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Mさんとお菓子の話

 スマホを見てあげてから1週間ほどして、Mさんが梨を持ってきてくれた。
 去年もいただいたが、大きな梨でみずみずしくておいしかった。
 今年もちょうどお盆の時期にいただいたので、母にお供えできて良かった。

 Mさんにはこの間もとうもろこしを3本いただいた。
 親戚の人が作っているとかで、ときどき野菜や果物をいただく。
 私は野菜や果物のお礼にパルシステムでプリンやお菓子を注文して届けたり、自分が買って持て余したお菓子をMさんにあげている。

 砂糖を摂らないようにしているくせに、甘いものは目が欲しくて買ってしまう。
 食べるのは1つか2つでいいので、ケーキや和菓子は残りは1つずつラップして冷凍しておくのだが、いつでも食べたいときに食べられるという安心感はあるものの、そのうち早く食べなくちゃという義務感で食べたくないのに食べることになる。

 去年だったか、1度食べてみたかった梅ヶ枝餅がパルシステムで出ていたので買った。
 10個入りだったので、半分Mさんにあげて、自分は1つ食べて残りの4個は冷凍したが、全部食べるのに半年かかった。

 チョコレートはカカオ70%の個包装になっているものを買い置きして、たまに仕事で脳が疲れたときに食べるようにしている。
 それ以外にも、お雛様用に可愛いチョコレートやクッキーを買うのだが、雛祭りが終わると自分が食べることになる。

 5月に絵美子ちゃんと由紀ちゃんと丸ビルでランチしたとき、地下のホテルショコラで2人に手土産のチョコレートを買った。
 3パック買うと割引になるというので自分用にも1つ買った。
 帰ってきてから食べたが、6個入りで2つ食べて、あとは持て余したのでMさんにあげた。

 ホワイトチョコの中にチーズケーキ味のクリームが入っていて、上には乾燥ラズベリーをふりかけてある。
 Mさんはホワイトチョコは好きではないそうで、見たときはさほど嬉しそうではなかったが、後日、甘酸っぱくておいしかったと言っていた。

 数年前にうにゃさんがクルミッ子という胡桃がぎっしり入ったお菓子が好きだと言うので、どんなものかと思って検索した。
 鎌倉紅谷のお菓子で八重洲の大丸にも売っていたが、それを買いにわざわざ東京駅に行きたくなかったので、ネットで注文した。
 1番小さい箱でいいが、送料がかかるから、どうせだったら2箱買って1つMさんにあげようと思った。

 クルミッ子が届いたので持って行ってあげたら、次に会ったときにこんなことを言った。

「あれ知っているのよ。大好きでね。エンガディーナって、スイスのお菓子で」
「そうなの?」
「自由が丘にモンブランってケーキ屋があって、そこで売っていたからときどき買っていたの」

 Mさんはここに越してくる前は自由が丘に住んでいたそうだ。

「モンブランね。知ってるわ。駅を出て右の通りを行ったところにあったでしょ。今もまだあるのかしら?」

 私にとって自由が丘は、10代の頃から何度も訪れた馴染みの街だ。
 子供の頃に叔母に連れられて行ったこともあるし、高校を卒業してからは本屋や古本屋に行った。服を買うのも自由が丘が多かった。
 その後もたびたび1人で買い物に行ったり、友人たちとランチしに行ったり、ここに越してくるまで数えきれないほど何度も行って、好きなお店もたくさんあった。
 自由が丘の話は山ほどあるので改めて書くことにするが、Mさんが自由が丘に住んでいたとは驚きだった。

 Mさんはそんな私の感慨をよそに、YouTubeでクルミッ子のレシピを探したらあったので、作ってみたと言った。
 おいしくできたそうだ。
 私はYouTubeにクルミッ子のレシピがあるなんて知らなかった。
 MさんもYouTubeでレシピを検索するなんて、結構インターネットを使いこなしているんだと思った。

 ここまでは2〜3年前の話だが、この間の晩Mさんが来て話したときに、斜向かいのご主人の話になった。
 Mさんがここに越してきたのは26年前で、斜向かいのご主人はその頃パティシエだったので、お菓子作りが好きなMさんはよく話しに行ったそうだ。

 斜向かいのご主人が以前はパティシエだったというのは、私はついこの間聞いたばかりだった。
 朝顔と夜顔の苗をもらった後、家の前を通り掛かったらご主人が外に出ていたので、朝顔の報告をしたついでにちょっと立ち話をした。そのときその話が出た。

 私が自営業の期間が長くて年金が少ないから、定年後もパートに切り替えて仕事を続けていると言うと、ご主人も以前はケーキを作っていたが、自営業のようなもので国民年金だから、仕事を辞めてから別の会社に働きに行っていると言った。

「ケーキを作っていたって、ケーキ職人だったってこと?」
「そう」

 ケーキ職人だったとは意外だった。
 なんとなくのイメージで、勝手に何か機械関係の仕事だろうと思っていた。


 Mさんとお菓子の話はひとまずおしまい。
 斜向かいのご主人と奥さんの話は長くなりそうなので、また別の機会にする。


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