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0414_目標達成

「仕事の目標?将来について?」

 私をよく知る(と、私は思っているけれどその実わからない)少し年上の同僚、佐江に私は将来を相談している。まもなく40歳を迎える私。ほぼ同じタイミングで注文したカフェオレとアイスティーが運ばれた。

「じゃあ佐江さんはもう明確にキャリアビジョン決めてるってこと?」
「どうなるかはわからないけど、こうなりたいくらいは考えているし、なれなくてもまあそれに近しいところで仕事したいと思っているよ」
「そっかぁ、すごいね」

 私が言うと、じっと目を合わせられた。棒読みがバレたのか。慌ててカフェラテを口にして、熱さにすぐに口を離した。

「そっかぁ、じゃあないんだよ。吉田さんはないの?やりたいこと」

 そう言われたのでまたカフェオレに口をつけ、やっぱりまた離した。

 やりたいことなどない。
 この仕事でどうしてやろうなどという野望はない。こうしたいとか、ああなりたいと言う、そんな希望だってない。そもそも野望も希望も持って入社していないのだ。生きるのに、お金がいるから、私は働いている。モチベーションなど特にない。

「やりたいことは特にないよ。仕事をして生きるためのお給料がもらえればそれでいいな」

 私が素直に答えると、初めて見るものでも見たかのようにおかしな顔をして私を見た。
「そういう考えもアリだとは思うよ。でも、それだともったいなくない?」
「もったいない?なんで?」
「一日で起きている時間の中の半分以上を仕事が占めているんだよ?もっと積極的に楽しんで仕事した方がいいじゃん」
 
 そう言った佐江さんの表情は確かに明るく、忙しいとばかりに文句をついても前向きに見えてどこか輝いている。確かに、彼女の言うことは理解できる。

「少しでもやっていて楽しいなとか仕事しやすいとか思うことないの。そういうのがやりたい仕事に繋がるんじゃないの」

 そう言って、彼女はアイスティーを飲んだ。ストローから口を離しながら、この年で言う話でもないけどと付け加えていた。
 けれど残念なことに、私は想像してみるが、ひとつも浮かばないのだった。

 私はカフェオレを飲み終えた。彼女を見るとアイスティーはまだ残っている。

「まあ、じゃあ、そうね、うん。吉田さんは毎日目標達成して充実しているってことでいいんじゃないの」
「目標達成?目標ないのに?」

 彼女は残っていたアイスティーを飲み干し、カランと氷が鳴った。無理矢理にでも私を認めてくれるような彼女の優しさが私は好き。

「生きているから、それが仕事の目標になってはいるんでしょ」

 なるほど、私はどうやら毎日目標達成の充実した日々を送っているらしい。
 なんか、それも悪くない。
 無理に見つけなくても生きていればそれでいいのは心地よい。

 私は今日も生きていて、本日もミッションクリアである。

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