面接で、自己PRをド忘れてしまった!
就活を終え来年から社会人の私には、今でも忘れられない、酷い面接がある。
就活が解禁される3年の3月、初めての面接に挑む私は、緊張を隠せずにいた。面接待ちのロビーでは、就活仲間たちが、なにやらソワソワと落ち着かない。自前の原稿を本当に読んでいるのか分からないほど高速でめくる学生、瞑想しながら足がゆらゆらとなんともキマらない学生も見られた。
彼らと同じように、いやそれ以上に落ち着かない私は、周りの学生がチラチラと気になりつつも、ほんの先週付け焼き刃で考えた自己PRやら志望動機を何度も何度も頭の中で確認していた。
(私の強みは行動力、、行動力、、。ボランティアでは、広報長をして、、。)
呪文のように、ひたすら文章を思い起こしていると、自分の名前を呼ぶ声にビクッと肩を振るわせた。どうやら、面接の部屋に案内されるようだ。心臓が飛びだしてしまうかもしれないと、胸を抑える。
緊張で震える手でノックをする。どうぞと中へ誘導されると、いよいよ面接官との対面である。面接官はこちらの緊張とは反対に、のんびり私のエントリーシートをその場で流し読みしていた。
今確認するものかと少し驚いたのも一瞬、簡単な自己紹介をしろと言われ今から言うセリフに意識が戻る。
「自己紹介ありがとうございます。では、早速始めますね。あなたの強みは何ですか?」
と面接官が尋ねる。
「はい!私の強みは、」
勢いよく返事をしたのは良かったものの、続きが出てこない。頭が真っ白になって、冷や汗が全身の毛穴から止まらない。
強み、、強み、、なんだっけ。
頭をフル回転させて考えようと挑戦するものの、真っ白に厚塗りされた頭はどうひっくり返しても真っ白だ。面接官は、口角は上がっているものの冷たい表情に見えた。1分ほど経ったであろうか。沈黙に耐えかねた面接官が質問を変えてくれた。では志望動機はなにかと。これには吃りながらもなんとか答えることができた。
話すうちに緊張が解けていくのを感じ、最後に「熱意が伝ってきました。」と面接官が微笑んで初の面接は終了した。
家に着いた頃にメールの通知に気づくとそこには「残念ながら見送らせてもらう」との知らせが。一瞬、社会人というものは嘘つきかと悔しさが込み上げた。今考えると当たり前であるが、自分の強みさえ語れない受験生ほど残念なものがあるだろうか。準備不足だった。
その後、気持ちを改め何度も面接練習に励んだことから、さすがに自己PRを忘れるほどの失敗はなく、違うところで内定が決まった。あの日の苦い経験から、付け焼き刃の準備は通用しない上に、予想外の失敗を引き起こすと思い知る。今でもリクルートスーツをきた学生を見ると思い出され、顔が熱くなる。