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短歌62(夏の生命の歌)

「心の花」2023年2月号掲載+α

あ、これから傷つくなと覚悟して 卯の花腐し ちゃんと傷つく

明日晴れてしまえば底に穴あいたスニーカーまた履かれ続ける

新品の歌集に紐の跡ついて百ページ目に砂浜がある

帆は風に膨らみライフジャケットはわたしの胸を締め付けている

帆船の上の静寂(しじま)が好きという鼻の頭を日焼けして君

ガラス張りの鮮魚売場に解体ショー始まれば君の背ばかりが見ゆ

生きていた時間の濃さが匂い立つマグロの血合料理酒で煮る

汁全部飲まないと黄身もったいないチキンラーメン飲み干す深夜


スニーカーの捨て時って難しくない……?

私はあまりたくさん靴を持っていない。
興味がないからだ。
特に普段履きのスニーカーは1足を履き続け、穴があいたら捨てる。

靴は何足かをローテーションで履いた方が傷むのがゆっくりになると聞いたことがある。
でも興味がないデザインの靴を何足も持ちたくないし、靴箱から靴を出したり仕舞ったりするのも面倒臭い。

靴に興味がないから、靴屋に行くのも億劫だ。
したがって「もうこの靴も寿命だな」と思ってから数ヶ月はその靴を履き続けることになる。
そして雨の日に後悔する。
「底に穴があく前に新しいのを買っておくべきだった」。

最近はスニーカーを履くのをやめた。
普段履きはラバーソールだ。
ラバーソールは例外的に好きな靴だ。
ビジュアルの良さと履き心地を両立している、類稀なる靴。
自分の精神障害や人生と向き合ううちに、自分が納得しないものは身につけないことを決めた。
その一環として、スニーカーを止めて、毎日ラバーソールを履くことにした。

1足のラバーソールを毎日履き、圧着が取れるか底が斜めになるまで履く。
好きなデザイン、好きなブランドの靴なので、「そろそろ靴屋に行って新しい靴を買っていいってことだな!」と思える。
買うべきタイミングで靴を買える。
雨の日に靴底の穴から水が入ってくることはもうない。

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