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世はインディゲーム戦国時代!!「TOKYO SANDBOX 2023」レポート

2023年4月15日(土)に秋葉原ベルサールにて開催されたインディーゲームイベント「TOKYO SANDBOX 2023」に行ってきました。例によって色々なゲームに触れることができたので、いくつかの作品ピックアップしてご紹介します。

会場はいつものベルサールですが、昨年はコロナ禍ということもあってか出展数が限られ、会場自体もフロアの半分ぐらいになっていたため狭く感じましたが、今年はフルスペースを使ったことで余裕を持って見て回ることができたのが良いですね。

当日は雨が降っていたため、足元が悪い中での参加とはなりましたが、会場には多くの来場者が詰めかけていました。同じ秋葉原で開催されているインディゲームのイベントであるデジゲー博よりも「TOKYO SANDBOX」は海外の方が出典・来場者双方に多いのが特徴です。

昨年の様子については別記事で書いているので、こちらも参照いただければと思います。

紙をお届け!イベントでの目立ち方は強烈『紙がない!』

既にNintendo Switchでリリース済みですが、イベント映えが強烈な作品でした。トイレで紙がなくて困っている人にトイレットペーパーをお届けするべくトイレットペーパー(物理)を転がすノダ!

トイレットペーパーの芯の部分にJOY-CONを突っ込み、モーションコントロール機能を使ってトイレットペーパーの転がりを検知して進めるアクションゲームとなっています。加速度センサーも効いているため、思ったように転がすのが難しい!こういった体感型コントローラーのゲームはリアルイベントならではのその場限りの体験になりがちですが、本作の場合は家に帰っても続きが遊べるのが特徴ですね。

角度を変えて、流れを変える。ちょっとしたアイディアが光る弾幕系シューティング『C.C.S.B.』

弾幕系シューティングゲームは同人・インディゲームの界隈には大量に存在しますが、基本的なルールは似たようなものが多く個性的な作品はなかなか巡り会えません。その点、RebRankによる『C.C.S.B.』はちょっとしたアイディアが新鮮でした。

白黒2種類のショットでそれぞれの色に対応した敵を倒していくのはどこかで見たような要素ですが、コントローラー左右のトリガーボタンを押すことで敵の軌道を回転させることができるのが特徴です。

ちょっとしたアイディアではありますが、軌道を変えることで敵を一網打尽にしたり、より高得点を狙うムーブが可能で、単に撃つだけではない独創的な魅せプレイを目指せるでしょう。基本的な弾幕シューティングとしての完成度も高く、今後のリリースにも期待したい一作です。

音楽的なプラットフォーマー『MELODIA』

音楽をアクションに取り入れた作品はそれなりに本数がありますが、音階をプラットフォーマーのアクションに取り入れたのは面白いアイディアでした。

ダッシュとジャンプで進んでいくゲームですが、それぞれに2つずつボタンが割り当てられており、Aボタンで音階が上がるジャンプ、Bボタンで音階が下がるジャンプと言った具合で押すたびに音階が上下します。音階を上げきった(下げきった)状態ではそれ以上に音階を上げられないため、音階を下げるジャンプを使わなければなりません。

こういったルールが存在するため、必然的に音階が上下したメロディが生まれるのが特徴的です。インタラクティブミュージックの手法が取り入れられたゲームはたくさん存在しますが、ある程度作曲家やサウンドデザイナーの意図が存在したり、意図しない部分で自動的に生成されるものです。『MELODIA』の場合は一般的なインタラクティブミュージックを導入したゲームとは少し異なったアプローチで、プレイヤーがより狙った音楽を作ることができそうです。

カメラワークをプレイヤー自身が行わなければならないのが音楽的なプレイへの没入の妨げになる印象があり、その他にも細かな問題点はある状態でしたが、今後のブラッシュアップ次第では新鮮な音楽的ゲームになり得ます。

どこかでつながる俺たちの音楽『Young Team Sounds』

以前記事で紹介した『第12動画欠番』を制作したポストコマーシャルズ:アライアンスによる新作ゲームが試遊可能でした。ブースでは広告のシールが貼り付けられてヴェイパーウェイヴっぽさがあるルックのギターにタッチパッド付きのキーボードが貼り付けられている、という強烈なビジュアルのコントローラーが出迎えてくれます。

実際のプレイでは単にキーボードとしての役割でしか利用されないものですが、こうした一工夫だけでもイベントでの印象は大きく変わるもので、実際遠くからでも目立つビジュアルでした。本作のクリエイターである葛西祝さんがイベント取材を多くされてきたライターだからこその戦略と言えそうです。

肝心のゲームプレイですが、基本はテキストベースのアドベンチャーとなります。遠くに住むミュージシャンとリモートでやり取りをして音楽を作り上げていく今の時勢を大いに反映した物語となる模様です。スマートフォンで検索ワードを入力して進行していくスタイルだったり、謎のYouTuberが登場するなど、現在的な要素を取り入れていますがこれがどう物語に影響するのかが気になります。

選択肢によってミュージシャンである主人公が生み出す音楽が変化していくため、プレイヤー毎の音楽体験があるのも本作の特徴。SE・音楽については前作に引き続きビートメイカーでライターのSHINJI-coo-Kさんが全曲担当されています。

以前から作品の存在は知っていたものの、実際にプレイしてみると『第12動画欠番』の時よりもアートワークやUIが洗練されている印象で、音楽とゲームとのリンクもより密接になっています。完成したゲームを遊ぶのが今から楽しみです。

自社IPを作る意味「Gift」「ぶっとバード」「ニャイトミュージアム」

これまで紹介してきたタイトルは企業によるタイトル(『MELODIA』は合同会社Gentle Giants制作)もあったものの、どれもが個人制作によるものでした。

近年のインディゲームには受託開発が多かった中小の開発会社が自社IPに挑戦したものが増えています。BitSummitで発表された株式会社ドリコムによる『TOKYO STORIES』が良い例で、受託開発で培った開発力があるからこそのハイクオリティな作品が多い印象があります。受託ばかりでは自社に権利がなく開発費以上の収益は得られません。長い目で見ると多少のリスクを負ってでも自社が権利を持つ作品を持つことは有効です。今回のTOKYO SANDBOXでもいくつかそういったタイトルが見受けられました。

ToydiumとMillion Edgeが共同制作している『Gift』は沈みゆく船から乗客を救助しつつ脱出を目指すスーパーファミコンの『セプテントリオン』のようなゲームシステムで進むプラットフォーマーです。

キャラクターのデザインが可愛らしく、アニメーションも充実している非常にリッチなビジュアルのゲームで、イベント初出展とは思えないほどの注目度でした。会場にはこの日のために制作されたという、フィギュアも!気合の入り方が強烈です。おそらく、今後も期待の一本としてメディアで多く扱われることでしょう。Stemのストアページも開設されているので、気になる方はウィッシュリストに入れておくのをおすすめします。

『ぶっとバード』はガトリング砲やロケット砲を背負った鳥でドッグファイトを繰り広げる4人対戦のゲームです。こちらを開発したのは2016年に創立された株式会社ロコビット。こちらも受託開発をメインにしていた会社です。敵を武器攻撃でダウンさせて突撃クチバシアタック!!時間経過でボーナスチャンスなど、対戦ゲームとしてのツボを抑えた作りはコンソール向けゲーム開発の経験があるからこそでしょうか。

上の2つのタイトルとは少し経緯が異なりますが、『ニャイトミュージアム』も自社IP制作を目指したタイトルです。制作したのは2020年に設立されたアニメーションを中心とした映像制作会社Alunite。昨年放送されたアニメ「ユーレイデコ」では第10話の演出を担当していました。

代表の望月浩太郎さん曰く、アニメーションの制作請負で収益を得ていくのはかなり難しいそうで、より良いビジネスが可能な市場としてゲームを選択して自社IPの開発を目指しているとのことです。

タイトル通りネコの警備員が夜の美術館を巡回していると、動く恐竜の化石が現れたり、盗人ネコも登場と騒がしい様子。盗人ネコとはパネポン風味のパズルゲームで対決することで、進行します。

まだ開発を始めて3ヶ月だそうで、未完成の部分は多い状態でしたが、『ペーパーマリオRPG』を彷彿させるキャラクターのビジュアルは魅力的で、このキャラクターを活かした商品展開もできそうだと思いました。

インディゲーム戦国時代

企業がインディゲームの市場に参戦することで、市場が盛り上がるのは大いに喜ばしいことですが、商品としてのクオリティが高くなることでやや独創性にかけていく傾向があるのは事実です。

インディゲームの基本は独創的なゲームの実験場と考えておりましたが、市場が大きくなるにつれてインディゲームの意味も変わりつつある気がします。個人的にはより新鮮な驚きを提供してくれるタイトルを応援したいと思いますが、結局は面白いものを作ったやつが勝ちの世界です。面白さに規模の大小は(それほど)関係はありません。誰もが参加できる市場だからこそ盛り上がる!世はまさにインディゲーム戦国時代なのです!!


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庵野ハルカ
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