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⑤穂村弘×堀本裕樹『短歌と俳句の五十番勝負』に倣って
図書館で借りてきた穂村弘×堀本裕樹『短歌と俳句の五十番勝負』。
これは、色んな人が出した題を穂村弘は短歌、堀本裕樹は俳句で詠み込んで、歌合勝負をしようという本だ。
読むだけではわりとあっさり読み終わってしまいそうで、そういえば長らく題詠もやってなかったなと思ったので、私もこの歌合に参戦することにした。
ラスト第5回、スタート!
この部屋で毛布の次にやわらかい体を抱いてそれから伸ばす
題 やわらかい
生活困窮者用の一時滞在施設には必要最低限の物が設置されている。冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、クローゼット。なんかどれも四角くて固い。
安普請というより古いマンションの拭けど木屑のこぼれる隙間
題 安普請
一時滞在施設、共用部を誰も掃除しないから不気味な雰囲気になってるけど、防音がしっかりしてるところから考えるに、もともとは結構ちゃんとした建物なんだろうな。でもリフォームの継ぎ目から木屑がこぼれ落ち続けるのは中に蟻でも住んでるのかな。
モニターが切り取るハンドマイクだとふるえる人のふるえるマイク
題 ふるえる
「この人すごい震えてるな。カバー曲だから緊張してるのかな」と思ったけど、ハンドマイクだとマイクが揺れるから目立つだけかと気がついた。普段はギターを持ってるから。
塗り替える日を先延ばしして今も瀬戸内海は君と見た海
題 瀬戸内海
結婚していた頃、夫と四国のあたりによく旅行に行った。しまなみ海道を自転車で渡ったり、ヤドンに会いに香川に行ったり。旅行中に作った瀬戸内海の短歌は歌会でとても褒められた。
夫からおいてけぼりの義父の影ふりさけ見れば栗を買ってる
題 おいてけぼり
元夫もその父もひとのペースに合わせて歩くことができない。振り向かないでずんずん進む夫とすぐ道草を食う義父の間で私は気が気でない。
えいやもう愛嬌だけで生きますと決めるバナナを皮だけにして
題 愛嬌
自力でお金を稼ぐことにかけては、能力もなければ執着もない。その代わり愛嬌があるので、周りの人も優しくしてくれるし、役所の人とのやりとりもスムーズ。
真っ直ぐにうらはらがあるいじめたい気持ちかこれが 花にまみれて
題 うらはら
理由がなんであれ、「ひとをいじめたい」と思ったことがなかった。でも25歳の時、例外として一人だけ、いじめたくなる人と出会ってしまった。出会って3年弱、いまだにいじめたい。
忖度を受け取る役を忖度として引き受けて巻いてゆく肩
題 忖度
忖度って「無遠慮に受け取る側」がいないと成立しない。日常生活では「忖度の行き違い」によるトラブルの方が多そう。
君語る夢を隣で聞くことがいつか共謀罪となっても
題 共謀罪
「共謀罪」という言葉からは社会主義の香りがする。いや、どちらかというと資本主義のにおいか。
ぴょんぴょんと夜の神社に跳ぶ影もひとまず今日のところは蛙
題 ぴょんぴょん
夜に神社に行ったら、足元で黒いものが跳ねてビビった。あの跳び方ならおそらく蛙だが、幅が10センチくらいあって大きかった。暗闇に紛れてしか本音を言えない人が「帰る」と伝えにきたのだろう。
これにて題詠50首、おしまい!
お付き合いいただきありがとうございました。