お粥には梅干し(脳腫瘍 13)
九段坂病院の食事は野菜中心で、肉より魚が多く、油物は滅多に出なかったが、虎の門病院では日に1度は肉料理が出たし、フライや天ぷらもよく出た。
私は肉料理はあまり好きではないのだが、太りたい一心で、ポークの脂身とチキンの皮以外は残さず食べていた。
味付けも上手でおいしいが、唯一お粥はまずかった。
九段坂病院のお粥はおいしかったが、ここのお粥は糊みたいで、もともとお粥の苦手な私は食べられなかった。
術後は3食全粥だと言われたが、1日で懲りて、普通のご飯に戻してくれるように頼んだ。
その日の夕食からご飯になると思っていたら、間に合わなかったのか夕食はまた全粥だった。
「普通のご飯にしてって言ったのに」
と、文句を言うと、
「ごめんね。明日からご飯になるから」
と、看護師さん。
「朝はパンにして、お昼からご飯にしてね」
そう念を押したので、翌朝はお粥ではなくトーストが出た。
ところが、昼食はまたしても全粥。
「いやだなぁ。どうしてご飯じゃないの?」
苦情を言いに行くと、看護師さんが伝え忘れたのか、調理室で忘れられたのか、取り替えてくれそうな気配だった。
が、しばらく待たされた末、
「夕食からご飯にするから」
という返事。
夕食は本当にご飯が出てくるのか不安になったので、「普通のご飯にしてください」と書いたメモをお盆に乗せて返した。
それでやっとご飯になった。
お粥には梅干しが付き物のように思っていたが、九段坂病院でも虎の門病院でも梅干しは出なかった。
九段坂病院では同室のメンバーに聞いてみたが、
「そう言えば、梅干しは出ないわねぇ」
と言われた。
食事のアンケートを取りに来た栄養士さんに言ったら、その後1度だけ小さい梅干しが出た。
病院では塩分取り過ぎを考慮して、梅干しは出さないのかもしれない。
そのことがあったので、虎の門病院には自分で梅干しを持ってきた。
高崎に住む友人のDさんが、自宅で採れた梅を自分で漬けて送ってくれたのを、小さなジャムの瓶に小分けして。
塩分を取り過ぎるほどは食べないが、さっぱりしたものが欲しいときに重宝した。
点滴が外れて歩けるようになってからは、毎朝、食事前に体重を計りに行っていた。
ナースステーションの前に体重計があるので、いつでも好きなときに計れるが、同じ日に計っても時間によって体重が違う。
朝食を食べる前に計ると正確だと言われたので、それからは毎日朝食前に計ることにした。
九段坂病院を退院する前に計ったら43キロしかなかったが、虎の門病院に入院するまでには45キロになっていた。
ところが、手術後は43キロに戻ってしまい、いくら食べても一向に増えなかった。
リハビリを始めてからは運動量が増えたせいか、42キロ台に減っていることもあった。
ものすごい食欲で、朝も昼も残さず食べ、おやつにご近所のNさんが持ってきてくれた「まい泉」のヒレカツサンドを食べ、夜もしっかり食べた日の翌朝、期待して体重計に乗ると前日より減っていた、なんてこともあった。
食べる以上にエネルギーを消耗しているということか。
これにはがっかりだった。
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