0125_暇です
「暇だからそんなこと考えるんじゃない?」
村田さんは言った。私の方を向くことなく、パソコン画面から視線を外さなかった。
「そう、です、よね」
村田さんよりもおそらく業務量が少ないだろう私は、そう言う他なかった。席に戻って業務を再開した。
『この仕事が好きでやっているんですか?例えば部署が変わっても。ああ、そういう意味では、この業界が好きでここで仕事しているのですか。楽しいと思う瞬間てありますか』と、彼に尋ねた。すぐにしまったなと思い、『そんなことを最近自分の中でモヤモヤしていて、色んな人に聞いてみたり』と濁してみる。彼の回答は冒頭のどおりだった。雑談の中で尋ねたから、雑談のように返してくれただけで、彼は決して悪くない。
暇だからこんなことを考えるのか。私は毎日クタクタでダラダラと時間を持て余しているつもりは1mmもないのだけれど、そう見えるのか。そうかそうか。
暇にならないくらいにもっと仕事をして、家事育児の量は私、きっと変わらないから、私の100%を超える水準で家事育児と仕事をして、やりたいことや好きなもの、将来どうなりたいのかこれから何がしたいのか、そのためにもこの会社でいいのか、このままでいいのか、そう言う自分の大事な一切のことを考える暇を無くす程に仕事を入れて、仕事をして、仕事を入れて、私はそうして時間を消費するのか。
私はそうして人生を消費するのか。
そう考えて、絶対にやだなと思った。
私は今よりもっと仕事を減らし、今よりもっと暇を作り、今よりもっと丁寧に自分と向き合うことにした。
ああ、暇で良かった。
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