あの日の意外なBGM。
先日、親友の結婚式に参列した。
小学校から高校までを同じ学び舎で過ごし、
大学から別々の道を歩むことになっても
同じ趣味を共有し、定期的に会って仲良く過ごしてきた無二の存在。
その親友が、中座のエスコートに私を指名してくれた。
司会の方から「エスコート役のお名前を呼んでください」と振られた時、彼女の目線は違う方向を向いていたから、家族と歩くのだろうと思ってカメラを構えながら魚を頬張っていた。
急に注目が集まって顔が真っ赤になる私に、小学生の時から変わらないいたずらっ子な笑みを浮かべる彼女。
サプライズ成功だ…
私と彼女の関係性は親友と認識しているけれど、世間の定義に当てはめると少し不思議な関係かもしれない。
同じクラスになったのは一度きり。
学校でつるむ友達はそれぞれ違うグループで、行事は共に過ごした記憶がない。
「付かず離れず」というほど淡白でもなく、かと言って一緒にいる時間が多いわけでもない。
でも、1番信頼できて大好きな友達を聞かれたら真っ先に彼女を挙げるし、彼女も私を挙げる自信がある。
喧嘩は一度もない。
そんな彼女が中座のBGMとして選んだのは
松任谷由実さんの「やさしさに包まれたなら」だった。
不朽の名曲だが、世代ではないはずの曲。
彼女がこの歌を選んだのが少し意外だった。
私自身は「なんか聴いたことあるな」くらいにしか知らなかったので、帰宅してから歌詞を調べてみた。
くちなしの香り。昔、私が1番好きだった香り。
それが歌詞に入っている。
彼女はもしかして覚えていてくれたのだろうか?
偶然かもしれない。
でも、その少しの接点で選んだのだとしたら、この曲は私へのプレゼントかもしれない。
そして、曲名にもある「やさしさ」というワードを見てもうひとつのエピソードを思い出す。
それは中学時代、部活を辞めたいと彼女から突然相談された時のことだ。
私が誘う形で同じ部活に入部して以降、
キツい練習に食らいつこうとする彼女は、ずっとつらそうだった。
私は迷うことなく「辞めたいと思うなら、辞めたらいいよ」と伝えた。
彼女には笑顔でいてほしい、と思って出た言葉だ。
数日後、彼女は退部した。
当時私が周りから言われたのは「冷たい」という評価だった。
「頑張って一緒に続けよう」と鼓舞してあげたほうが好ましかったらしい。
突き放したように見えてしまうのは想定外だった。
とにかく彼女が悲しんでいたらどうしよう、ということだけが気になり、彼女のもとへ行って引き留めなかったことを謝った。
すると彼女は「冷たい?むしろ優しいと思ったよ。私の気持ちを1番に考えてくれてありがと。」と笑ってくれた。
私を優しいと評してくれる友人は多くない。
だからこそこれは私にとって印象的な出来事だ。
彼女は、私なりの不器用な愛にいつも気づいてくれるし、私の拙い言葉の真意を理解してくれる。
それがとても嬉しかった。
私にとっては彼女がいちばん優しいのだが、彼女は同じことを私に思ってくれているらしい。
そんなことを思い出しながらあの日のBGMを繰り返し聴いていると、なんだか涙が溢れてきた。
彼女への想いの強さは旦那にも負ける気がしない。
ところで、今回歌詞を調べていて初めて知ったことがある。
この曲は、魔女の宅急便の主題歌なんだそうだ。
私はジブリを全く観ないので知らなかったが、彼女はジブリが好きだ。
もしかしたら特に意味はなく、単に好きだからこの曲を選んだのかもしれない。
でもいいんだ、昔から彼女はケロッとしていて
私だけが深く考えすぎている。
このバランスがちょうど良い。