親の30代前半の頃の写真を見たらすでに薄かったので、
「僕は30歳をフサフサでは迎えられないのだろう」
そんな宿命を背負っていると思いこんでいたのです。
もちろん、その宿命には徹底的に抗いました。
高校~大学~20代~30歳と、風呂上りには毎日、頭皮マッサージをしていました。
抜け毛に効くシャンプーがあると聞けば、いろいろ試しもしました。
定食屋に行けば、率先してわかめとひじきを食べたりもしました。
四六時中、ハゲないためにできることを考え抜きました。
そのおかげか、おでこは広いものの、30歳を超えてもまだまだ髪の毛は健在だったのです。
僕は宿命に打ち勝ったのです!
そうして30歳を超えて数年たったある日、ふと思いました。
パーマをかけたいな。
先述のとおり、僕の髪の毛は細くて柔かく、中学生時代からほとんど同じような髪型でした。
雨上がり決死隊の蛍原さんの髪の毛を想像していただければ分かると思いますが、分け目を右か左にするか、くらいしか変化がないのです。
なので、ずっとパーマには憧れがあったのです。
とはいえ、こちとら薄毛予備軍。
パーマが頭皮に良いはずがありません。
そんなわけで、パーマをかけるのに二の足を踏んでいたのです。
でも、元々30歳を迎えるころには、パーマをかける髪の毛も残されているかどうかさえ怪しかった身です。
今さらパーマをかけて薄くなっても、どうってことはない。
そのことに気づきました。
そして、3年前、ついにパーマをかけ始めて、その日から散々、大泉洋に似ていると言われて今に至るわけです。
●「10万部売りましょう」の真意
「おい、お前の薄毛とパーマの話と、小説の誕生秘話、何の関係があるんだ?」
そう思った方も多いと思いますので、そろそろ本題に戻ります。
僕は水沢さんに、「10万部売りましょうよ」と言い、水沢さんから、「こいつ、アホちゃうか」と(心の中で)言われました。
10万部という数字は、今の出版業界でどういう意味があるかは、水沢さんも前回の記事でこのように書いています。
十万部。出版業界に縁のない人は、それほど驚くような数字だとは思わないかもしれません。
(中略)
しかし、そんなものは年間出版される小説のうちのほんのわずか。せいぜい、片手で収まる範囲でしょう。実際には十万部どころか、一万部でも売れれば「よく頑張った」といわれるのが現状です。
ようするに、「こいつ、アホちゃうか」と怒ってもおかしくない数字なのです。
それはもちろん、軽薄さがウリの僕でも重々理解していました。
ただ、「10万部売る」と宣言するとどうでしょう?
宣言した以上は、「ただ本を出版して、本屋に並べて、ハイオワリ」とはなりません。
10万部売れるようにいろいろとPR方法を考えて実行します。
ゲラを読んでもらう書店員さんをツイッターで募集したり。
第一章のゲラを全国の文芸書担当書店員さん200人以上に送付したり。
「『あの日、あの時、あの場所から』10万部プロジェクト」というツイッターを作ったり。
https://twitter.com/anohi_20181105
特設サイトを作ったり。
http://kinobooks.jp/lp/anohi/
作家と編集者で書店訪問したり。
作家が一人で書店訪問したり。
とくにこれが一番大きいのですが、「10万部売る」と宣言した姿を見て、たくさんの方々が応援してくれるようになりました。
ありがたい限りです!
ありがとうございます!
では、仮に10万部売れなかったら、どうなるでしょう。
「どうってことはない」のではないでしょうか?
30代の男がパーマをかけて髪の毛が薄くなっても、どうってことないのと同じで!!!
以上、「小説誕生秘話 第8回」でした。
お読みいただき、ありがとうございました!
●危うく耳ない芳一に……
あ、僕の記憶がたしかなら、10万部の話は、打ち合わせを終えて、お酒を飲みながら切り出したはず。
そのあたりはちゃんと怒られない雰囲気を作ったはずです、多分。
ちなみに、僕は約3年前から禁酒中です。
酒を飲んで、危うく耳なし芳一になりかけたので……。
ちなみにちなみに、初対面の水沢秋生さんは金髪にカッチョイイ帽子をかぶっていて、「ああ、薄毛に悩んでいない人だな」と思いました。
僕にとっては、
帽子→頭皮が蒸れる→薄毛
金髪→頭皮が痛む→薄毛
となりますので。