0513_とりあえず
何一つ無駄なことはない。
但し、でもちゃんと考えないと意味ないけど。
全てが血となり肉となる。
但し、でもちゃんと計画して摂取しないとね。駄肉になるわ。
欠片も残さず吸収すべき。
但し、おかげでいらないものまで入ってくるけれど。
私に与えられた名言には往々にして『但し書き』があった。『但しイケメンに限る』と言う一昔前のアレだ。
但し書きが付くならば、もうそれは、その言葉は違う意味になるではないか。
ちゃんと考えて動かないと無駄なときもあるよ。
必要なものを摂取しましょう。
上記が故に、欠片まで残さずというのは行き過ぎである。
だから、私はちゃんと考えて、必要なものを必要な分だけ取り込んでいる。
「とりあえず続けてみます!」
私は両拳を握り勢いよく言い放つ。目の前の先輩は満足気に頷き、頑張ってよと言って私の肩を叩いた。普通に叩いた。
俺の同行に付いてとりあえず毎回感想を書けと言われた。入社2ヶ月目、先輩の教えは『とりあえずやっておけ』である。で、その先輩を知る別の先輩方は哀れんで私を見ては『何一つ無駄なことはないから』『全てが血となり肉となる』『欠片も残さず吸収すべきだ』と宣う。
この会社はとりあえずとただし書きのオンパレードだ。私はとりあえず言われるままに仕事をしている。
とりあえず同行するし、とりあえず感想を書く。とりあえず提出するし、とりあえずその評価を待つ。
でも先輩は、私にとりあえず書かせただけだから、多分読んでいない。読まなくてはならないものではないから、読んでいない。
そうして私のとりあえずはなんの意味も持たなくなる。
私はとりあえず泣いて、やっぱりまたとりあえず感想を書くのだった。とりあえず、続けてみた1ヶ月だった。
とりあえず続けて、身になるものとならないものがあることを理解したので、私は来月はとりあえず同行をしないし、感想も書かないことにしようかと思う。
とりあえず、とりあえずだから、そう決めて、今日もまた同行する。
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