短歌93(夏から秋への短歌)
未発表(ここが初出)
羽ばたきは拍を刻まず見つめれば我を飲み込むアゲハの時間
提灯の並びと半被の車座を残し露店は骨になりゆく
殴るのに適したパイナップルがある今夜を生き延びようかお互い
できること選んで暮らす夏過ぎて薄荷油の瓶揺らせば空(から)だ
ジャックオーランタンを模すクッキーも入る吹き寄せ土産に選ぶ
目の前の窓に流れしひと群れの赤紫を鶏頭とする
ジーンズに下駄の兄(あん)ちゃん眠ってる普通列車で彼岸の帰省
ぽんかんの種をときおり出すおじさん視界に捉えつつ自由席