世の中には2種類の作家がいる(誕生秘話10)
★世の中には2種類の作家がいる
前回の水沢さんの記事では、プロットについて、
今回の場合も、「プロットを提出してください」といわれるかと思い、身構えていたのですが、薄毛氏は「あ、プロットはいいすよ、お任せします」と気軽におっしゃり、私はほっと胸をなでおろすことになったのでした(今考えれば、これも薄毛の軽薄さのなせる業なのですが)。
と書かれていますが、ちょこっとだけ補足を。
世の中には、2種類の作家さんがいます。
プロットを綿密に作ってから物語を書き始める作家さんと、なんとなく頭に描いてどんどん書き進める作家さんです。
(どうでもいいですけど、某カリスマホストの「世の中には、2種類の男がいる。俺と俺以外だ」って名言、超好きっす)
どちらが良いとか、どちらが正解とかありません。
その作家さんの特性です。
で、僕はたしかに、「あ、プロットはいいすよ、お任せします」とお伝えしました。(我ながら軽薄なセリフですね……)
ただ、その言外には、「水沢さんのやりやすいほうで」というのがありました。
水沢さんは、初めてお会いした2018年の時点で、
『ゴールデンラッキービートルの伝説』(2012年)
『ライオット・パーティーへようこそ』(2014年)
『カシュトゥンガ』(2014年)
『運び屋』(2014年)
『プラットホームの彼女』(2015年)
『わたしたちの、小さな家』(2015年)
『俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない』(2017年)
と、7冊を執筆されていました。
すでに自分のスタイルを確立しているだろうことは想像できます。
にもかかわらず、いつもと違うやり方をお願いするのはいかがでしょうか?
きっと、書きづらくなってしまうのではないでしょうか?
だからこそ、
「(プロットを事前に書くも書かないも、お好きなほうで)お任せします」
だったのです。
それに、僕は、自分が担当する作家さんに全幅の信頼を寄せています。
そもそも、僕自身を省みて、事前にプロットが欲しいというのの大部分が、
「本当に面白い作品を書き上げてくれるかな?」
「最後まで書きあげて、つまらなかったらどうしよう」
という心配から来ています。
でも、その作家さんを最後まで信頼して信じぬくことを決めたら、あとは面白い作品を書き上げてくれるのをひたすら「待つ」のが僕の仕事です。
(正確には、面白い作品を書きあげる「環境」を作るのが仕事、でしょうか)
つまり、「あ、プロットはいいすよ、お任せします」は、水沢さんに対する絶対的な信頼があったからこそ、なのです。
とはいえ、これまでに小説を書いたことのない人や、まだ自分の型ができていない人は、事前にプロットを作ることをおススメします。
僕が言いたいのは、プロットを作らないという型が出来上がっているのに、そのやり方を変えてまでプロットを事前に提出してもらうのは、こちらの心配や不安を解消するためにしかなっていない、ということです。
ちなみに、これは全部、編集者イワサキの考えであって、他の編集者は正反対のことを考えていたりしますし、正解なんてありません。あしからず。